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2004年1月 6日

Robin McKinley "Beauty"

読了本 | 書籍・雑誌

Beauty: A Retelling of the Story of Beauty and the Beast

読書感想文リハビリ中。

風邪で寝ていたあいだに Robin McKinley "Beauty : A Retelling of the Story of Beauty & the Beast" (1978, HarperTrophy) を読みました。とある趣味がきっかけで最近ちょこっとだけメールのやりとりをさせていただいたカナダ人のお姉さんが、ご自分のサイトで絶賛していた本。

ハヤカワ文庫FT の「ダマール王国シリーズ」(『青い剣』『英雄と王冠』)を書いたロビン・マッキンリイ(公式サイト)の長編デビュー(たぶん)作です。ちなみにマッキンリイは、ピーター・ディッキンソンの奥さんであるらしい。作家夫婦かー。

タイトルで分かるように、あの『美女と野獣』の物語のアレンジ版。幼い頃のたわいないひとことがきっかけで Beauty(美女)という渾名が定着したものの、実際には質実剛健そのものの外見、しかも馬が大好きという、少年のような女の子に成長してしまったヒロイン。お裁縫なんかよりギリシャ語の勉強のほうがよっぽど楽しいと感じる学者肌の本の虫でもある。でもそんな彼女を、父や二人の姉(こちらは文句なしのたおやかな美人)はやさしく見守って慈しんでいる。

そこそこ裕福な暮らしを送っていた Beauty たちだったが、ある日突然、父の商売が破綻して、何もかも失ってしまう。生まれ育った村に戻って鍛冶屋を始めるという次女の婚約者を頼って、町を出て行く一家。引越し先のささやかな家の近くには、恐ろしい怪物が棲むと伝えられる不思議な森があった――。

使用人に囲まれて何不自由なく育ってきた三姉妹が、いきなり荷馬車に揺られての過酷な旅を経て質素な家に移り、自分たちで家庭を切り盛りしなければならなくなるあたりの描写が詳細で、生活感にあふれています。馬を操り畑を耕し、義兄の鍛冶屋の仕事を手伝い、薪割りまでできるようになってしまうたくましいヒロインが、非常にかっこいい。すべすべだった手をガサガサにしながら家事をマスターしていくお姉さんたちも健気です。オリジナルのお話と一番違うのは、このお姉さんたち(原作ではシンデレラの姉ばりに性格悪い)のキャラクター設定かな。ヒロインが心から愛情を注ぐのもうなずける、ものすごく善良な人たちなのですよ。

基本的にはオリジナルの『美女と野獣』そのままのストーリーなので、やがて野獣がいる魔法の城に行くことになるわけですが、ここでも城の膨大な蔵書に魅了され、趣味に合わない“お姫さまドレス”を着せようとする目に見えない召使と壮絶なバトルを繰り広げ、時には大好きな家族に会いたくて落ち込み……といった毎日が、生き生きと描写されています。

そしてもちろん、“野獣”との交流。少しずつ少しずつ、お互いに心を開いていくようになる過程が、丁寧に書き込まれていました。とにかく、このヒロインが、ものすごくかわいい。感受性が強くて、頭の回転が速くて、素直にのびのびと育ったお嬢さん。でも実は自分にコンプレックス持ってたりする弱いところがふと垣間見えたりもして。そりゃあ、野獣にしてみれば、二百年も孤独に退屈して過ごしてきたあとで、こんな女の子がやってきて振り回してくれたら、惚れちゃうよねえ、というかんじ。また、18 歳にして初恋もまだだったヒロインが、見た目は恐ろしいけど知的でノーブルで謎めいたところのある野獣を、無自覚のまま徐々に男の人として意識していくというのも、説得力ある書かれ方でした。

結末分かってても、面白かったです。よく知られている話をこういうふうに書くやり方もあるんだなあ。あ、ついでに言っとくと、ディズニー映画の「美女と野獣」を見てないので、私の頭にあるこのお話に対するイメージはボーモンの原作とジャン・コクトーのモノクロ映画のみです。

Posted at 2004年1月 6日 13:22

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