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2005年8月11日

『リターナー』(2002.9.2 初出)

映画・テレビ

Movable Typeに移行する前の過去記事を削除したものの、現行の「虫のいい日々」内の記事からリンクして言及しているものと、映画の感想文については、削除したままだとなんとなく落ち着かないので、とりあえず少しずつサルベージしてこっちに再録してみることにしました。

今回は、日本で作られた金城映画の中では一番気に入っている『リターナー』です。しかしこの感想文、久々に読み返してみたら、やたらめったら同じ監督の前作『ジュブナイル』を意識していますなあ。

『リターナー』
2002年の日本映画。監督:山崎貴。出演:金城武、鈴木杏、岸谷五郎。【公式サイト】 【Amazon.co.jp】


初日の 8月31日に観に行ってまいりました。うーんと、どういうふうに感想を書くべきか、ちょっと迷っているですよ。金城主演と言われているけど、この映画で一番光っているのは、鈴木杏ちゃんだと思ったな私は。同じ監督の『ジュブナイル』での彼女より、今回の彼女のほうが、ずっといい。

もちろん、金城武を久々にスクリーンで観られたことも、非常に嬉しかったのです。かっこよくなったねえ、金城。なんだかしみじみと見入ってしまいました。何年もにわたって見つめつづけている対象が、いいかんじに変わっていってくれて、「若い頃はよかったけど」などと言わずにすむのは、とてもありがたく幸せなことだ。アクションもきれいに撮れていた。すっと手足が伸びる瞬間に、独特の空気の動きというかスケール感をかもし出すのね、この人は。やはりテレビ画面より、銀幕だなあ。杏ちゃんとの掛け合い漫才(?)も息が合っていて、なかなか。振り回されて 2 枚目顔が崩れるのがまた、素敵なのです(「クソガキーっ!」ってね)。

ストーリーにはかなりお約束的な要素が強い(しかもタイムパラドックスだの考え始めると突っ込みどころがいろいろ)のだけれど、全体の雰囲気は悪くない。詰め込みすぎず欲張らず 2 時間弱で提示できる範囲で物語を作りました、みたいな(もっとも、パンフを見ると、映画に盛り込めなかった設定や場面が、けっこうあるようだ)。安直に説明しすぎでは、と思えた部分もあったけれど、SF的な発想に馴染みのない層や『ジュブナイル』から入ったお子さまファンを取り込もうとするなら、これくらいでちょうどいいのかも。

そんなこんなで、私としては、この映画を好きか嫌いか、と尋ねられたら、まず迷いなく「好き」と答えます。どちらかといえば、だけどね。絶賛はしない。宣伝で言われているような日本映画に革命、とかそういうのでは決してないと思うけど、なにも考えずに2時間、受身になって楽しむには、悪くない。そう、「悪くない」のだ。おそらく、『ジュブナイル』が好きだった人は、この映画も好きになると思う。駄目だと言う人もいる一方で、好きな人は、ものすごく好きで絶賛しちゃってますよね>『ジュブナイル』。(ちなみに金城武は「絶賛派」で、今回のリターナーのオファーが来るよりずっと前から山崎監督のファンであったらしいが。)

そう。当たり前だけど、とにもかくにも「山崎貴監督作品」なんですよ。『ジュブナイル』がネット上で流布していた「ドラえもん最終回」の確信犯的な焼き直しであったように、多分この人の創作の原動力は、「今までに接した好きなものを、自分でも作ってみたい」なんだろう。いや、大概の創作って、そもそもそういうものなのかもしれないけど。ただ、それをこの監督は、あまり咀嚼したり誤魔化したりせずに、ごろんとナマのまま出してきてしまうのだ。そこが、好き嫌いの別れるところなんじゃないだろうか。「黒コートをひるがえして疾走するヒーローってかっこいい → じゃあ自分の映画の主人公も黒コートだ」とか、「変形する戦闘機って面白い → じゃあ自分の作品にも出しちゃえ」とか。香港映画にもよくあるパターン。ただ、香港映画のような暑苦しいほどの開き直り強引パワーはなく。一生懸命、理屈を考えているっぽいところが、日本人らしく微笑ましい(笑)。

気持ちはとっても、よく分かるんだよ。一介の金城ファンである私だって、関係ない映画や小説に出てくるキャラを見てふと「あ、金城もこんな役を演じたら新鮮で面白いかも」なんて考えちゃうこと、あるもの。あるいは、素敵なメンズの洋服を見て「あ、こういうの着てほしいなあ」なんて。はたまた、ある特定のマンガ作品の熱烈なファンが、その「好き」というエネルギーを昇華するために同じ世界設定と登場キャラを使って自分でオリジナルなストーリーを作って同人誌で発表したりするのも、世間にはよくある話。それと根っこは同じことなんだよね。ちょっとスケールがでかいだけで。

だから、くどいようだが、気持ちはとーっても、よく分かる。「ああ、コレがやりたかったんだよね! 分かる、分かるよ!」って。何度も思った。そういう意味では、すごく作り手の「愛」を感じる。だから、いろんな部分が「お約束」であることまで含めて、この映画はこう作るしかなかったんだと思う。どこをどうとっても「いかにも」なのよ。笑いの部分も泣かせの部分も(とか言いつつ、つい引き込まれて目頭が熱くなってしまった場面もあったんですが)。『ジュブナイル』と同じように、各シーンがどこか懐かしい。お約束なんだけど、でもそれが踏襲されると、なんだか嬉しくなってしまう。

しかし一方で、だからこそ、なんとなく居心地が悪い、そこはかとなくチープさを感じる、という面もあって。これも『ジュブナイル』と同様。「ああ、コレがやりたかったのね!」と思うことで、観る側が一瞬、映画の世界から出て「素」に戻ってしまう。幸い、『ジュブナイル』ほど「かゆい」とは思わなかったけど。『ジュブナイル』でのような、中途半端かつぬるい恋愛要素がなかったせいかな。この映画のミリ(鈴木杏)とミヤモト(金城)の関係は、ちょっとよいね。ミヤモトは、10も年下のミリを「女の子」と捉える以前に、「相棒」としてかなり対等に見ちゃってるのだ。

長くなりました。とりあえず結論としては、『ジュブナイル』を楽しめた人と、かっこいい金城武および鈴木杏が見たい人には、おすすめです。特に金城は、今度スクリーンに登場するのが一体いつになることやら分からんので(涙)、ファンはこの機会を逃さず堪能しましょう。そして観るなら、細かい理屈は一切考えず、ひたすら入り込んで無心に楽しむのが吉。全体的な映像はなかなか雰囲気があってよいです。ちょっと現実味を抑えたような色調とか。

うーむ、思ったより「萌え萌え日記」にならんかった。今抱えている仕事が一段落したときにまだ上映していたら、少なくとももう 1 回は観に行くつもり。2回目はストーリーが分かっている分、心置きなく「金城くん素敵♪」モードで鑑賞できるかも。ええ、どんなに「よくあるパターン」が出てきても、見事それを美しく演じてくれているのが金城武であるかぎり、私は「そうそう、こういうシーンを金城で見たかったのだよね」と納得することができる。それは、たとえば特撮好きの人にとっては、宇宙船のシーンであるかもしれないし。監督となんらかの「ツボ」が同じところにあれば、素直に楽しめるのでは。

(2002.9.2)

Posted at 2005年8月11日 22:21



All texts written by NARANO, Naomi. HOME