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2007年5月30日

諏訪緑『諸葛孔明 時の地平線』

読了本 | 書籍・雑誌

現在、第1巻〜第13巻(小学館,2000年8月〜2006年12月)
【Amazon.co.jp】←「赤壁」エピソードのある第6巻にリンク。

4月に引き続き、なんとか「三国志」の世界に馴染みたいという気持ちを抱いてはいたものの、なかなか思うように余裕を捻出できず、気持ちだけが空回りしていた5月でした。

金城武くんが出演するという「三国志」映画(ジョン・ウー監督の『赤壁』)が公開されるまでに、主要な登場人物たちの名前や一般的なイメージくらいは分かっておきたいよねえ。

で、とりあえずは、気軽に手に取れそうなあたりからということで、お友達に教えてもらった、諸葛孔明を主人公とした長編少女漫画を読んでみました。かなり作者独自の解釈が入っていそうな雰囲気はありますが、感情移入はしやすく、どんどん読めます。絵もきれいだしね。

この作品は、戦乱の世を舞台としつつも、根っからの“悪役”が存在しないところが、とても面白い。それぞれの理念や理想を追求しながら、さまざまな情勢に翻弄されながら、時代の流れの中で国の基盤を作っていこうとする人たちによる政治の世界を丁寧に描いています。そして、政局の動きがストーリーの中心にありながらも、あくまで少女漫画としてのスタンスを崩さないの。ここ重要。

特に主人公の孔明は、私生活では年齢に似合わず初心で可愛らしいところのある、見るからに「少女漫画のヒーロー!」という風情の、さわやかな美青年。怜悧な頭脳を持つ戦略家でありながらも下々の階級の人間を単なる駒と見なすことができない繊細さがあります。また自分が所属するコミュニティの拡大だけを目指すような近視眼的な姿勢ではなく、時代全体を見通してそれぞれの勢力が均衡を保った平和な世界を願うことのできる理性をも備えています。

えーと。私、三国志の世界に関してはまだまだ思いっきり初心者だけど、絶対、あの時代の中国で、こういう現代的な倫理に照らして違和感のない言動を取ってくれる軍師は、いなかったと思うなあ。どうなんだろ。でも、いいんです。少女漫画だから。

どうせ、そもそも私が三国志に関心を寄せるきっかけとなった例の映画が実際に完成して日本公開されたあかつきにも、スクリーンを前にした私は金城くん演じる諸葛孔明さん至上主義にどっぷり浸かっているに違いないので、孔明さんはいくら素敵に無敵なさわやかキャラとして描いてくださってもオッケーですよ(笑)。

頭はいいけど不美人であったと伝えられているらしい孔明の奥さん(この漫画の中では最新の13巻でもまだ結婚に至っていませんが)についても、「その当時の基準ではたしかに美人じゃないけれど、主人公が伴侶として選んでまったく不思議のないユニークで愛らしいキャラ」として読者が納得できるように、少女漫画ならではの表現力が駆使されており、ヒーローの相手役として申し分ありません。

――なーんてことは、さておき。これは、「三国志の基礎知識を、読みやすい漫画で仕入れたい」などという意識で読むと、肩透かしを食らう作品かもしれません。ていうかむしろ、そんな浅はかな意識で読むのは、もったいない。

少女漫画というジャンルのなかで、その枠組みを敢えて破ることのないまま、しかもあの「三国志」の世界を題材にして、この作品の対象読者である現代に生きる女の子たちにとっても本当は決して他人事ではないはずの、理念と政治のバランス、個人の生活と国の関わり、時代の大きな流れのなかでどう生きるか……みたいなことに思いを馳せずにはいられないようなストーリーが作れるんだなあ、というのが、すごく興味深かった。

金城くん出演映画のメインストーリーとなる「赤壁の戦い」エピソードは、ここでは第6巻で決着がつくのですが、結局その後の巻までずっと読みつづけてしまったし、これからも追いかけていきたい作品です。

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2007年5月31日

2007年5月に読んだものメモ

読了本 | 書籍・雑誌

いやはや、読みたい本の冊数と実際に読める本の冊数の落差が激しすぎ。5月は特に、余裕がなくもどかしい局面が多かったです。うっすいエッセイ本を1冊読みきるのに、2週間とか、あ り え な い。でもそれが現実。もう「趣味は読書」だなんて、ちゃんちゃらおかしくって、ひとさまには言えません。

いまさらだけど、独立した読書感想文コーナーをサイト上から撤去した判断は正しかったなあ(っていつの話だよ、それ)。


えのきどいちろう・酒井順子・しりあがり寿『人づきあいの小迷惑相談室 (1)』(オレンジページ,2006年7月)
 雑誌『オレンジページ』の連載をまとめたもの。すごく深刻な生死に関わる問題ってわけではないんだけど、当人にしてみればモヤモヤして悩んじゃうような日常のお悩みって、本当にバラエティがあるものなのだなあ。ものによっては、傍から見ればちょっと可笑し味もただよっていたり。そのあたりも、漫画でフォローされているのだけれど。お悩みを乗り切っていくコツは、楽観的視点と、苛立たしい相手をスルーできるクールさ? お悩みに対する回答は、ユーモラスな文章でありつつも、ときおり意外と冷徹だったりするんだよね。【Amazon.co.jp】


中野香織『着るものがない!』(新潮社,2006年10月)
 日本経済新聞の連載「モードの方程式」の2003年の記事を中心にまとめてあるそうです。ファッションにまつわる雑学コラム、といったかんじのもの。軽く楽しく読めてしまうけど、著者の守備範囲が広いというか。何気なく見ているアイテムに、そんな背景が……という面白さを、短い文章の中で的確に伝えてくれる。巻末にきっちりと参考文献リストが載っているのも好感度高し。
 ところで、あとがきに、この本の装丁を決める際の会議で、女性によって満場一致で選ばれた素敵なカバーデザインが、男性陣から「ファッショナブルすぎて手に取れない」と却下された、という裏話が書いてあったんですが、その女性ウケの絶大だったほうのデザイン、見てみたいなあ。【Amazon.co.jp】


穂村弘『もしもし、運命の人ですか。』(メディアファクトリー,2007年3月)
 主に雑誌『ダ・ヴィンチ』に連載されていたエッセイ(2005年〜2007年)をまとめたもの。全体のテーマは、恋愛論? これまでに読んだこの人のエッセイは、大体が自意識に振り回されて世界の中でぽつんと浮き上がってしまう心象風景描写みたいなのが、どこか痛々しくもリアルで親近感……みたいなかんじでした。そういう人が、恋愛に周波数を合わせて、書籍1冊分の言葉を連ねていくと、こういう本になるんですね、と。
 男の人が、こんなふうにちまちまと(失礼)リアルに恋愛にまつわる心の動きを綴っているのって、あまり読んだことなかったので新鮮ですが、あまり読んだことなかっただけに、この妙に哀愁のただようあれこれが、この人の特殊事情なのか、そうでないのかも、いまひとつ分からず。【Amazon.co.jp】


5月に読んだ漫画は、1つ前の記事に書いた諏訪緑『諸葛孔明 時の地平線』(小学館) 1〜13巻のみ。

6月こそはいよいよ、一般的な日本人の意識下における三国志イメージの基本であるらしい、吉川英治の小説による『三国志』に手を出してみようと決意を固めつつありますが、大丈夫かな?

Posted at 17:27 | 個別リンク用URL | コメント (0) | トラックバック (0)

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