« 遠い誰かのファンであること、そしてそれを表明すること 《1》 | 最近 | 諏訪緑『諸葛孔明 時の地平線』 »

2007年4月30日

2007年4月に読んだものメモ

読了本 | 書籍・雑誌

前回の記事の最後に「次回につづく」なんて書いたきり、そのままになっていますが(すでにもう、何を書くつもりだったのか、忘れかけていたりして←こらこら)、先に月末恒例の読んだものメモを出しときます。


岸本佐知子『ねにもつタイプ』(筑摩書房,2007年1月)
 一見、ぶっとんだ論理展開のようでありながら、なんだか段々(大変におこがましいことで恐縮ですが)「この人は私ですか」とも思えてくる、なんとも不思議なエッセイ集。とりわけ、子供時代の自分の目から見えていた、世界の得体の知れなさ、つじつまの合わなさと表裏一体の奇妙な符合、孤独感……みたいなものを、大人になってしまってから、こんなにリアルに文章で再現できてしまう人がいるなんて、と非常な感動を覚えました。
 とりあえず、私も「べぼや橋」の検索ヒット数アップに貢献してみることにする。べぼや橋。【Amazon.co.jp】


斎藤美奈子『それってどうなの主義』(白水社,2007年2月)
 “「それってどうなの主義」とは、なんだか変だなあと思ったときに、とりあえず、「それってどうなの」とつぶやいてみる。ただそれだけの主義です。”……だって。声高に反論してみせるわけでもなく、しかし違和感をそのまま放置するわけでもなく。『物は言いよう』なんかでも思ったのだが、この人は、こういうところが「うまい」のだよなあ。たとえ本当は旧弊な保守派の人々の神経を逆なでするようなことを言っていても、とにかく「搦め手」から攻めて、尻尾をつかませない。真っ向からぶつからないで、いつのまにか優位に立っている。そして言いたいことを言ったうえで逃げ切っている、という。こういった文章テクニックはぜひとも見習いたいものでございます(無理)。
 地方紙「新潟日報」から再録されたコラム群が、地域密着なかんじで新鮮でした。【Amazon.co.jp】


近野由紀『ダーリンは、マレーシア人』(三修社,2004年10月)
 日本で知り合ったマレー人の彼と結婚して、クアラルンプールに渡った著者の、国際結婚生活エッセイ。言葉や環境の違いに加えて、“常識”レベルからくつがえされる、現地の人たちとの習慣や感覚の違い。それでも、つらかったことについては、泣き暮らしていた頃もあった……と、さらりと書くに留めて、全体のトーンとしては明るく異文化体験を楽しんでいる毎日を綴っているところが、とても素敵。
 マレーシアで暮らし始めたからといって、自分が子供の頃から馴染んできたマレーシア式を奥さんに押付けるわけでもなく、「どちらかに合わせるんじゃなく、ふたりのやり方を見付けて真ん中になるようにしようよ」と言って、一緒に考えてくれるダンナさんも素敵。結局、国際結婚にかぎらず、どれだけ柔軟な思考でいられるかだよなあ、こういうのって。
 ところで、マレー系、インド系、中華系が入り混じる多民族国家であるマレーシアですが、私の場合、この国に興味を持ったきっかけがきっかけだったので、どうしても中華系の人たちに肩入れした視点で考えてしまいがちで、そうすると多数派であるマレー系をさまざまな局面で優遇する「プミプトラ政策」なんて、どうしてそんなものが、まかりとおっているんだろう……と、初めて知ったときから疑問に感じてしまったりしていました。この本では、マレー系である著者のダンナさんの意見が紹介されていますが、なるほど、そういう理屈で支持されてきた政策だったのですか。やはりガイジンの目で見ると納得は行かないのだが、いろいろ奥が深いなあ、マレーシア。【Amazon.co.jp】


松本美香『ジャニヲタ 女のケモノ道』(双葉社,2007年4月)
 実は、去年くらいから、オトナと呼ばれる年齢になった女性が芸能人のファンをやるときのスタンス……みたいなことについて、ちょっと考え込んでしまっていて、そういうテーマの本が目につくと、ついついチェックしてしまう。
 松本さんという方は、寡聞にして存じ上げなかったのですが、1970年生まれ(同い年!)の松竹芸能に所属する芸人さんで、ジャニーズのコアなファンとしても有名なのだそうです。この本では、すでに独自の文化が形成されているらしい、ジャニーズファンの世界について、一般人にも分かるように解説してくださっています。
 芸人さんなだけあって、一見、思い込み激しいかんじだけど、読んでいくと「ほらほら、こんなにイタいのよ」と部外者の笑いを取るためのネタとして、計算ずくで書かれていることが分かる、自己ツッコミ満載の文章。
 でも、だからといって、それが「ウソ」ってわけでもなくて。傍から見ればイタいって分かっていても、自分でもイタいと思っていても、やっぱりこういうふうに心が動いちゃうんだよねえ……みたいな。そしてやっぱり、根底にあるのは愛なのよ。たとえ、客観的には、どっかズレていても、愛なのよ。ジャンルは違えど、そして私の場合は実際には「おっかけ」に該当するような行動を取ったことなくても、心情的には身につまされるようなところがあったよ。【Amazon.co.jp】


柴田錬三郎『三国志〜柴錬痛快文庫』(2002年3月,講談社文庫/親本1952年1月,偕成社 世界名作文庫)
 金城武くんが、ジョン・ウー監督の「三国志」映画に、諸葛孔明役で出演することになったというニュースが3月に出て以来、今までまるっきりスルーしてきた「三国志」に関する知識を、手っ取り早く仕入れなければ……という焦燥感に駆られているのでした。もう、ほんとに、まったく疎かったのです。諸葛孔明って言われても、とっさに「えー、それって、中華まんじゅうを初めて作ったとされてる人だっけ?」ということしか思い出せなかったくらい。
 柴田錬三郎のこの本は、カバーの紹介文に「最高に面白く胸躍る名場面を1冊で楽しめる“はじめての三国志”」なんて書いてあるだけあって、さくっと読めて、それなりになんとなく、「あー、そういうお話なんですね」ということは、分かったような気になれるので、とっかかりとしてはよかったかも。
 まあ、いかにも「あらすじ読んでます」っぽいかんじではありましたが。すごいダイジェストなんだろうなあ、ということが、本来のストーリーを知らなくても分かってしまう。本書では、「赤壁の戦い」の決着がついたあと、(この後も劉備は)「百戦百勝、ついに大蜀の国を建立することができたのであった。」 という記述が入って、いきなりおしまいになっていますが、いくらなんでも、本当の「三国志演義」は、こんなんじゃないよねえ? その「ついに大蜀の国を建立」するまでも、もっといろいろ細かいエピソードがあるんだよねえ?【Amazon.co.jp】


漫画は、今月は1冊だけ。


清水玲子『秘密―トップ・シークレット』第3巻(白泉社,2007年3月)
 先月、2巻まで読んであまりに怖かったので、まだ3巻を読めていないと書きましたが、ついに読んじゃったよー。そして、やっぱり怖かったよー。【Amazon.co.jp】

Posted at 2007年4月30日 00:07



All texts written by NARANO, Naomi. HOME