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2005年6月11日

熱愛宣言(2003.11.4 初出)

書籍・雑誌

Movable Typeに移行する前の過去記事を削除したものの、現行の「虫のいい日々」内の別の記事などからリンクして言及しているものについては、削除したままだとなんとなく落ち着かないので、とりあえず少しずつサルベージしてこっちに再録してみることにしました。

ハリー・ポッターは、あと1ヶ月ちょっとで、また新刊が出ますねえ。


前からこのページをご覧になっている方々はご存知かと思いますが、わたくしはあの「ハリー・ポッター」シリーズが大好きでございます。それで、ですね。時々思うのですが、ある程度「本好き」を自認しているような人々に向かって「私はハリー・ポッターが好きだ!」って宣言するのって、なんとなーく、すんごい勇気が要ることのような気が、常にしているのですよね。そこはかとなく。卑屈になりすぎ?

特に私は、更新停滞中ではあるものの指輪映画特集ページなんてもんを作っていることからもお分かりいただけるように、指輪物語オタクでもあるので、「指輪に比べれば、ハリポタなんて底が浅いでしょう?」みたいな文脈で話を振られることも、たまにですが、ないではありません。うーん、それぞれ別々に好きなんだけどなあ。比較なんかできないんだけどなあ。

なんかね、ハリポタ好きだって言うと、「所詮、ベストセラーになるような万人受けする "ぬるい" 本を喜ぶのは、普段は本を読まないような人たちでしょ」みたいな、哀れみの視線を感じることがあるのですよ。錯覚かね? 被害妄想かね? ええ、たしかに、そうかもしれませんが。

ちなみに、私がどれくらい「ハリー・ポッター」に入れ込んでいるかというと。たとえば今年の夏に最新刊 "Harry Potter and the Order of the Phoenix" が出たときには、もちろん数ヶ月前から予約して発売日当日にゲット。仕事の合間を縫ってがしがしと読み進め。しかしストーリーが進むにつれ、あまりに気持ちが昂ぶりすぎて、苦痛のあまりページがめくれなくなってきて。それでもやめることができず懸命に読み進めていると、ある時点からはちょくちょく呼吸困難になるほど興奮するようになり、何度か本を置いて外の空気を吸いに出たり、ぐるぐるとその辺を歩き回ったりせねばならず。読了までにかかった数日間のうちには段々と食欲も失せ、佳境に入ってからは当然睡眠時間も削り、最後のほうではいい歳して本を抱えたままボロボロとマジ泣きし(いやー、本を読んで涙が出たのは久々だったよ)。そして読み終わってからは、あまりにも圧倒されて「もう当分、ほかの本は読みたくない……いや、読めない」と呆然とし、現にその後 1 ヶ月ほどは、ほかの本に一応手は着けてみてもハリポタ世界から帰って来れず、最後まで読み通せた本が 1 冊もなかったくらいなんであります。――今この段落を読んだそこのアナタ、ちょっと退きましたね? 私には見えるよ? うん、自分でも、なんでここまで入れ込むかねえ? って思うもん。でも思えば、その前の "Harry Potter and the Goblet of Fire" を読んだ頃から、すでにもうその傾向はあった。

なんでこんなに、入れ込んじゃったんだろう? すごく個人的な心の奥底のなにかをね、現実世界でもしょっちゅうちくちくと刺激されているなにかをね、こう、ざくっと "えぐられる" ようなかんじがするのですよ、ハリポタには。痛いんだが、治療前の虫歯をついつい突付いてしまうようなかんじで、やめられない。たとえば『指輪物語』に対する、一点の曇りもなくぱーっと晴れやかでピュアで穏やかで深々とした愛情なんかとは、全然違うんですわ。

けどさ。なんか時々、「私がこんだけ入れ込んでいるのは、ただ単に、本当はそこに書いてある以上のことを、自分の個人的な事情を反映させて勝手に誤読しているからってだけじゃないのか?」って気がしてくることも事実で。

ハリポタ肯定派の人と喋っていても、「楽しく軽く読めるところがいいよね!」とか言われると「その "軽く読める" 話でメシ食えなくなった私は、どうすりゃいいの?」ってかんじで。うーむ。やっぱり、私だけ、なにかを勝手に読み取ってしまっているのだろうか? 間違った読み方をしているのだろうか?

でもね、もういいんだ。たとえ本当はそこに存在しないものを私が見ているのだとしても、ここまで入れ込めるシリーズ物に出会えたということ、今この時代に生まれて、世界中のハリポタファンと一緒にリアルタイムで新刊を待ちつづけることができるということを、ありがたいと思って生きていくしかないんだ。もう私 "ぬるい" 本読みと呼ばれてもいいよ。本当に深い読書というものをしていないからハリポタごときで感動できるのだ――と立派な読書家の人たちに罵られても、かまわないよ。私は「ハリー・ポッター」が好きだ。

なぜ突然、こういうことを書いているのかというとですね。現在読んでいる途中であるベストセラーぶった斬りレビュー集、斎藤美奈子『趣味は読書。』(平凡社)の終盤において、「ハリー・ポッター」が取り上げられていることに、さっき目次を見ていて気付いたからなのです。まだそこまで読み進んでいないんですが、斎藤美奈子さんのキッパリとした文体でハリポタを貶されたら、私は弱い人間なので、「ああ、やっぱりハリポタが好きなんてことを大っぴらに語るのは頭の弱さを露呈するハズカシイことだったのだ!」といじいじして内にこもってしまいそうで怖かったのです。そしてハズカシイと思って好きだという気持ちを隠してしまうことは、こんなにも私をわくわく、どきどきさせてくれたハリポタに対する裏切りみたいで、なんだかとっても嫌だと思ってしまったのです。

と、いうわけで、今のうちに一度ちゃんとこの愛を大っぴらに表明して撤回できないようにしておこうと思い立った次第。私は「ハリー・ポッター」が好きだ。

(2003.11.4)

Posted at 2005年6月11日 01:33



All texts written by NARANO, Naomi. HOME