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2005年10月31日

2005年10月に読んだ本

読了本 | 書籍・雑誌

なぜだか『機動戦士ガンダムさん』に非常な衝撃を受けた10月でした。


ロアルド・ダール『チョコレート工場の秘密』(柳瀬尚紀・訳/評論社,2005)
 賛否両論の新訳バージョン。私は旧訳(田村隆一さん)に馴染んでいたので、どうしてもそっちを贔屓してしまうが、これはこれでアリだと思う。ものすごく「柳瀬尚紀さんらしい」訳文でした。これについては、別に書くかも。【Amazon.co.jp】


ロアルド・ダール『ガラスの大エレベーター』(柳瀬尚紀・訳/評論社,2005)
 『チョコレート工場の秘密』のラストシーン直後から始まる続編。旧訳版のタイトルは『ガラスのエレベーター宇宙に飛び出す』だったかな。『チョコレート工場の秘密』と比べると、なんだか行き当たりばったりにとにかく突飛な展開をつなげたようなストーリー展開が子供の頃から少々物足りなかったのだが、とりあえず『チョコレート工場』を読んだら続けてこれも読んでしまうのが常。寝たきりだったチャーリーのおじいちゃんとおばあちゃんたちが、若返りの薬に目の色変えて常軌を逸してしまうところが、子供心に強烈だったことを思い出しました。【Amazon.co.jp】


妹尾ゆふ子『小説 ロマンシング サガ - ミンストレルソング 皇帝の華』(スクウェア・エニックス,2005)
 ゲームのノベライズ版。ただし外伝的なものらしいです。ゲーム自体をまったく知らないまま読んだので、どこまでがゲーム設定に基づく記述なのかはよく分かりませんが、違和感を覚えることもなく、純粋に小説として楽しむことができました。もちろん、元のゲームを知らないために汲み取れなかった部分はいろいろとあるのでしょうけれど。
 やはり私は妹尾さんの文章が好きだなあ、と思いました。描かれているものがすんなりと目に浮かび実感できるのと同時に、言葉そのものの妙や、重厚な部分と軽みのある部分とのバランスのよさを楽しむこともできる。
 物語の中に入り込んでいる自分と、文章そのものを味わいつつどこまでがゲーム設定なのだろうなどと考えている自分が同時に存在するということ自体が、そのまま、作中の皇帝たちが実際に経験した事実と、皇帝たちの前に出た詩人の唄に歌われ後世に伝えられていくであろう物語との関係に連想でつながったりもして。
 私が「異世界もののファンタジーが好き」というときに漠然とイメージしているものは、各キャラがそれぞれの思惑で動きそれが噛み合ってものごとが動いていく流れを、全体を見渡せない者たちのミクロな視点で描くと同時に、展望的に「歴史が作られていく過程」として描き、かつそのマクロな視点を持つ何者かもまた、なんらかの存在として描かれている……というような構造なんだな、というようなことを、読みながら物語とは直接関係のないところで漠然と考えていました。【Amazon.co.jp】


麻耶雄嵩『神様ゲーム』(講談社,2005)
 ラストで主人公が味わう、自分の目に見えていた世界が崩壊していくような感覚はいかにも麻耶雄嵩で、ファンの期待は裏切らない。後味の悪さも含めて。ただ正直、大っぴらに児童書として出されるとなんか納得行かないというか。子供が読むなとは言わないんだけど、大人向けに出版されてて子供がこっそり手に取るくらいの位置付けであってほしいような気がしますよ。【Amazon.co.jp】


小倉千加子『シュレディンガーの猫〜パラドックスを生きる〜』(いそっぷ社,2005)
 あちこちに掲載された短文をまとめたもので、かなり古いものもあり、1冊の本としてはけっこうバラバラな印象。なんかなー、読んでると、この人はとにかく「観察者」であり「分析者」であって、どんなことについても「当事者」の位置に自分を置かない人なのかな、というもどかしさがつのってくる。あと、尾崎翠関連の文章で、同じ著者の『「赤毛のアン」の秘密』で感じた違和感と同じものを覚えた。尾崎翠の晩年が実際にどのようなものであったかによって、彼女の作品に対する見方が変わってくるっていうのは、読者としては不幸なのではなかろうか。作品は作品として読みたいなあ私は。【Amazon.co.jp】


よしながふみ『愛すべき娘たち』(白泉社,2003)
 前に、よしながふみはいいと思うんだけど、かなりどぎつい描写が含まれる作品もあるという噂を聞いたので未読のものに手を出せていない、という話をしていたら、そういうのでない作品を教えてもらいました。連作短編集。うむ、なるほど、どのお話も名作である。あまりにも端整な名作すぎて、本当は目を逸らしているほうが楽な部分をえぐりすぎていて、読んでいると息苦しくなるほどだ。いろんな要因で歪んだ部分(歪まされた部分)を持ちながら、そこを矯正するのではなく、受け入れようとしながらしなやかに生きている人々の姿は、救いでもあるのだけれど。【Amazon.co.jp】


よしながふみ『こどもの体温』(新書館,1998)
 これも、『愛すべき娘たち』と一緒におすすめいただいた連作短編集。淡々と過ぎていく毎日の中にも、そのときどきの悩みや苦しみや葛藤があって、それでもやっぱり、毎日は過ぎていって……というのがすごくうまく切り取られていると思った。第1話で中1だった子が最終話で中3になっているのを見て、なんだか親戚の子の成長に気付いたときのようにしみじみしてしまったよ。【Amazon.co.jp】


よしながふみ『大奥』第1巻(白泉社,2005)
 連載が始まったときに、ネット上であれこれ話題になっていたので、単行本をすごく楽しみにしていました。おおお、面白い! こういうパラレルワールド設定のよしなが作品って初めてですが、なんかすごい作品になっていきそうな予感がします。【Amazon.co.jp】


佐々木倫子『Heaven? ご苦楽レストラン』全6巻
 現実にこんな人の下で働いたら胃に穴が開きそうですが、この漫画の舞台となっているレストランのオーナーの、すがすがしいほどにゴーイング・マイ・ウェイなキャラが素晴らしい。スタッフ一人一人も、なんとも個性的。ストーリー運びも佐々木さんの作品ならではの独特のテンポで笑わせていただきました。そしてあまりにもあっけないような、それでいてもうこれしかないような、第1巻の冒頭にきれいにつながる、巧いラストでした。【Amazon.co.jp】


大和田秀樹『機動戦士ガンダムさん さいしょの巻』(角川書店,2005)
 今頃になって初代ガンダムのネタ満載のこんな本が堂々と出るのもすごいが、そのネタをほぼすべて理解できる自分にも驚いた。【Amazon.co.jp】


今市子『幻月楼奇譚』(徳間書店,2004)
 『百鬼夜行抄』を読んでから、この作者さんのほかの作品も読みたいなと思っていたら、たまたま目につくところにあったし、雰囲気的にも『百鬼夜行抄』に似ているのかなと思ったので。CharaコミックスというのがBL寄りのレーベルだというのは、買ってから知った。でも、ほとんど気にならないくらいBL色は薄かったと思います。昭和初期の老舗の味噌屋の若旦那を主役とした連作短編集。『百鬼夜行抄』と同じく人外のものたちは登場しますが、人間ドラマにより重点を置いたかんじ。【Amazon.co.jp】

Posted at 2005年10月31日 23:31



All texts written by NARANO, Naomi. HOME