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2007年6月27日

Shanna Swendson "Damsel Under Stress"

読了本 | 書籍・雑誌

Damsel Under Stress

Ballantine Books, 2007年5月刊【Amazon.co.jp】


とっても普通な女の子が、テキサスの田舎町から大都会ニューヨークに出てきて、なんだかここって、おかしなところだわ……と思っていたら、実は自分自身が、この世にこっそりと存在していた“魔法の力”を完膚なきまでに受け付けない体質だったために、マジョリティな人たちにはちゃんと効いてる目くらましの魔法さえ素通りしちゃってて、見えないはずのものがばっちり本来の姿で見えちゃってただけ! 普通(というか、非魔法的)にもほどがあるよ! 普通すぎて特異だなんて! しかもその特異体質を買われて、魔法を取り扱う会社にヘッドハンティングされちゃうなんて!

……というシャンナ・スウェンドソンの <(株)魔法製作所> シリーズ(創元推理文庫)、現時点では未邦訳の第3弾(ええもう、翻訳が待てないくらいハマってますよ)。ロマンス小説風味のキュートなファンタジー。

去年の10月に読んだ『ニューヨークの魔法使い』および、続編 "Once Upon Stilettos"(邦訳タイトルは『赤い靴の誘惑』かな?)の、さらに続編です。

うふふふふ。やっぱり面白い。私、これ3冊中でいちばん好きかも! パワーアップしてるよ! 好きなシリーズの、最新作を読了した直後に、そういうふうに思えるのって、すごく幸せなことだよね?

正直、2巻の終わりを読んだ時点で、3巻目ではもう恋愛関連の胸キュン(死語)度は減ってしまうんじゃないかと思っていたのがとんでもなくて、なんだか個人的には今回がいちばんドキドキでした。

ヒロインのケイティが、魔法闘争の真っ只中にいながらにして、いじらしいほどに“普通の”感覚を持った、小市民的な共感を呼ぶOLさんであり、正義感や責任感や発想力はしっかりありつつも、「私が私が!」ってがんがん前線に出張っていく戦闘的なタイプじゃなくて、好きな人にはめろめろでもちゃんと自立心があって、恋愛沙汰でやきもきしても同時に職業人・社会人としてのプライドをきっちり保っている堅実で芯の強い地に足のついた女の子だというのが、本当に好き。

あと、ヒーロー(とっても力のある魔法使いなんだけど、めちゃくちゃシャイ)のほうは、ワタシ的には、先の2冊ではいくら控えめなところが魅力って言ったって限度があるだろ、何を考えているのやら、おもてに出さなさすぎですよ……ってもどかしく思うことも多かったんです。しかしさすがに3巻目ともなると、もともとの奥ゆかしさは保ちつつも、ストーリーの語り手であるヒロインに向かって心が開けてきているので感情の動きがある程度は分かるようになってきて、新たな魅力を発揮ってかんじです。でもまだまだ、バックグラウンドに謎の多い人ですね。今回はちょこっとだけ、彼の具体的な生い立ちも垣間見えたりするんですが、かえって謎が増えた。

本筋部分である、ワルモノ側との攻防戦も、いろいろ新たな要素が出てきて、いまだ敵の全貌は見えませんが、かなりハラハラもの。その攻防戦部分と、恋愛部分との、絡まり具合が、めちゃくちゃ上手いの。とにかく、筋に無駄がない。読者をクスッと笑わせるためのちょっとしたネタかと思ったら、しっかりあとあとの展開への手掛かりだったりとか。油断がなりません。

さらには、1巻と2巻でさらっと触れられていたことが、この巻になって活きてきてて「あれれれ、そういえば、前の本ではどういうふうに言及されてたんだっけ?」と、前の巻までさかのぼって確認したくなりました(実際、再読してしまいました)。

そして、この第3巻、「あらららら?」という終わり方になっています。は、早く次の巻を! 次の巻はいつ!?

……というわけで、著者の公式サイトを覗いてみました。続編 "Don't Hex With Texas" は、今のところ来年の1月に刊行予定だそうです。もう書きあがっているそうです。わーい。楽しみ楽しみ!

ところが、さらに読んでいくと、悪いニュースも。なんと、著者blogのFAQによればこのシリーズ、売れ行きが出版社の期待値を下回ったため、この4作目で打ち切りなのだそうです。それで、作者さんが当初予定していらっしゃったような形でのエンディングにはならなかったそうなのです。

えええええ、本国での売れ行き、悪いの!? こんなに面白いのに!? こーゆーのを好きな人の絶対数が少ないのかなあ? もともとのロマンス小説人口と、ファンタジー人口が、かぶらないせい?

実際、SF・ファンタジー好きのファンからの反応がなかなかよいらしいこのシリーズ、アメリカ本国では出版社の方針で若い女性向けの "Chick Lit" カテゴリーに入れられて「ブリジット・ジョーンズ魔法版」みたいなキャッチフレーズで売り出されたため、書店ではロマンス棚に置かれていることが多いみたいなのです。そのせいで届くべき読者の目に留まる確率が減っちゃってるなら、もったいないなあ。

ここまでの巻を読んだかぎりでは、最初から綿密に伏線を張り巡らせているはずなので、最初の構想どおりのものを読めないのは本当に悔しい。なんとか、アメリカでの売り上げが延びて風向きが変わり、著者の意向どおりの巻数で出てくれないものか。とても動揺しています。

Posted at 2007年6月27日 22:13



All texts written by NARANO, Naomi. HOME