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2004年11月 2日

『ブエノスアイレス』

映画・テレビ | 王家衛

1997年の香港映画。原題『春光乍洩』、英題『Happy Together』。監督ウォン・カーウァイ。主演トニー・レオン&レスリー・チャン。【Amazon.co.jp】

くっついたり離れたりを繰り返しているゲイのカップルが「やり直す」ために香港から地球を180°巡ったところにあるアルゼンチンまでやってきて、やっぱり別れてしまうのだけれど、やっぱりよりが戻ってしまって、そしてやっぱり展望のない閉塞した関係に。

今まで唯一、観ることができずにいたウォン・カーウァイ作品。数ヶ月前にケーブルテレビで放映されたときに録画しておいたのを、ようやく観ました。

男女のカップルでもありうるようなエピソードばかりで、ストーリー上は、これをゲイのカップルという設定にした必然性って、ほとんどないような気はするんだけど、一度観てしまえば、もうトニー・レオンとレスリー・チャン以外では、考えられない。(最初キャスティング候補にアンディ・ラウも挙がっていたって、以前どっかで読んだんですけど……思い直してくれて本当によかったよ、いろんな意味で。)やっぱり、男性俳優であるこの二人が演じてこその映画ではあると思う。どちらかが肉体的ないし社会的に「男」じゃなかったら、別のお話になっちゃったような気が。男女カップルと変わらない、と言い切ってしまうには、どちらか一方を「女」役に当てはめることに無理がありすぎる。

無邪気にわがままに、しかも自覚的に、魅力を発揮するウィン(レスリー・チャン)と、甲斐甲斐しく彼の面倒を見つつ、徐々に鬱屈していくファイ(トニー・レオン)。一見、いつでも自由奔放に飛び立っていってしまいそうに思えるのはウィンのほうだけど、結局のところ先に次のフェーズに動いていくのはファイのほうで、ウィンは序盤のシーンで二人して迷子になったときの、イグアスの滝にたどり着けない自分のまま、取り残されてしまう。アパートのキッチンで一緒に踊っていたシーンのような、美しい一瞬があっても、時間は容赦なく流れていくのに、彼は多分、それを認めたくなくて、いつでも「チャラにできる=やり直せる」と思っていたいのだ。

題材でかなり引いてたんですが、中身はしっかり、映像から何から全部、ほかの作品とも共通点を感じさせる、いつものウォン・カーウァイ映画でした。それがいいことなのか悪いことなのかはともかく。

あと、出番は少ないけどチャン・チェンがとても印象的でした。主人公の二人がお互いを束縛しあって、空気の流れない狭いところでぐるぐるしているのとは対称的に、彼は「帰っていける」場所を持つがゆえに、今いる場所を離れることや、一人で旅することを恐れない。そしていつも、風に吹かれているかのように大らかで前向きでさわやかで、でもしなやかで繊細だ。どよんとした薄暗がりの中に、やわらかい光が射して来るみたいに。『グリーン・デスティニー』で見たときは、なんか影の薄い人だなーってかんじだったんですが、この映画では素敵だった(『グリーン・デスティニー』で割を食ったのは役柄のせいもあるよね……それと、もともとは金城武にオファーが行ってた役だってことで、こちらにも色眼鏡で見ている部分があったと思う)。

Posted at 2004年11月 2日 19:37



All texts written by NARANO, Naomi. HOME