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2004年9月22日

『薔薇の名前』初DVD化

映画・テレビ

1986年、フランス、イタリア、西ドイツ合作。監督ジャン=ジャック・アノー。主演ショーン・コネリー。【Amazon.co.jp】

DVDは今月出たばかり。もうこれは「古典」だと思うんですけど、今までDVDになっていなかったとは驚きだ。先日買ってすぐに、一通りテレビ画面で観たあと、パソコンのDVDドライブに入れっぱなしにして、ちょっとずつ特典映像を見たり監督のコメンタリーを聞いて(字幕を読んで)いました。

公開当時って、どんな扱いだったっけ? 日本では(少なくとも関西では)ミニシアター系だったような記憶がおぼろげに。私は気になりつつも劇場公開は逃がして、1989年頃にビデオで観たのが最初だったかなー。大学の図書館の視聴覚資料室にあったんだよねー。

十数年ぶりに観ても、ものすごく面白いわ、これ。全然、色あせてないね。光の使い方が独特で、中世ヨーロッパの怪しい雰囲気満載。

全編セリフは英語であるにもかかわらず、記憶の中ではまさしくヨーロッパ大陸の映画という印象が残ってたんだけど、改めて見るとそれはロケ地がそうだからというだけじゃなくて、俳優さんの顔つきとか喋りとかがすべてそうなのね。ヨーロッパ中からかき集めてきた、個性の塊のような顔、顔、顔。そして、さまざまにきつい訛りの入った、明らかに母語としては話されていない英語。

そんななかで、ぽっかりとそこだけ切り取って別世界に置き換えたかのように、ショーン・コネリー演じる英国出身のウィリアム修道士と、クリスチャン・スレーター(当時15歳)演じる弟子のアドソだけが、私たちの目にも馴染んだ正当派の現代風美形で、セリフの内容こそ古風だけれど、耳に馴染んだ癖のない正当派の英語を喋る。すっごく浮いてるんだけど、その浮いているという事実そのものによって、彼らが中世の世界を舞台にして「ホームズとワトソン」をやってしまうということに説得力が与えられている。

過去の知識は保存するだけのもの、そこから新しい思考を生み出すなど言語道断、というのが表向きのコンセンサスである旧弊な修道院社会の中にあって、奇妙な測定器具を持ち歩く「新しもの好き」であり、先輩修道士からは「考えすぎる」と批判されるウィリアム。周囲の者たちが死体を前に「悪魔のしわざだ」、「黙示録の預言だ」と怯えるなか、一人「これは人為的な死だ」と看破する目を持った、常に冷静沈着そのもののウィリアム。そのウィリアムが、秘密の図書館に潜入して秘蔵の本の山を目にしたとたん、その冷静さをかなぐり捨てて年甲斐もなく(笑)はしゃいでしまうシーンが、好きだなあ。多分、彼は「早く生まれすぎた人」なんだよね。

監督のコメンタリーがとっても面白かった。公開から十数年経った今だから言えるんだろうなあ、というような裏話もいろいろ。かなり無謀な撮影やってたのね……。

あと、ドイツで製作されたらしい43分間のドキュメンタリーが収録されているんですが、これで見ることのできる、フョードル(フェオドール?)・シャリアピンJr.(撮影当時80歳くらい? 歌手のシャリアピンの息子)の姿にちょっと感動しました。映画の中では、黒目を隠すコンタクトレンズを装着して、異様で不気味な盲目の老僧を演じていたこの人、私服だと、すっごく粋で雰囲気のある美老人……。さすがだ。IMDbによると、1992年にお亡くなりになったようです。85歳か。

長大な原作から、絵として面白いところだけを抽出してぎゅぎゅーっと2時間11分に押し込めたみたいな映画なんだよねえ。原作も再読したくなってきたなあ。もう内容をほとんど忘れていることに気付いたので。しかし実は本が話題になってたあの当時、ハードカバーを買うおこづかいがなくて、手元にあるのは英訳版のペーパーバックのみ……。

――と、思ったら同居人A氏の本棚で和訳版ハードカバーはっけーん。ラッキー♪ 夫婦で趣味が似通ってると便利だなあ。一緒に暮らし始めて以来ずっと「どっちが自分の本を手放すか」で睨み合い状態になってて整理できずにいるダブリ本もあるけど。

Posted at 2004年9月22日 23:50



All texts written by NARANO, Naomi. HOME