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2005年4月10日

野崎歓『香港映画の街角』

読了本 | 書籍・雑誌 | 映画・テレビ

青土社、2005年2月刊行。【Amazon.co.jp】


あとがきで「遅れてきた香港映画ファン」を自称するフランス文学者による評論集。私はこういうのを読みたかったんだなあ、と思ってしまったのは、私自身もまた、著者よりもレベルはぐっと低いけど、昔の香港映画ブームには乗り遅れたファンであり、アクションものやカンフーものから入った王道香港映画ファンとは、ちょっとアプローチが違うからかもしれません。

表紙からして王家衛監督の『花様年華』 (2000)の1シーン、表紙裏の見開きは『2046』 (2004)が封切りされた香港の街の風景写真、というあたりからして、「いかにも」ではある。出版されるギリギリ直前くらいまでの、新しい映画への言及がかなりあるのと同時に、古典的な定番作品を決して「観ていて当然」のものとして書いてないのも、新しいほうから古いほうへと時系列を逆走中の「遅れてきたファン」にはありがたい。

著者がフランス文学者であることと関係があるのかないのか分からないけれど、読んでて馴染みやすいような気がしました。普段は西洋文学を論じている人の文章だからだろうか? 視点が、あくまでも香港に対して自分を「異邦人」の位置に置いたものとなっているから、というのは大きいと思う。今まで日本人として違和感を覚えても「ああ、それは当たり前のことだから。香港映画を観るなら慣れてね」のひとことで済まされてきたようなことに、理屈付けをしてもらった気分。

日本では公開されていないようなマイナー作品もけっこう取り上げられているのに、マニアックな雰囲気が薄く間口が広く感じられるのは(とはいえ、知識豊富な人ならさらに楽しんで読めるのでしょうけれど)、全体に通ずる風通しのよさゆえ? ジャンルを越え、時代を越え、思わぬキーワードを媒介にしていくつもの映画がリンクしていくのが、スリリング。

しかし、こういうの読んでると、観たい映画がどんどん増えるなあ。

Posted at 2005年4月10日 01:15



All texts written by NARANO, Naomi. HOME