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2004年2月28日

こねこ

映画・テレビ

Amazon.co.jp

日本の文部省が推薦する1997年のロシア映画(Amazon)。これはびっくりです。だって、全部実写の猫なんだよ。猫好き必見、かも。

主役のチグラーシャは、とある一家で飼われることになった縞模様の仔猫。好奇心いっぱいで家中に騒動を巻き起こし、一時は楽団でフルーティストとして働くパパの楽器ケースをトイレ代わりにしちゃってパパの逆鱗に触れたりもしますが、やがてちょっとは躾もされて、皆に溺愛される家族の欠かせない一員となっていきます。ところがそんなおり、窓からトラックの荷台の上に落ちたチグラーシャは、そのまま見知らぬ場所へと運ばれてしまう。身を守るすべも知らぬまま、行く当てもなく街の中をさまようチグラーシャ。獰猛な犬に追いかけられているところを助けてくれたのは、別の大きな猫だった――。

もうもうもう、仔猫も大猫もそれぞれの個性というか「キャラ」がはっきり伝わってきて、よくもまあってかんじです。ちゃんと「俳優」としてストーリー内容を理解して「演技」してるんじゃないかと思ってしまうほど、すべての動きや表情が計算されたようにぴったりです。作中に登場する、たくさんの猫と一緒に暮らすちょっと浮世離れした男性は、本職の俳優さんではなく、「猫の調教師」として有名な人らしい。そういう職業があるのかー。お、恐るべしロシア。そういえばロシアって、あの「猫のサーカス」の本拠地だよね。

ご主人を脅迫する地上げ屋に対し、共同で攻撃をかける猫集団とか、ご主人が地上げ屋に暴力をふるわれて入院しちゃったあとは、一致団結してボロアパートを出て行き、共謀してお店から食べものを盗んで飢えをしのぐ猫集団とか、そんなのあるわけないじゃんってシーンのオンパレードなのに、うっかり信じてしまいそうになる。また、俳優として参加している猫の調教師さんと、そのそばでさまざまな演技を披露する猫さんたちとのあいだに、なんとまあ強い絆の感じられること。猫さんたちの、なんと得意げで満足げで幸せそうなこと。ほんっとにこの調教師さん、心から猫好きで、なおかつ猫にも愛されてるのねって思いました(でなきゃそんな仕事してないだろうけど)。

そして印象的だったのは、そんなおとぎ話とも思えるような、猫主役の子供向け映画なのに、人間側の描写はしっかりリアルでビターなこと。チグラーシャが最初に飼われていたフルーティストの家の生活水準(いなくなったチグラーシャのために「見つけてくださった方には謝礼を出します」テレビを介しての呼びかけまでしてしまう)と、地上げ屋に脅されている独居男性の生活水準との、はっきりとした格差。彼がチグラーシャ捜索のテレビCMを見たシーンでは、「これで謝礼をもらってちょっとは生活費の足しに?」と期待しちゃったけど、結局はそういうことにもならず。それでも、ささやかな庶民の幸せというものはあるんだよなあ、と思わせる淡々と穏やかな映像。

あと、フルーティスト一家の面々がみんな素敵。美男も美女も全然いないんだけど(いや、作品に合わせてそういうふうにメイクしてるだけで、実際には美男美女なのかもしれないけど)、本当にみんな「いい人」で周囲から好かれているんだろうなあってかんじの顔ばかり。特に、長女役をやってる女の子。すごい美少女では決してないんだけど、いかにも利発そうで、目に非常に強い意志を感じさせる光を宿していて、心に残る。

Posted at 2004年2月28日 00:18



All texts written by NARANO, Naomi. HOME