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2003年12月30日

『悪の読書術』

読了本 | 書籍・雑誌

福田和也『悪の読書術』(講談社現代新書)〔2003〕を読みました。

「こういう本を読んでいる」ことが知れたら「他人にどう見られるのか」ということに対して、意識的になりましょう、という本……というまとめ方でいいのかな? 「読む」こと自体よりも、それを「大っぴらにする」ということの意味に重点を置いたかんじ。

いわゆる“無邪気で善良”な読者と一線を画する立場から物を言っているという点では、先日読んだ斎藤美奈子の『趣味は読書。』(平凡社)に通ずるところがあるかも。

まあずいぶんと失礼な暴言オンパレードではあります。たとえば、こういうところ。

OL のみなさんをはじめとして、若い女性が、高村(薫)さんや宮部(みゆき)さんの厚い本を抱えているのを見て、人はどう思うか。(中略)この人はプライヴェートが寂しいんじゃないか、と邪推されるおそれがある。要するに、この人はボーイフレンドがいないんじゃないか、と思われかねないということです。

ははは……。私の場合、分厚い本を読んでる若い女性を見ても、そんなことちらっとも頭に浮かんだことなかったので、かなり度肝を抜かれたんですが、男の方、どうですか? でもまあ、連載掲載誌が女性誌ということで、文章のターゲットは若い女性ということなっているけど、もうちょっと広く(あるいは狭く?)取るならば、たぶんこの本の本来のターゲットは、ここに書いてあることについて素直に「そんなの違う!」と反発を覚える層ではなく、はたまた素直に「そうだよね」と納得してここに書いてあるアドヴァイスに従う層でもなく、どちらかというと「自分が読むもの(この本含む)」と「自分自身」のあいだに意識的に距離を置けてしまう層でしょう――という気がするので、別にいいんだよな、なに書いてくれたって。

さて、当然、私自身に跳ね返ってくる部分もあることを白状しておかなければアンフェアだな。たとえば、こういうくだりもあります。

たとえば、今でいえば、空前の大ヒット記録を塗り替えつづけている『ハリー・ポッター』シリーズ(静山社)などは、ややそのきらいがあります。(中略)やはりいくら面白くても、魔法の箒が出てくるお話に、妙齢の女性が熱狂しているのは、どうも、ちょっと恥ずかしいところがあります。(中略)とっても若い女性ならいいのですが、ちょっと大人の域にさしかかった人があまり興奮するものではない、という感じが否めません。

もちろん、そもそも先日の私の「熱愛宣言」自体が、かなり「どのように見られるか」を「意識」したものではありますが。『趣味は読書。』においてハリー・ポッターが「こういう本がベストセラーになるなんて世も末」的扱いを受けていることを踏まえて書いたものなので。そして言っとくけど、どっちかというと、私は斎藤美奈子の書くものは好きだ。(話がそれるけど、結局最後まで読んでみたら、『趣味は読書。』におけるハリポタへの攻撃は、意外とぬるかった。この手の本は斎藤さんの苦手分野なので、的確なツッコミの入れどころすら、判断しがたいらしい。お疲れ様です。)

と、なると。ここで敢えてウェブ上において熱愛宣言をしてしまう私は、はたして周囲に対して、自分をどのように演出しようとしているのか。跳ね返ってくるというのは、この部分ですね。「ハリポタを読んでる決して若くはない女性が世間からどう見られるか」という部分そのものではなく。

まあ、そんなこんなで。けっこう面白く読みました。ついでにどうせなら『悪の読書術』を読んでいる人は世間からどう見られるのか、という部分まで書いてくれたら楽しかったのにねえ、とは思います。

しかし、今の状況でこういう本を選んで読んでいる自分は、やっぱりちょっと自虐的なような気がするなー(これも演出?)。

Posted at 2003年12月30日 01:34



All texts written by NARANO, Naomi. HOME