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2004年8月15日

Elizabeth Marie Pope "The Perilous Gard"

読了本 | 書籍・雑誌

Houghton Mifflin Company, 1974年刊行。【Amazon.co.jp】

時は1558年、ブラッディ・メアリーことメアリー一世の治世。女王の妹である、のちのエリザベス一世ことエリザベス王女の侍女であったケイト(キャサリン)は、可愛いけれど軽薄な妹アリシアの無分別な行動のあおりを食らって女王の不興を買い、暗い古森を抜けたところにある僻地の城に追放されてしまいます。

そこの領主は、亡き妻から土地を相続したものの、元からそこにいる使用人たちからはよそ者扱い。城の住人が、地元の村人からは忌避されているふうなのも腑に落ちない。しばらく前に起こった、領主の幼い娘が忽然と姿を消すという事件の裏にも、何かおぞましい事情があるらしい。

実はそこは、キリスト教が定着する以前の神々をあがめる古き民が力を持つ土地だったのでした。城の者たちは、代々、王家ではなく彼らに仕えて見返りを得ることで繁栄してきたのです。真実を知った領主の弟クリストファーは、生け贄として連れ去られた領主の娘の身代わりとなる契約を交わしてしまいます――。

当時の若い女の子の美徳にことごとく反する性格と容姿のケイトが、捕らわれの王子様もといクリストファーを助け出すお話。どの登場人物もキャラが立ってて楽しいのですが、とりわけ主役二人の、甘ったるいところ皆無なテンポのいい会話が素敵。

ケルト神話の「タム・リン」伝説(妖精の女王に捕らわれた騎士が、ハロウィンの夜に恋人の助けで人間界に戻る)を踏まえたクライマックスのオチ(「オチ」という表現もどうかと思うのだが、「オチ」としか言いようがない)も素晴らしい。いかにもこの二人らしくて。いやはや、手に汗握るシーンなのに、笑い転げそうになりました。好きだなあ、こういうの。

古き民の、美しく優雅でありながらも人知を超えたおぞましく恐ろしい存在であり、なおかつキリスト教という新勢力に押し流されて消えゆく種族でもあるというあたりの描写が、リアリストな主人公の視点できちんと書き込まれていて、よかったです。物語の中でも少し言及されていますが、主役の片割れがクリストファー(“キリストを担う者”の意)という名前なのも象徴的。

1975年ニューベリー・オナー賞受賞作品。作者は博士号を持つシェイクスピア研究者らしい。

Posted at 2004年8月15日 14:37

コメント

こんにちは。最近私がはまった『英国妖異譚』のシリーズにはケルトの話がたくさん出てくるんですが、第一作のネタは「タム・リン伝説」なんだなーと、ここを読んでわかりました。ちょっと読んで見ようかしら。

投稿者 soke : 2004年8月16日 08:56



おはようございます。イギリス舞台だと、特に具体的には明記せずさらっとケルト文化ネタが散りばめてあるようなのってけっこうありますよね。私も時々、ある作品で読んだエピソードが別の本でも出てきたことで「おや、これはベースになる何かの伝承があるんだね?」と気付いたりします。

一時期好きで、いろいろケルトものの本も読んだんですが、かなり記憶から抜け落ちてるなあ。

『英国妖異譚』シリーズの紹介文、あらためて読んできました! なかなか面白そう〜。BL風味がそんなに強くないのなら、読んでみようかしら(あ、ホワイトハートか、なら大丈夫そう)。

投稿者 ならの : 2004年8月17日 09:26



う、BL風味は薄いかというと、ちょっとあやしいです。確信犯的にとぼけてる感じ。この本のペーパーバックを入手しました。アマゾンって便利ですね。

投稿者 soke : 2004年8月20日 23:37



うーん、なるほど。直接的な描写がなければ、雰囲気的にそういうのがあっても、大概大丈夫なんですけど。一度、リアル書店で手に取ってパラパラめくってみようかな。

ペーパーバック、到着早っ。私が購入したときはけっこう待たされたのにー(あ、私が注文したから、アマゾンに在庫ができたのか?)。sokeさんのお眼鏡にかなうとよいのですが。

投稿者 ならの : 2004年8月21日 05:59





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