« 細川貂々『ツレがうつになりまして。』 | 最近 | 華恵『本を読むわたし My Book Report』 »

2007年8月19日

細い目(日本語字幕版)

映画・テレビ

2004年、マレーシア映画
原題:Sepet
監督:ヤスミン・アハマド
出演:シャリファ・アマニ、ウン・チューソン他

7月31日から8月4日までの期間、アテネ・フランセ文化センターにおいて国際交流基との共同主催で、「ヤスミン・アハマドとマレーシア映画新潮」という企画があって、本作を含むマレーシア映画がたくさん紹介されていたのです。

去年、私がここに書いた英語字幕版VCDの感想をご覧になった方が、日本語字幕付きで上映されますよ、とメールで教えてくださったのでした。ありがとうございます。世間一般のサイト持ちな人は、ほかの人たちにとって有用な情報を発信するためにサイトを管理したりブログを書いたりしているのであろうに、私の場合は、サイトのおかげで見知らぬ方々から自分にとって有用な情報をいただくことのほうが多いような気がしている今日この頃です。今後ともよろしくお願いいたします(え?)。

この「細い目」のほか、同じ監督の「グブラ (Gubra)」と「ムクシン (Mukhusin)」も観てきたので、遅まきながら、これから感想を書いていくつもりです。

で、まずは私がVCDを観てとても気に入っていた「細い目」。マレー人でありながら金城武の大ファンだった16歳の女の子オーキッドが、金城映画のVCDを探して訪れたお店で、華人の男の子ジェイソン(アーロン)と出会って惹かれあう、ほのぼのラブストーリーです(途中までは)。

英語字幕で無視されていたところまで、ちゃんと字幕がついていてありがたかった。特に映画ネタとか。

たとえば、オーキッドがジェイソンのお店に映画ディスクを買いに行った出会いの場面。在庫があった金城作品は「天使の涙」と「恋する惑星」(ここまでは英語タイトルだったのでVCDでも理解できてた)、そしてなんと「報告班長3」(セリフでは中国語タイトルで発音されてたので分からなかった)。しかも、こともあろうにオーキッドは「報告班長3」を選んで買っていくのですよ!

そりゃー私でも、追いかけていって「とにかく『恋する惑星』も見とけや!」って言いたくなるわ! 作品のセレクションが絶妙すぎる(苦笑)。「報告班長3」は、金城くん出演作の中では(「トラブル・メーカー」と並んで)ダントツにぐだぐだな駄目映画だと思います(お好きな方いらっしゃったら、ごめん)。

……って、この場合、ジェイソンの動機としては、やっぱり「一目惚れしちゃったオーキッドともう一度お話したい」のほうが大きかったんでしょうけどね。

ついでにここで訂正しておくと、恋愛ボケしたジェイソンのことを「ラヴソング」のレオン・ライみたい……と揶揄するのは、キョン(と、最初の感想文では書いてた)ではなくて、ジェイソンのもう一人の友達でしたのね。

で、オーキッドが入れ込んでいてキョンと話が盛り上がってしまうジョン・ウー映画は「男たちの晩歌」か(これも英語字幕版で観たときには邦題と結び付いてなかった)。

ものっすごいお育ちのよさそうなマレー人の若いお嬢さんが、実はロマンティックな恋愛映画が苦手で男臭い香港ヤクザ映画に夢中、「ハリウッド進出後のジョン・ウーはぜんぜん駄目、『フェイス・オフ』のトラボルタよりも断然チョウ・ユンファ!」と、彼氏もそっちのけで熱く語りまくる……のは、やっぱり“笑いどころ”なんだろうなあ。楽しい。

VCDで観たときも大好きだった写真館のふたり、雨のバス亭のシーン……大きな画面で見られて幸せだー。なにがどうってわけでもない、淡々としたシーンなんですけれど、なんだかほわーんとするんだよねえ。

リベラルな両親のもとですくすくと育ったおかげか、お嬢さまなのに竹を割ったような性質で勝気で勇ましい聡明なオーキッドと、チンピラなのにセンチメンタルで繊細なロマンティストで、ちょっぴりお調子者だけどお母さんの前では素直な心優しいジェイソン、本当にお似合いの、いいコンビで。

だからこそ、その後の展開は、見ていてとても口惜しくつらいのだけれど。ジェイソンの過去の愚かさを、オーキッドがラスト直前までずっと許せずにいたのは、彼女の魅力の元である、その真っ直ぐな性格ゆえなのだし、ジレンマだなあ。

ただ、何かひとつでも、ずれた歯車がタイミングよく噛み合っていれば、ちゃんとあり得たに違いない夢のような未来は、映画を観た者の心の中に広がっていて。だから、この世界に絶望をしてはいけないよ、と語りかけられているような。そして、だからこそ監督は、最後の最後で、あの本当ならあり得ない“奇跡”を提示したのではないかな。

Posted at 2007年8月19日 09:32

コメント

はじめまして。
Sepetで検索していたらこちらのサイトに辿り着きました。
最近、アテネフランセで上映会があったのですね。遅かった・・・(TT)

私は「グブラ (Gubra)」と「ムクシン (Mukhusin)」は国際映画祭で見たのですが「セペット(sepet)」は見損ねてVCDを購入したもののまだ見ていません。ぜひとも日本語字幕で見たかったです。

一連の映画でアハマド監督が表現したかったことの一つは「許すこと」だと映画祭で仰っていました。それが今も心に残っています。

投稿者 snow : 2007年8月22日 00:42



snowさん、はじめまして。
アテネフランセは、ちょっと盲点ですよね。私も、親切な方がメールで教えてくださるまでまったく気付いてなくて、あわてて予定を空けました。

同じ監督のデビュー作「Rabun」も観たかったのですが、これだけはどうしても都合がつかなかったです。

「Gubra」も「Mukhusin」も、それぞれいろいろと考えさせられて、でも映画としてもちゃんと面白くて、深く印象に残る作品でした。

このシリーズ、せっかく日本語字幕訳がすでに存在するのだし、日本でも(単館でもいいから)もう少し目につきやすいところで普通に上映されたり、DVDが出てくれたりするといいのに。もったいないなあ、と思います。

国際映画祭のときのティーチインをお聞きになったのですか。去年、ネットでそのときの記事をちょっと見ましたが、素敵な方みたいですね、アハマド監督。

> 表現したかったことの一つは「許すこと」

というのは、言われてみれば、分かるような気がしてきました。

投稿者 ならの : 2007年8月22日 01:35





All texts written by NARANO, Naomi. HOME