« SPIRIT | 最近 | Nostradamus »

2006年3月24日

映画『SPIRIT』主題歌差し替えの件

映画・テレビ | 音楽

いやはや、前回、映画そのものの感想で更新したときには、すぐに続きを書くようなことを言っておいて、やっぱり数日が経ってしまいましたが、表題の件。映画『SPIRIT』の主題歌が、日本公開バージョンだけオリジナル版とは異なっているというお話です。よそさまからいただいたアピール用のバナーも、もう一度貼っておきます。

SPIRIT:ジェイ・チョウの主題歌が聴きたかった。
(リンク先:周杰倫に仕える「くのいちブログ」

こういうのも。

SPIRITの魂はジェイ・チョウの霍元甲にある。
(リンク先:SPIRITの魂はジェイ・チョウの霍元甲にある。


ほうぼうの中華系映画サイトではかなり前から話題になっているのですが、うちを読んでくれてる方々はほとんどがご存知ないのではと思うので、一応説明すると、もともとのバージョンで使われていた主題歌は、主人公の名前を取った映画(原題)と同タイトルの「霍元甲(フォ・ユァンジア)」

上のバナーおよびリンク先ブログにも書かれているとおり、中華ポップス界のトップスターであり、前々から李連杰(ジェット・リー/リー・リンチェイ)の大ファンだと公言もしていた、台湾の周杰倫(ジェイ・チョウ)が、本作の主演俳優であるリンチェイ本人から、若い人たちにも関心を持ってほしい映画だからぜひジェイに、と直接指名を受け、張り切って映画のために新たに書き下ろした曲です。

ところが。公開間近になって流れた情報によれば、日本国内ではエンドロールで流れる曲が、日本の比較的新しいバンドが提供する、まるっきり印象の異なったメロウな日本語の女性ヴォーカル曲(しかも恋愛系の歌詞??)になるというではありませんか。別に映画のために書かれたものでもなんでもありません。ちょうど同時期に発売が予定されていたアルバムから持ってきた、既存の一曲。

てっきり、「主題歌も要チェック! 中華圏では老若男女だれでも知ってる大スター、ジェイ・チョウの書き下ろし曲! 主演のジェット・リーも映画にぴったりと大絶賛!」という方向でのプロモーションになるもんだとばかり思っていたのになあ。びっくり。

この「日本版テーマソング決定!」のニュースを知ったとき、私はものすごーくモヤモヤとした、嫌な気持ちになりました。いったい、一般の観客の目に見えないところで、どんなやりとりがあったのか。わざわざ日本でだけ、ラストに流れる音楽を映画と本来無関係な、まったく曲調の違うものに差し替えて、鑑賞後の余韻をオリジナル版とは変えてしまうことのメリットって、なんなのか。そして、それはだれにとってのメリットなのか。

たしかに、ジェイ・チョウは日本ではまだまだ知名度が低いかもしれません。義務教育を受けていれば少なくとも断片的には誰でも聞き取れる英語の洋楽などと違って、北京語で脚韻を踏んだ歌詞は、多くの日本人の耳には馴染まないかもしれません。でも、日本人や欧米人の登場人物もいるにせよ、基本的に中国を舞台として中国語のセリフで話が進む中国武術の映画なんだから、テーマソングもその延長線の中国語でいいじゃん! 駄目なの!? 映画を隅々まで堪能しにきたリンチェイのファンに、どうして最後の最後で、リンチェイ大プッシュの曲を聴かせてくれないの!?

それでも、ニュースを聞いただけの段階ではいやいや、実際に自分の目で映画のラストシーンを観たあとに日本バージョンの曲を聴いたら、「あ、意外といい流れじゃん? 映画に似合ってるじゃん?」って感想になる可能性もあるし……と、態度を保留していたですよ。

で、観てきたわけですが。うーーーーん。

この手のイマドキな音楽に造詣の深くない私が言っても説得力ないかとは思うけど、やっぱり、あんまり合わないと思うよこれ……。曲自体はおそらく、この手の音楽が好きな方にとっては、よいものなのでしょうけれど(と、分かんないのでそういうことにしておく)、この映画のエンドロールで聴くと、違和感があるよ。なぜこれを選んだのか、と思ってしまうよ。

それに改めて考えるに、たとえ差し替え後の曲がそんなに浮いてなかったとしたって、「最初から思い入れたっぷりで映画のためだけに書かれた曲」と、「ほかから持ってきた、あとづけの“ありもの”の曲」だったら、前者が尊重されてしかるべきではないかと、強く強く思うよ。

オリジナル版と違う、日本で売り出し中のバンドの曲が国内バージョンにのみ別途つくことによって、マーケット全体で動くお金は大きくなるのかもしれないけど……なんか、「日本の観客、舐められてるのでは」と哀しくなってしまうのです。テーマソングなんて、実はテーマを意識して作られたものじゃなくたって流行りっぽいカッコよさげなものを流しておけば誰も文句なんか言わないさ……って、配給側にたかを括られてるような気がしてきちゃうのです。日本の観客って、そこまで無頓着で鈍感ですか?

この映画に限らず、最近は、日本でだけ違う音楽がつく映画ってけっこう多いので(私はよく知らないのですが、ちょくちょくあるらしいですね?)、いまさら騒ぐことでもない、という考え方もあるのかもしれません。でもむしろ、本当によくあるケースなのだったら、この映画の場合にかぎらず、こういうことを積極的に問題視する人がいてもいいんじゃない? この映画の場合にかぎらず、どんな映画も、音楽までをひっくるめて「完成したひとつの作品」だと思いたいよ、私は。海外で同じ映画を観た人とも、同じメロディを味わい、同じ印象を共有したいよ、私は。その選択肢を最初から剥奪されていることを、悔しいと言ってはいけないの? 国内で公開されただけでありがたい? 日本の観客って、そこまで鷹揚でいなくちゃいませんか?

そりゃ外国語の場合は歌詞理解の問題もあるから(歌詞にも字幕をつけるという方法はあるにせよ)、まったく同じように受け止めることは不可能かもしれないけどさ。異なる文化圏の音楽だったら、日本人の耳には違和感のあるメロディラインだってあるかもしれないけどさ。でも、“外国の映画”って、そういう「ちと感覚が違うかも」ってとこまで込みで、受け止めて、それに応じた感想を抱くものじゃないの? そんなこと言うのはマニアックなファンだけで、一般の人たちには拒否される? 本当に? 日本の観客って、そこまで新奇なもの嫌いで狭量なのですか?

「まぼろし」になってしまったオリジナル・バージョンの主題歌、ジェイ・チョウの「霍元甲」は、映画の香港側オフィシャル・サイト内の主題歌PVページで聴けます。

個人的には、ちゃんと主演俳優からの「若い人向け」という要請に応えている洗練された仕上がりでありつつ、映画に似つかわしい力強さやレトロな中華テイストも盛り込まれ、クラシックから音楽の世界に入ったジェイらしい美意識をもってきっちり作られた、なかなか気持ちいい曲だと感じました。特にジェイのファンってわけではない私でも、初めて試聴したときには「おお、かっこいいじゃん! リンチェイに似合ってるじゃん! さすがリンチェイのファン! 職人芸!」と思って、これを映画館で聴ける日を楽しみにしていたのだけれどなあ。(職人芸っていうと語弊があるかもしれないけど、ワタシ的にはなんかジェイ・チョウって、「いつも如才なく狙ったところをはずさない計算された曲作りをする人」というイメージなんですよね。聴き込んでるファンの人たちがどう捉えているかは知らんけど。)

そしてまた、たとえオリジナル主題歌が、自分にとって心地よいと感じない楽曲であったとしても、上に書いたように「映画のために作られた曲を却下してまったく関係ない曲を持ってくるのはなんか違う!」という、私の意見は変わらないと思います。

とりあえず、この「霍元甲」のMVを去年出たジェイのアルバム「11月的蕭邦(11月のショパン)」からの曲のMVと一緒に収録したDVDが日本でも来月リリースされるらしいので、買うつもり(私はAmazonで予約しましたが、商品情報はHMVのほうが詳しい)。“日本で”1枚でも多く売れることに意義があると思うので、あえて日本盤を待っています。熱心なジェイのファンなら、とっくに発売されている輸入盤のDVD付きシングルCDと両方買うんだろうけどさ(笑)。

それでもって、私が今ここに書いてることなんて、すでにあちこちでもっと的確に語り尽くされていることなんですが、たとえこんな辺境サイトでも、ネット上に表明される意見の“数”が1つでも増えることは、まったく無意味ではないような気がするので、やっぱりアップしておくことにしました。ここまで読んでくれてありがとう。

Posted at 2006年3月24日 12:08

トラックバック(管理人承認後に表示)

"映画『SPIRIT』主題歌差し替えの件"へのトラックバック記事:

» 映画「SPIRIT」主題歌差し替え関連記事 from SPIRITの魂はジェイ・チョウの霍元甲にある。
このブログは映画SPIRITオリジナル上映を願い、配給会社様にアピールすべく立ち上がりました。公開後も変わらず訴え続けます。 1館でも、1日でもいい。オリジナ... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2006年3月24日 18:14

コメント

こんにちは。まえにかかれていたスピリットの差し替えの件ですが、ネットを探していたら差し替えについてサイトを作っている方がいましたのでお知らせしますね。
http://spirit-jaychou.hp.infoseek.co.jp/
すごく映画についても、差し替えで問題になった曲についても詳しいので一度見てみてくださいね。私もこの話題にはまだ胸の中がすっきりしないので協力できたらとおもってかきましたが、ご迷惑でしたら失礼します。

投稿者 はてな : 2006年5月 6日 21:28





All texts written by NARANO, Naomi. HOME