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2007年2月28日

2007年2月に読んだものメモ

読了本 | 書籍・雑誌


笙野頼子『愛別外猫雑記』(河出文庫,2005年12月/親本:河出書房新社,2001年3月)
 保護した野良猫さんたちのために、住み慣れたマンションを出て家まで買っちゃった笙野さんの戦いの記録。この人の本は、いつも読み終わるとしばらく、思いっきり厭世的になるなあ。でも久々に読むと、やっぱり面白い。引っかかりまくりの文章で、脳味噌のいつもは使っていない部分が刺激されるかんじ。
 敵とみなした相手の描写が、本当に魑魅魍魎じみていて相変わらず凄まじい。決して誇張でなく、本当に著者には、理解不能な言動を取る人々が、こういうふうに見えているのだろうなあと力技で納得させられてしまうのがすごい。
 「自分は猫好きなんじゃなくて、友達になった相手がたまたま猫だったのだ」としつこく主張するあたりとか、あと猫の鳴き声描写とかもツボ。怪我をして殺気だった猫の鳴き声が、「ばっうーう、ぎゃっらーっ、ぎゃっわーっ、あいあいあい、ぎゃっうーう、らあああああ、ばぶばぶばぶ、ぎゃぎゃぎゃるるる、……ぎゃっわーい、あっぐぇーい、ばぶばぶば、ぐるぐるぐる」などと記述されているの。や、たしかに、耳に聞こえるとおりに忠実に書いたら、こんなかんじかもだけど、やっぱりすごい。【Amazon.co.jp】


酒井順子『都と京』(新潮社,2006年9月)
 タイトルは「みやことみやこ」と読むそうです。東京生まれ東京育ちで、三十路を過ぎていきなり京都フリークになってしまった著者が、東京人の目で見て語る、東京と京都の違い。京都という街の面白さ。
 ものごとには、常に「100%」というものはないのだということには敢えて触れず、あらゆる事象を「断定」して分類していくのは、この人の芸風だと納得はしているのけれど、読んでる側としては、それがツボにハマって「そうそう、あるあるある!」と膝を叩いて笑えるときと、「うーん、でもねえ」と、もにゃもにゃするときと両方あって、特に、「関西出身で、大人になってから関東で暮らし始めた」、つまり酒井さんとはどちらかといえば反対の視点を持つ私としては、今回はその振り子の揺れが大きかったです。【Amazon.co.jp】


中村うさぎ『変?』(扶桑社,2002年8月)
 買い物依存症で通院中だった中村さんが、さまざまに「偏った」人たちと、次々に対談をしていく本。この対談シリーズが雑誌連載されている途中で、彼女は買い物依存症からホストクラブ中毒に移行してしまってます。
 対談を重ねていくうちに、彼女が自分の「変」さを、治療によって世間並みに近づけていくのではなく、究極まで突き詰めて文章にしていこうという方向に気持ちを固めていく過程がうかがわれて、ちょっと感動的。また個人的には、この対談集のなかで、中村さんがキリスト教家庭の育ちでミッションスクール出身ということを初めて知って、いろいろなことが腑に落ちた。【Amazon.co.jp】


酒見賢一『墨攻』(新潮文庫,1994年7月/親本1991年3月)
 アンディ・ラウ主演の映画版を観て面白かったので(あ、映画の感想もそのうち載せます……多分)、原作小説も読んでみた。映画のベースになっているのはマンガ版だということだけど。ああ、そもそもの原作はずいぶんと、枯れた雰囲気というか。淡々とした文体のなかに凄みがあるというか。主役の革離のキャラクターも、映画よりずっと冷徹で。
 映画版の革離が、精錬潔白だけどわりと甘いところもあるキャラクターになっているのは、完全にアンディ・ラウ本人のキャラに引きずられていたんだなー。映画単体としては、悪くないと思うけど。
 しかし、このあっさりとした短い小説を大長編マンガにしようと思った人がいたことが、いちばんの驚きだ。マンガ版も読んでみたくなってきた。【Amazon.co.jp】


斎藤美奈子『たまには、時事ネタ』(中央公論新社,2007年1月)
 2001年から2006年までの時事コラムをまとめたもの。あ、この事件って、あの頃だったのか……コレとアレは、同じ年だったのか……みたいに改めて思っちゃうことが多くて、読みながら自分の時系列把握のいい加減さにげんなり。
 肝心のコラム内容は……斎藤さんなら、きっとこういう角度からの視点で、こういう方向性を打ち出して、気持ちよく読み解いてくれるんだろうなあ、というところを外さず突いてくれるという面では、期待どおり、というか。書き手としての業界の雰囲気が一方向に流れたときののやりづらさ、みたいな話は、ずんと来ました。【Amazon.co.jp】


中野翠『よろしく青空』(毎日新聞社,2006年12月)
 こっちは、いつも年末に出る恒例の時事コラム集。書評家の「狐」さんが、中野さんのご親戚で、しかも去年、お亡くなりになっていたというのは、これを読んで初めて知りました。そうだったのか。【Amazon.co.jp】


有栖川有栖『正しく時代に遅れるために』(講談社,2006年12月)
 推理作家のエッセイ集。最近、この人の小説、読んでないなあ。昔は新刊が出るといそいそと買っていたのに。というか、ミステリ自体をあまり読まなくなった。
 圧巻は、最後のほうの追悼文集。鮎川哲也さんが亡くなったときに、さまざまな媒体から追悼文を依頼されて、いくつもいくつも連続で書いていたのですね。それが、ひとつひとつ違う内容で、いろんな角度から、有栖川さんの見た鮎川さんの姿が見えてきて、切ない。
 書評や映画評のコーナーで、本の帯のキャッチコピーや新聞広告に掲載された1行コメントまで、すべて「作品」として収録されていることに、ちょっとびっくり。あんまりこういうの、単行本にきちんと納められていることって、ないよね?【Amazon.co.jp】


坂本武信『63歳・東京外語大3年 老学生の日記』(産経新聞出版,2006年12月)
 あと1年で定年というときに、心筋梗塞で入院したのがきっかけで退職を早め、しかし濡れ落ち葉になるのはイヤというので、東京外国語大学のポーランド語学科に入学した人のエッセイ集。40歳も年下の同級生たちともうまく馴染んで、ポーランドへ語学研修にまで行ってしまうのだ。
 概要を見てすごいなあって思ったけど、実際にこの本を読んでみたら、もともと現役時代から、けっこう適応力が高くて柔軟性のあるおじさんだったんじゃないかなー、と思った。【Amazon.co.jp】


(以下、漫画本。)


ワタシ的「今月の最大ニュース」は、13年ぶり!に『まじっく快斗』の新刊が出たことです。絵柄、3巻の頃と比べると、かなり変わったよなあ。あとがきには、第5巻について「今世紀中に出したい」と書いてありました。今世紀中ねえ……。

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All texts written by NARANO, Naomi.