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2004年11月 5日

『花様年華』

映画・テレビ | 王家衛

2000年の香港映画。原題同じ。英題『In the Mood for Love』。監督ウォン・カーウァイ。主演トニー・レオン&マギー・チャン。【Amazon.co.jp】

ウォン・カーウァイ週間(って、どうも1週間では終われない気配が濃厚)、ようやく、真打の登場です。なぜ真打なのかと言えば、これこそは、現在公開中の『2046』の前にぜひ観ておくべしと言われている作品だからです。とはいえ、今週末、どれか1つ観に行くとしたら、ジョニー・トー監督の『ターンレフト・ターンライト』にするつもりなんですけどね。『2046』は、まあ、余力があれば。

隣人同士のチャウ氏(トニー・レオン)とチャン夫人(マギー・チャン)は、お互いの配偶者同士が浮気をしているのではないかと疑い、それをたしかめるために、初めて二人きりで会う。そしてやがて、自分たちもまた、惹かれあうようになってしまう。でもこの二人は、それぞれの配偶者たちとは違って、決してそれを口に出さないし、行動にも移さずにいる。チャウ氏が外国に去っていくまで。要約するならば、それだけの話。

これは、初めて観たとき以来、ものすごい勢いでハマってしまって何度も繰り返し観ています。どこを切り取っても美しい。当時の感想に特に付け加えるべきこともないなあ。あ、「好きなウォン・カーウァイ作品」の順位は、あのとき書いたのとは微妙に変動しているかも。でも、個人的な「好き」度とは別に、とにかく作品としての完成度は、やっぱりこれが一番だと私は思う。

久々に観てもやっぱり、ずーっと最初から最後まで、息を詰めて神経を研ぎ澄ましながらの鑑賞になってしまった。まったく気を抜けるところがない。時代設定としては、『欲望の翼』とほぼ同じ(『欲望の翼』が1960年から翌年、『花様年華』が1962年から1966年)なんだけど、『花様年華』のほうがずっと、わざとリアルさを抑えて、「いま」の美的センスに基づいて再構築された幻想の60年代香港、という気がします。

壁の染みやガラスの汚れまでが計算ずくで付けてあるに違いない、「隙」の皆無な画面。迷路のような得体の知れなさをかもし出している構造不明なアパートや、がらんとした現実味のない街角を背景に、どんなシーンでも背広やワイシャツを着用しているところしか見せないトニー・レオンや、ちょっとその辺の屋台に行くにもピシッと細身の歩きにくそうなチャイナドレスを着込んでいるマギー・チャンも、どこか浮世離れしている。なのに感情だけが、生々しくリアル。

Posted at 2004年11月 5日 18:19



All texts written by NARANO, Naomi. HOME