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2007年7月27日

中野翠『斎藤佑樹くんと日本人』

読了本 | 書籍・雑誌

文春新書(2007年4月)【Amazon.co.jp】

中野翠は、去年の夏の雑誌連載コラムで、まだ世間がそれほど斎藤くん斎藤くん言ってなかった頃に、すでにこの子に着目していたんじゃなかったかしら。

本書によると、甲子園出場より前、西東京大会の試合中継を見たのがきっかけらしい。その後しばらくして、全国大会で斎藤くんが所属する早稲田実業が優勝し、彼にはハンカチ王子なんていうニックネームがついて、社会現象化したわけですが。

まあそれで、「ブーム前から目をつけていたとは、さすがに中野さんって、こういうキャラに対するアンテナが鋭いなあ」と、ちょっと感心していたのですが、まさか本1冊書けちゃうくらい入れ込んでいるとは思わなかったよ。書店で見てびっくりだったよ。

私は普段テレビを見ないので、斎藤くんのお顔もよく分かってなかったのですが、中野翠さんはいったいこの題材で何を書くんだろうという興味があって、逡巡したあげく図書館で借りて(すみません)読んでしまいました。

で、結局、読み終えたあとも正直、世間の斎藤くんファンの心情にシンクロすることはできないままなのですが、中野翠がときめいていることはよく分かった。なんだか、いろいろとデータを持ってきて社会の趨勢とかと絡めてあれこれ冷静っぽく分析しているわりには、文章の端々に“乙女”がにじみ出ている気がするのですよ。私も、好きな芸能人について語るときとかは、冷静ぶって(るつもりで)作品評を書いていても傍目からはこういうかんじなのかもしれません。わはは。斎藤くんは芸能人じゃないけどね。

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平安寿子『あなたがパラダイス』

読了本 | 書籍・雑誌

あなたがパラダイス

朝日新聞社(2007年2月)【Amazon.co.jp】

更年期を迎えて心や体の異変を経験し始めたばかりの3人の女性を主人公とした連作短編集。私はまだ更年期は経験していないのですが、あまり世間に具体的なことが知られていないわりに、実は大変なものなのですね。多少は心構えができたという面でも、ありがたい本でした。

主人公たちには、直接の目に見える接点はありません。ただ、3人ともが、50代後半になってもいまだ現役で活動を続ける沢田研二(ジュリー)の歌にパワーをもらっているというのが共通点。40年来のファンから、少女時代には好きだったけどずっと忘れていて数十年ぶりにあの頃の気持ちを思い出した人、更年期を迎えてから初めてジュリーを意識した人まで、ハマリ度はそれぞれ違うんだけど。

私は、習慣的に日本のテレビ番組を見ていたのが、1981年から1986年くらいまでの期間だけなので(その前は親の意向に従順だったのであんまり見てなかったし、その後はシュミの時間を優先させるために自主的に見なくなった)、メディア露出よりもライブ活動を優先させている現在の沢田さんのみならず、本書の中で説明される若い頃の沢田さんもよく知らないのですよ。でも、登場人物たちの視点から綴られる熱い“ジュリー語り”を読んで、とても楽しく幸せな気持ちになりました。そうそう、そういう日常から逸脱したときめきがあるのって、いいもんだよねっ!(笑)

彼女たちは、それぞれ現実ではシビアな状況(介護問題など)に置かれていたりするんだけど、これがあるから、読後感は明るく前向き。

ところで、沢田研二さんって、JASRACには加盟してないの? 歌詞引用されまくりなんだけど、巻末にはカバー曲 "SOMEONE TO WATCH OVER ME" の分の記載しかなかったのが、ちょっと不思議だった。自主レーベルなんですね。

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2007年7月29日

ハリー・ポッター完結

書籍・雑誌

Harry Potter and the Deathly Hallows

今、月末に向けていつもの読了本リストをチェック中なのですが、そういえば先週末に、21日発売だったシリーズ7冊目にして最終巻の "Harry Potter and the Deathly Hallows" (Bloomsbury, 2007年7月)【Amazon.co.jp】を読んだのでした。

第1巻からの伏線の回収(「ここに来て、このネタが再浮上か!」などなどと、何度、身もだえしたことか)、最後に向かっての盛り上がり、そして収束を堪能させていただきました。

なんだかんだ言っても、すごいよなあ。最初から最後までたたみかけるような(容赦のない)展開で、ついつい、「次はどうなるの?」とページをめくってしまう。

で、以下は特にこの巻についての感想ってわけでもないんだけど。

このシリーズ、大好きだったけど、好きだったのは、複雑な謎が解けていく面白さとか、自分たちが生活している現実社会で起こっている問題のアナロジーとして考えられてしまうような皮肉なストーリー展開とか、追い詰められた主人公の感情がリアルに迫ってくるところとか、脇役たちにも脇役たちの、立場があることがちゃんと描かれているところとかで。

あと、一貫してハリー視点で物語が進むわけだけど、ハリーの成長にともなって、徐々に周囲への洞察が深くなっていくところとかもね。

最初の頃のハリー視点で描かれたことが、あとになって別の局面を見せたとしても、その局面もちゃんとさりげなく、実は最初から作者の手によって描かれていて、ただ当時の幼いハリーの目には、表面的なことしか見えてなかっただけ、みたいなところ。なにかちょっと、あとにならないと大切なことに気付かない自分の未熟さへのもどかしさ、みたいなのが身につまされるというかね(笑)。そして同時に、すぐそばでハリーの成長を見守っているようなかんじもあったりね。

要するに、「ハリー・ポッター」シリーズの面白さって、普段の私が「ファンタジー小説」に求めているような面白さとは、ちょっと違うんだよなあ。「ファンタジー」として読むには……なんていうんだろう、“深層意識をえぐるようなもの”がない。

よくも悪くも、あまりにも、ある意味、現実に近すぎるというか。別世界ファンタジーじゃないから、という意味でなく。

ここで描かれる喜びや痛みが、現実世界で遭遇しがちな喜びや痛みに、酷似しすぎているというか。だからこそ、強く惹かれていることもたしかなのだけれど。

でも私の勝手な「ファンタジー定義」に含めるには、現実世界に対するアナロジー臭が強すぎる、というか。「マジック」が、物語を彩り、進めるためのガジェットにしか感じられないというか。

ただ、たとえガジェットであったとしても、ものすごくよくできたガジェットでは、あるのだ。ちゃんと筋の通った法則が確立されていて、それによる制約を受けている。


まあでもとにかく。主人公をはじめとした登場人物たちに、本当の知り合いのような親近感を抱きながら、最初は11歳だったハリーと共に、ついにここまで来ました。

終わっちゃったんだなー(しみじみ)。

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伊坂幸太郎『死神の精度』

読了本 | 書籍・雑誌

死神の精度

文藝春秋(2005年6月)【Amazon.co.jp】

金城武くんが、小西真奈美さんと一緒にこれの映画版に出演するというので、読んでみました。伊坂幸太郎を手に取ったのは初めてです。ネット上で書評を見ていると、けっこう評判いいので、ちょっと気になってはいたのですが、この映画化のニュースがなければ、まだまだ手に取るところまでは行ってなかったと思います。ありがとう金城くん!

死亡者の候補に挙げられた人間に接触して1週間、人となりを観察し、死亡「可」または「見送り」の判断を下すのが仕事の《死神》を語り手とした、連作短編集。

死神さんは毎回、ターゲットに近づきやすい人間の姿を与えられて派遣されるのだけれど、人間界の常識が微妙に分かっていないので、ときどき言動がズレてしまうのが、なんとなくすっとぼけた味わいでおかしい。

淡々とクールに、共感もなく人の死の判定をくだすはずの、人間とは別種の存在なのに、どこか普通の人間キャラよりも体温が感じられるようにさえ思える、不思議な存在感。映画でメインに使われるのは、(小西さんが「OL」の役ということなので)最初のお話なのかな? これのみ、死神さんはカッコいい外見になっているという設定だし(笑)。あああ、これ金城くんがやってくれるなら、激しく激しく観たいぞ! 楽しみだ!

最終話「死神対老婆」では、それまでのエピソードの積み重ねが効いていて、ハッと思うくだりがいくつか。

ところで、すでに感想文を書いた『あなたがパラダイス』(平安寿子)の第1話では、主人公の図書館員が、映画『ベルリン・ドイツの詩』において地上に降りた天使が図書館を休息所としているシーンを思い起こしているのだけれど。

これのすぐあとから読み始めた本書『死神の精度』の第1話では、CDショップを仕事の合間の休憩場所としている死神が、作品タイトルこそ出ないものの、映画で天使たちを見て「なるほど、彼らは図書館なのか」と思った――というくだりが。そういう、意味のない偶然は、ちょっと楽しい。

Posted at 17:49 | 個別リンク用URL | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年7月31日

2007年7月に読んだものメモ

読了本 | 書籍・雑誌

これを書いてる今は、どっちかというとまだ30日の深夜なんですが、現在読んでる本は、もう絶対に31日中には終わらないこと確定なので、その気になってる今のうちにさっさと更新だ。

今月は、前々から予定して1週間ほど休暇を取るつもりで根回ししておいたのですが、タイミングをはかったようにその時期にぶつけて体調を崩したりして、結局いまいち遊べませんでした。とりあえず、普段よりは本が読めたので、よしとしよう。

映画も観ているのですが、感想はまたそのうち(たぶん)。


桜庭一樹『赤朽葉家の伝説』(東京創元社,2006年12月)
 たまたまこのタイミングで手に取っただけだったんですが、今月は第137回直木賞の候補になったりして、去年の本だけど、ちょっとまた話題が盛り返していましたね。
 製鉄会社を経営する鳥取の旧家を舞台とした、女三代記。語り手である「わたし(瞳子)」の祖母で、千里眼奥様と呼ばれた「万葉」がメインの第1部は1953年〜1975年、瞳子の母で波乱万丈の人生を送った「毛毬」についての第2部は1979年〜1998年、そしてようやく語り手の瞳子が主人公として浮上する第3部は、2000年からの物語。
 1部も2部も、最後の3部よりずっと不可思議だったり派手だったりするんだけど、でも結局は3部のための前置きのような。【Amazon.co.jp】


島村麻里『地球の笑い方』(講談社文庫,2001年10月/親本 ダイヤモンド社,1997年4月)
 今年3月、突発的に訪れた個人的な島村麻里ブームのとき、ほかの本と一緒に購入したものの、あまりにもブームが一過性だったために読みそびれていた海外旅行エッセイ。ガイドブックには載りそうもないようなネタの数々。同じ著者の『アジアン・リゾートに快楽中毒』(講談社)とちょっと印象かぶるかな。ただ、これが『地球の歩き方』と同じ出版社から出ていたというのは、かなり重要(笑)。【Amazon.co.jp】


島村麻里『地球の笑い方ふたたび』(講談社文庫,2004年3月/親本 ダイヤモンド社,1999年3月)
 タイトルどおり、上述の本の続編。最後の対談では、『地球の笑い方』ではぼやかした表現しかされていなかった、某国へのツアーについて、改めてかなり詳しく語っておられます。【Amazon.co.jp】


島村麻里『海外旅行のハローワーク』(光文社知恵の森文庫,2005年11月)
 『地球の歩き方WEB通信』で2002年9月から2004年3月まで連載された「海外旅行を支えるお仕事」を再編集したもの。パイロットや客室乗務員など、飛行機にかかわる人たちから、機内食のシェフ、免税店スタッフ、空港内の本屋さん、ツアー企画の担当者、検疫や税関の人たちなどなど、取材対象は多岐に渡ります。それぞれ、どんな仕事にも、大変なことや、けれどもやりがいを感じる面、他業種の人間には言われなきゃ想像できない面白さなんかがあるんだよなあ、ということがよく分かります。
 ただ、個人的なことを言うと、ちょうどものすごい「仕事やりたくない」モードに入ってる時期に読んじゃったので、「ああ、みんなみんなみんな、こんな大変なお仕事をこなして、あまつさえ喜びを感じることができるなんて素晴らしすぎる。ワタシ以外の人たちは、なんて皆さんスゴイんだろう。ああ、お金を稼ぐって、どんな職種でも、気が遠くなるほど恐ろしいことだなあ。なんでワタシはこんなにダメダメな人間なんだろう」みたいな感情がどんどんどんどん湧いてきて、壮絶に落ち込んだ(苦笑)。もっと感情コントロールを学ばないといかんですね>私。せめて、こういう本はもうちょい調子のいいときに読めばよかった。【Amazon.co.jp】


J. K. Rowling "Harry Potter and the Deathly Hallows"(Bloomsbury, 2007年7月)
 最初から最後まで容赦のない息もつかせぬ展開で、最終巻にふさわしい盛り上がりと収束でした。シリーズ完結に寄せてのコメントはこちら【Amazon.co.jp】


中野翠『この世には二種類の人間がいる』(文藝春秋,2007年3月)
 初出は『本の話』2003年6月号〜2007年3月号。本当は、ぱっきりと2つに分けられるはずないんだということを念頭に置いたうえで(だって、表紙のタイトル横に添えられたイラストの書き文字からしていきなり「それはキメツケに怒る人と喜ぶ人だ」だもんね。そして中野さんは、怒る人らしいよ!)、敢えていろんな角度から、ご自分も含めた世の中の人々を2つのパターンに分けまくっています。楽しい。そして、この本のなかにも、やっぱり斎藤佑樹くんネタが(ほぼ同じ時期に『斎藤佑樹くんと日本人』が出版されている)。中野さん、本当に斎藤くんについて語りたかったのねえ。【Amazon.co.jp】


中島義道『哲学者というならず者がいる』(新潮社,2007年2月)
 初出は『新潮45』2004年10月号〜2006年12月号。これを通読すると、中島先生にとって不快なものが、少しでもこの世から減りますように……と祈らずにはいられませんが、とっても余計なお世話だよな。あと、ご自分の文庫本の解説を書いた人たちのうち、中野翠さんには会ってみたいとおっしゃっている箇所があったのが、なんだか意外なようなそうでもないような。けっこう話がはずみそうなイメージもあったり。【Amazon.co.jp】


中野翠『斎藤佑樹くんと日本人』(文春新書,2007年4月)
 去年の高校野球で所属校が優勝して以来、さわやか好青年として中高年女性のあいだで人気が沸騰していた(らしいですね?)斎藤佑樹投手くんをテーマに書き下ろした本。別途、感想文を書きました。【Amazon.co.jp】


平安寿子『あなたがパラダイス』(朝日新聞社,2007年2月)
 別途、更年期の女性3人を主役とした連作短編集。感想文を書きました。【Amazon.co.jp】


伊坂幸太郎『死神の精度』(文藝春秋,2005年6月)
 淡々とユーモラスでどっか真摯な死神さんが語り手の連作短編集。別途、感想文を書きました。【Amazon.co.jp】

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All texts written by NARANO, Naomi.