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2004年10月30日

『痩身男女(Love on a diet)』

映画・テレビ

2001年の香港映画。監督:ジョニー・トー&ワイ・カーファイ。主演:アンディ・ラウ&サミー・チェン。

香港版DVDで英語字幕を表示して観ました。

『Needing You』感想)で息ぴったりだったアンディとサミー(『インファナル・アフェア』でもカップルですね)が、今度はエディ・マーフィーの『ナッティ・プロフェッサー〜クランプ教授の場合〜』みたいな超肥満体に。ハリウッドから特殊メイクのスタッフを呼んだそうです。DVDの特典映像でメイキングが入ってたけど、めちゃくちゃ大変そう。二人とも、顔にもしっかりニセ脂肪を貼り付けられてまんまるなのに、ちゃんと微妙な表情の動きが分かるのだ。すごい。顔だけでも、普通に演技するより、ずっと筋肉使ってると思う。サミーはまだ、ストーリー内で段々と痩せてもとの面影が分かるようになっていくんだけど、アンディは、あの「鷲鼻」と「目」がなければ、ぜーったい、誰だか分かんないって! よくこんな仕事、受けたなあ。でも、楽しそうにやってる。

最初から最後まで、舞台は日本。そういえば、『東京攻略』がはこれの前年。香港で日本に対する関心が高まっていた時期だったのか。日本語のセリフも、すごく多い。

10年前はスレンダー美女だったのに、日本人の恋人と離れ離れになった寂しさで過食症になり、丸々と肥えてしまったミニ・モウ。出世して人気ピアニストとなったかつての恋人のコンサート・ツアーにお金を使い果たして、無一文で途方にくれているところを、負けず劣らずの肥満体である香港人の肥■〔人偏に「老」〕(英語字幕では "Fatso")に同郷のよしみで助けてもらい、一時はデブでも美味しいもの食べて楽しく生きていこうと前向きになりかけます。しかし元恋人が実はまだ自分を忘れておらず、再会を望んでいると知って、いきなり元の姿を取り戻そうと過激なダイエットに挑戦――みたいな話。

この映画のアンディの役柄、考えてみたら、謎が多いんです。サミー演じる「ミニ」の過食症については、恋人と離れたストレスという理由が提示されていますが、アンディがなぜ、強迫観念のように常に何かをもぐもぐやらずにいられないのかってことは、まったく説明されていません。この人も、過去につらい経験が? いつ香港から日本に移住したんでしょう? なぜ、どこにも定住せず、あの黄色い自動車で行商をするようになったんでしょう? 横浜中華街の友人たちとは、香港時代からの知り合い? それとも日本に来てから? その謎の多さが、「実は奥深いキャラなんじゃないか?」と思わせる魅力になっている。しかもこの彼、結局最後の最後まで、本名が判明しません。献身的にサポートしてあげたヒロインに「本当の名前は?」と尋ねられてさえ、「呼び名なんて“デブ(Fatso)”でいいんだよ」と言い残して去っていく。本当はすっごく「やせ我慢」なんだけど。かっこいいぜ。美学だぜ。

中国語ではなんて言ってたのか、分からないんですが、英語字幕で、何度も「worth(価値)」という単語が出てきたのが、印象的でした。何の義理もない女が恋人に会いにいくためにダイエットするというのに、自分の生活や金銭、体力を削り取るようにして協力してやるアンディに、友人たちが問いかける「そんなことやってなんの価値が?」という言葉。10年会わない恋人よりも、今、目の前にいるアンディが気になり始めたミニが口に出す「今の太った私を受け入れてくれない恋人なら、価値がない」という言葉。そして、ミニのダイエット合宿費用を荒稼ぎするなかで身体をボロボロにしてしまったアンディが、自分を奮い立たせるために独りごちる「価値はある」という言葉。

基本的にはコメディなので、ビジュアル的には、面白おかしいシーンの連続なんですが、でも「どぎつい」笑いじゃない。一つ一つのシーンを、シリアスすぎたり、おセンチすぎたりするものにしないために、挿入されるほのぼのとした笑い、というかんじ。肉体的な特異性をネタにした笑いって、あとで嫌〜な気持ちになるものも多いんだけど、この作品はかなり趣味がよい部類に入ると思う。

ところで、ちょっと面白かったのは、サミーとアンディが「指きりげんまん」をするシーン。ほほう、中華圏でも、約束をするときには、お互いの小指を絡めるんだねー(金城武とクリスティ・チュンも『人魚伝説』でやってましたが)。この習慣のルーツはどこだろう? ふむふむと思ったのは、「約束ね」と小指を絡めたあと、さらに合意を示すために、そのまま親指をくっつけてたこと。これは、日本ではやらないよね?(地方によっては、やる?)

大きな違いなら分かりやすいけど、こういった微妙なしぐさの違いって、なかなか分かんないよね。だから、わたくし本当は、チャン・ツィイーが日本の芸者を演じたり、ジェイ・チョウが『頭文字D』の主人公を演じたりすることに、少々懐疑的です。

Posted at 2004年10月30日 17:05



All texts written by NARANO, Naomi. HOME