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2004年5月29日

K.M. ペイトン『運命の馬ダークリング』

読了本 | 書籍・雑誌

掛川恭子・訳、岩波書店(世界の青春ノベルズ)、1994年刊。【Amazon.co.jp】
原書はK. M. Peyton "Darkling" 1989年刊。【Amazon.co.jp】

『バラの構図』を再読したくなって図書館に行ったとき(自分でも所有してるはずなんだが、借りるほうが早かった)に、隣にあったこれも目についたので借りてきました。そういえば自分が成人してから刊行されたペイトン作品って、読んだことなかった。

主人公ジェニーは、物語冒頭では高校卒業間近の女の子。裕福な友人たちに囲まれながらも、自身は貧しい家庭の末っ子として閉塞感いっぱいの環境に置かれています。過去の事故で障碍者となってしまって動けない父、何もかもに対してなぜか攻撃的な母、そして無邪気で愛すべき人物ではあるがトラブルメーカーの祖父。この祖父が、後先考えずに「掘り出しもの」のサラブレッドを競り落とし、ジェニーに任せたことから、彼女の運命は否応なしに動いていきます。

『フランバーズ』でもヒロインはかなりの馬好きでしたが、この物語のジェニーはもっとです。なんぜ、職業は厩務員だし。そしてこれはモロに、ダークリングというタイトルロールの馬が「影の主人公」です。馬への愛情に満ちた文章の真摯さ、レースの臨場感あふれる描写の迫力。ペイトンは本当に馬が好きなんだねえ。

ラストは、決して王道のストーリーパターンのような大団円ではありません。ただこれまで続いてきて、これからも続いていくジェニーの人生のほんの一時期を切り取った、という印象。これからまだまだ、ジェニーの運命は、どうにでも動くでしょう。その、物語が「閉じられていない」かんじは、考えてみれば今までに読んだほかのペイトン作品にも通ずるものがあるかもしれなません。

Posted at 2004年5月29日 21:33



All texts written by NARANO, Naomi. HOME