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2006年3月31日

ナルニア国物語/第1章 ライオンと魔女

映画・テレビ

2005年のアメリカ映画(公式サイト)。原題「The Chronicles of Narnia - The Lion, the Witch and the Wardrobe」。

監督:アンドリュー・アダムソン
出演:ウィリアム・モーズリー(ピーター)、アナ・ポップルウェル(スーザン)、スキャンダー・ケインズ(エドマンド)、ジョージー・ヘンリー(ルーシー)、ティルダ・スウィントン(魔女)、リーアム・ニーソン(声:アスラン)、ジェームズ・マカヴォイ(タムナス)他


(すみません、完全に「原作を読んだ人」向けの感想文になっちゃってるかも。)


C. S. ルイスによる別世界ファンタジーの古典「ナルニア」シリーズの第1巻『ライオンと魔女』がディズニーによって映画化されると聞いたときには、正直「げっ、ディズニーっすか?」という気持ちでした。

とはいえ、その後の報道で、舞台設定はイギリスのまま(ナルニア部分のロケ地はニュージーランドだけど)、俳優もイギリス人を使う、象徴的に登場する宗教思想に基づいた要素も排除せず原作のストーリーを尊重する、と言っているのを見て、ちょっぴり安心してみたり。しかしながら、製作途中のメイキング動画をネットで見て、「なんか戦闘シーン用の小道具とかが微妙に指輪っぽい雰囲気……あらら、やっぱりWETAのリチャード・テイラーさんが出てきたよ」とまたまたそこはかとなく不安になってみたり。

というか、『カスピアン王子のつのぶえ』や『さいごの戦い』ならいざ知らず、『ライオンと魔女』における“軍 vs 軍”の戦闘描写って私、実はあんまり強く意識してなかったのですね。私にとって、あの物語における戦争って、「そういえばそんなシーンもあったか」的なものでしかなくて。なので、トレイラーを見ても「へ? そこをそんなに大規模な迫力満点の大戦争にしちゃうんですか? そこを映画のハイライトにしちゃうんですか? アスランの“契約”が成就したシーンじゃなくて?」みたいな。

そしてさらに。ナルニアでない、“こちら側の世界”における戦争もまた、最初に読んだときの私の意識の中では、とても希薄でした。大人になってから再読してみて、ようやく「あ、そういえば主人公たちが物語の序盤で田舎のお屋敷に滞在していたのは、戦禍を逃れるための疎開だったのか!」と改めてハッと気付いたくらい、子供の頃はその辺をのほほーんと読み逃していました。

しかし映画バージョンでは、この“戦争”の気配が、かなり濃厚です。そもそも最初のシーンが、「え、これってナルニアの映画だったよね?」と半券を確認したくなるような、ロンドンを空爆するドイツ軍飛行機のシーン。ナルニアに行ってからも、この国を100年にわたる長い冬から解放するために戦うべしという話になると、「戦争を逃れて疎開したのに、また戦争に巻き込まるなんて……」というようなセリフが出てきます。私たちがいる“こちら側”の描写に、より力が入っているし、2つの世界の関係がアナロジカルな面でより密接につながっているというか。その分、本で読んでいたときの、ぐぐっと入り込んで現実世界の存在を忘れるようなかんじはちょっと薄いかも。

主人公たちの母親など、ちらりとも登場せず、私たちがいる側の世界の描写が最低限に抑えられている原作では、主役の子供たちの意識の中でも、完全に「自分たちが生まれ育った世界<ナルニア」になっちゃってるから、一件落着後も元の世界に戻ることなく、そのままそこで一度、大人になっちゃうほどの長い年月を過ごしてしまうというのをわりとすんなり受け入れられるんだけど、あれだけお母さんや(写真だけでの登場とはいえ)お父さんの存在をきっちり描かれると、原作知ってても「ええー? たまたまきっかけがあって思い出さなかったら、そのまま二度と親の顔を見ることもなくナルニアに骨を埋めちゃう気だったんですか?」と(笑)。

こちら側にもあちら側にも戦争が……というのを強調するような構成については、これも“アリ”な解釈だな、とも思って納得はしました。むしろ、なかなか悪くない、純粋に面白いと思った。こうやって分析的に鑑賞している時点ですでに、“入りこんでない”ってことではあるんだけど(『ロード・オブ・ザ・リング』第1作のときは、画面にぱーっとホビット庄の風景が広がってタイトルロゴが出た瞬間に、無条件で何も考えられずじわわわーんと涙が出てきちゃったんだけど、そういうのと比べると、かなり醒めてた)。

観おわったあとでパンフを読むと、監督インタビューで


――子どもの頃、原作を読んで抱いたイメージを、今回の映画にも採り入れたそうですね。
「実際に読み返すと、ほのめかす程度にしか書かれていないんだけど、激しい戦いの場面が印象に残っていた。(後略)」


といったやりとりがあり、やっぱりなーと思いました。たまたま、私は「激しい戦いの場面」にはさほど感銘を受けなかったけれど(「ほのめかし」に鈍感だった?)、監督にしてみれば、自分が原作から受け取ったものを展開させて掘り下げていくと、ああいう形になるのね。だったら観客としては、それを受け入れるだけですよ、うん。

しかしそれにしても、実は映画を観ながら、「どうせ戦いのパートを気合入れて描くなら、あれとかあれはぜひ見たかったけどなあ」と思ってた要素が、あとで確認したら、ことごとく『ライオンと魔女』以外のナルニア物語(『カスピアン王子のつのぶえ』など)に出てくるエピソードでした。ほんっっとに、まっったく、私にとっては『ライオンと魔女』の中の戦いのシーンって印象薄かったのね……。ということは、私としては、これから出てくる続編映画のほうがもっと楽しめそうってことかしら♪

映画ですごく好きだったのは、子役たち4人がどこまでも「普通の子」だったことと、彼らのきょうだいとしての関係がさりげなくも細やかに描かれていたことです。それぞれの性格の違いも、分かりやすく描写されてました。最年長者としての責任を感じつつも時に空回りしたり迷いがあったり、でもなかなか健気で真面目なお兄ちゃんではあるピーター。お姉さん風を吹かせて現実主義なんだけど、どこかモロいところがありそうなスーザン。繊細であるがゆえに周囲に反抗的でドツボにはまってしまうエドマンド。そして末っ子ルーシーね。原作イメージより幼くてあどけない部分が強調されてるような気がしたけど、かわいかった。話が進むうちにピーターの顔つきが段々としっかりしてくるのが、よかったなー。原作を読んでたときには、実はピーターって4人のなかで一番、面白味のない子のように思っていたのだけれど、映画でルーシーとのやりとりなどを観ていたら、妙に感情移入してしまった。

全体的には、まあなんというか、「動く挿絵」ってかんじで楽しく見てました。私が子供だった頃、「ナルニア」シリーズを読んでいて一番、心に強烈なインパクトを残したのは、あえて言葉にするなら、“至高体験への志向性”のようなものだったのですね。「アスラン」という名前が口に出されただけで湧き起こる、くらくらとお酒に酔うような(当時はお酒なんてもちろん飲んだことないですけど)気持ち。アスランが待ち受ける世界の果てに向かって船を進めるうちに、光や水だけでこれ以上は何も要らないという満たされた気持ちになっていく至福感。そういったものの強烈な追体験は、やはり本を読んだあの頃の私の、ごくごく個人的なものでしかないので、映像には求めません。

ああ、それと、エンドロールで美術スタッフの偉い人として、『指輪物語』の挿絵で有名なアラン・リーの名前があったことに大ウケ。「キングコング」にも参加してたよね? 「ロード・オブ・ザ・リング」の1作目が公開される前のインタビューでたしか、「数週間の滞在ということでニュージーランドに呼ばれたのに、もうかれこれ……」云々って言ってませんでしたか。結局、「指輪」映画の仕事が終わったあともおんなじようなことやってるのね。これでもう何年、ニュージーランドにいるんでしょうかこのお方。映画作りにハマッちゃった?

追記(4/1):
RINさんの「凛大姐&小姐的極楽日記!」を拝見していたら、もう1つ書いておきたいことがあったのを思い出しました。

一昨年だったかに私、まだ撮影が開始してない段階のナルニア映画取材番組の動画をネット上で見たことがあったんですよ。その中で、映画のために赤ちゃん時代から訓練されているという、ちっちゃな仔オオカミたちが紹介されていてね。

もうもうもう、「こんなに人なつっこくてあどけないオオカミちゃんたち、将来ほんとに悪役演技なんてできるの!?」と心配になっちゃうくらい、可愛かったです。

だもんで、完成した映画で悪い魔女の手下をやってるオオカミさんたちに再会したときには、「まあまあまあ、すっかり大きくなっちゃってー。まあまあまあ、立派に演技もできるようになったのねー」と、めいっぱい親戚のおばちゃんモードに。スクリーンの中で何をやられても、「ああ、健気にお仕事している……(ほろり)」としか思えません。よくがんばりました! 偉かったぞ!

でもお子さまがたには、あんな健気なコたちでも、やっぱり怖かったんだろうな。彼らの仔オオカミ時代を見ていない同居人A氏38歳も、私の隣の席で、ちょっぴりびびっていたぞ。まあつまり、あのコたちに演技力があったということですよ、うん(親戚のおばちゃんによる贔屓目?)。

Posted at 2006年3月31日 17:06

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おおおーーー、寒いっっっ!! あと、数日で4月なのに、外は吹雪いているーーーーーっ!!!{/ase/}{/ase/} 滋賀は、白い魔女の支配下に入ったのだろう... [続きを読む]

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※上段の写真は、先週末、上海の映画館前で撮影してきたものです。納尼亜でナルニア・・・イメージで読める(笑) KAZZの評価  安心して楽しめる作... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2006年4月 3日 15:36

コメント

こんばんは、記事内リンク、多謝でございます!
オオカミさんたちは、出演陣の中でもとりわけ
好演していたと思います。
最初、実写なのか、CGなのかわかんなかったのですが
ビーバーさんその他の動物と比べて格段に動きが
リアルだったんですよ。
やっぱり訓練したホンモノだったんですね!
でも、100%のオオカミって、トレーニングが
難しいので、4分の1ぐらい、犬の血を入れてる
かもしれませんねー。
ビーバーさん宅を襲うシーンとか、ホント迫力
満点でした!!
(それに比べると、魔女に襲いかかるアスランは
イマイチ迫力に欠けました・・・汗)

投稿者 RIN : 2006年4月 2日 01:31



こんちには、コメントありがとうございます!
やっぱりオオカミさんは、ほかの動物たりよりリアルに見えましたか! 迫力ありましたよね!

ビーバーさんとかは、ああいうおうちで人間っぽく(?)生活していたりする役柄上、本物のビーバーではありえない動きにならざるを得ないんでしょうけど。

>でも、100%のオオカミって、トレーニングが
>難しいので、

そうなんですね。なるほど〜。

アスランは、原作本を読んだ子ども時代に、ものすごく神々しい存在としてイメージを固めてしまっていたので、何を見ても不満だった可能性もあるんだけど、私も正直、迫力不足に感じましたです。襲い掛かるシーンなどの演出もけっこう、あっさり風味だった気がしたし。

投稿者 ならの : 2006年4月 2日 16:13





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