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2004年6月11日

ピーコ『ピーコ伝』

読了本 | 書籍・雑誌

インタビュア:糸井重里。文春文庫PLUS、2003年刊(親本は2001年)。【Amazon.co.jp】

(ちなみに、本の感想は、必ずしも読了した日にアップしているわけではありません。ものによっては、けっこう前に読んでて、すでに具体的なところは記憶から抜け落ちていたりすることも。これは、前に途中まで書いたまま放置してあった文章のリライト。)

ほぼ日刊イトイ新聞で以前連載していたインタビュー「ピーコを、チェック。」をベースとした、糸井重里さんによるインタビューで構成された自伝本。

私は、むかしも今も、ピーコさんが出ているテレビ番組等をほとんど見たことがないので、実際にどういう雰囲気をかもし出す人なのかってことは、全然知りません。でも、ウェブの対談もこの本も、面白かった。子供時代の話のところなんか、特に。すごく素敵なご両親のもとで、まっすぐに育った人なんだなあ。そこで基本的な土台ができてるから、オトナになってから少々ハメをはずしても、軌道修正がきく。《自分》というものに対して、自力で獲得した“こうありたい”という美意識がきちんと存在するかんじ。そういう人が、私は好きだ。

さて、ここからは、余談。

テレビに出ているピーコさんをまったく知らない私にとって、ピーコさんと言えば、10代の頃によく聴いていたラジオ番組のパーソナリティとしてのピーコさんです。当時、NHK FMで23時からやっていた「クロスオーバー・イレブン」という番組を、よく聴いていました。ピーコさんはたしか、毎月5日間だけ、0時から始まる「第2部」の担当をなさっていたのです。私はどっちかというと、その「第2部」から聴き始めることが多かったはず(当時から宵っぱりでした)。トークをする人は毎週変わるのですが、ピーコさんの週を、特に楽しみにしていました。ゲイだからなのか、もともとの声質がそうなのか、とにかくなんとなく男の人にしては「ふわり」とした印象の声が、しんとした深夜に似つかわしくて好きだった。

どんな話題があったのかはもう、ほとんど忘れてしまったけれど。ああ、そうだ、リスナーの女の子からのお手紙で「××という映画の最後に流れる曲のタイトルを教えてください」なんてのがあったときに、「そういうことはビデオを借りてきてエンドロールを確認するなどの手段もあるのだから、まずは他人に訊く前に自分で調べなさい」ときっぱりコメントしていたのが、印象に残ってます。そういうのを10代の半ばに毎月のように聴いていたことは、たとえ今はもう具体的な内容はまるきり覚えていなくても、私のどこかに溶け込んで残っているのではないかと思う。こういうのって、糸井重里さんが『ピーコ伝』の序文で、彼のことを「日本のおかあさん」だと言っているのに通ずるとこもあるのかな。

で、ほとんど忘れてしまったなかで、2つだけ、強烈に今でも覚えている話があります。1つは、『ピーコ伝』にも出てくる、ピーコさんが片目を摘出したときの話。手術の報道があってまもない頃でした。命にかかわるかもしれなかった病気の話を語る淡々とした口調を、今でも思い出すことができる。

そしてもう1つは、チューリップ。インパクトのある花束を作るなら、というような文脈だったっけ? お花屋さんに行って、手に入るかぎりのありとあらゆる色と種類のチューリップ(意外と色合いも花の形もバラエティ豊かなのだ、チューリップという花は)を、1本ずつ買って――という話。

聞いてるだけで、目の前に、色とりどりのチューリップの花束が、ぱーっと広がるかんじだった。たとえ1種類につき1本ずつのチューリップでも、全体では抱えきれないほどのボリュームになることだろう。それを全部、一気に大きなシンプルな花瓶に入れて、テーブルの真ん中に置いたら、どんなに目を引くことだろう。

あれ、今気付いたんだけど、私がチューリップ好きになったきっかけは、もしかしてこれか? 好きな花を聞かれれば断然チューリップと答える私なんですが、いつからそうだったのか、記憶にないんだよね。10代前半は、まだ別にチューリップに思い入れはなかったような気がする。でも今はチューリップすんごい好きだ。結婚披露宴のときもお花屋さんとの打ち合わせで「チューリップ、チューリップ、チューリップが好きなんですよう」と主張して、会場の飾り付けにチューリップを多用しちゃったもんなあ。東京ではもうチューリップのシーズンは終わってたというのに。さすがにいろんな種類を1本ずつ、とはいかなかったけど。義母なんて、よっぽどあの披露宴が印象に残ったのか、今でも春先に一緒に歩いていてお花屋さんの前をとおりがかると、「チューリップ買ってあげましょうか?」って尋ねてくれますよ。

まあとにかく、そんなこんなで、今でも私は、「ピーコ」という名前を聞くと真っ先に連想するのが、「チューリップの花束」なんである。問答無用で。

夢のチューリップ花束。いつか、そういう一過性のものに存分にお金を注ぎ込めるくらい、いろんな意味で余裕ができたら、実現してみたいものだなあ。そもそも私、「ありとあらゆる種類のチューリップ」を取り揃えているような立派なお花屋さんには、足を踏み入れたことさえ、ないんですけど。

というわけで、本の感想からは思いっきりズレまくったまま終わります。

Posted at 2004年6月11日 08:24



All texts written by NARANO, Naomi. HOME