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2007年9月30日

2007年9月に読んだものメモ

読了本 | 書籍・雑誌

えーと、もう少し突っ込んだ感想文を書けそうな本もあるのですが、いまネット外の生活がちょっとばかし混乱気味なので、10月中に書きます(なるべく)。



Cassandra Clare "City of Bones (The Mortal Instruments: Book I)" (Walker Books, ペーパーバック2007年7月/ハードカバー2007年4月)
 期待の大型新人(多分)による、ヤングアダルト向けのダークなファンタジー3部作の最初の巻。大都市の「夜」の世界において、人間たちの目には見えないところで、デーモンと、それを狩る特殊な能力を持つ人間“シャドウハンター”たち、中立している人外のものたち(ヴァンパイア、人狼など)が、戦いや駆け引きを繰り広げています。
 ヒロインである15歳の少女クラリーと、彼女を取り巻く少年少女たちのキャラが立っていて、読みやすい。特に謎めいた少年ジェイスの皮肉のきいたセリフ回しなど、かなり好みです。【Amazon.co.jp】


武田雅哉『〈鬼子(グイヅ)〉たちの肖像 中国人が描いた日本人』(中公新書,2005年9月)
 中国のメディアに登場する日本人の姿を考察。最初のほうには、ちょこっと最近の映画の話なども出てきますが、なんといってもたくさんのページを割かれて圧巻なのは、清朝末期に発行されていた『点石斎画報』という通俗的な絵入りのプロパガンダ新聞の記事紹介。ちょっと勘違い入ってるかもしれないけど敵意のない記事から、日清戦争開始後はだんだんと日本を「倭」という蔑称で呼び、悪しざまに表現するパターン化された記事に移り変わっていきます。
 ステレオタイプって、こうやって定着するんだなあ、今に至るまで。そこそこ最近の香港映画や台湾映画を観ていても、ときおり日本人(特に戦時中の)が思いっきりベタというか「記号的な」完全悪として登場して居心地の悪い思いをすることがあるのですが。本書でも言われているとおり、この描かれ方はウルトラセブンに対峙する悪い宇宙人みたいなもんなんだよね。
 紹介されている図像は、それはそれでなかなか荒唐無稽な中にも味があって面白い。だいたい、一般報道で〈自分たちと違うもの〉が取り上げられる際の偏り具合なんて、けっこう、お互いさまだったりするんだろうな、と想像してみるきっかけにもなったり。【Amazon.co.jp】


清水義範・西原理恵子『独断流「読書」必勝法』(講談社,2007年4月)
 初出は『小説現代』2005年1月号〜2006年12月号。清水範義さんと西原理恵子さんのお勉強シリーズで、今度は定番名作文学かー。夏目漱石にドストエフスキーに三島由紀夫にジェイムス・ジョイスに……。清水さんが、今の時代に生きる者の感覚だと受け付けないような部分もこう読むと面白いよ、という言ってみればとても「優等生」的な読み解き方をしてくれてる部分だけでももちろん興味深く読めるのだけれど、やはり西原さんの鋭いツッコミや豪快な引っかき回しとの組み合わせの妙が、この本の存在意義ですねえ。【Amazon.co.jp】


太田直子『字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ』(光文社新書,2007年2月)
 映画字幕翻訳者である著者が、字幕製作にまつわるエピソードや、いまどきの日本語事情を語る。いやはや、字幕翻訳というのも、大変なお仕事だなあ。
 ただ、改訂希望運動が盛り上がった The Lord of the Rings の映画字幕に関する記述(太田さんは、原作ファンの望むようにしたら字幕として成立しない、というスタンスでいらっしゃった)については、なんだか読んでて、目頭が熱くなってしまったよ。だって、劇場公開時のあの字幕は、ストーリーそのものの解釈に誤解を生じてたんだってば! 当時、プロの字幕翻訳者でなおかつ原作ファンという方も、改訳を希望して匿名でネット上に字幕翻訳の条件に合致した試訳を出しておられたはず。【Amazon.co.jp】


酒井順子『駆け込み、セーフ?』(講談社,2007年2月)
 初出『週刊現代』2005年4月30日号〜2006年7月29日号。同じ連載をまとめた第1弾『その人、独身?』のつづき。掲載誌が男性向けだから余計に目立つのかもしれないけど、それなりの年齢まで独身でフリーで仕事してて……のわりには、実はこの人けっこう感覚が古風というか、おじさまに可愛がられそうというか。女の本音を語りますと言いつつ、難なく想定される範囲内に収めてみせる。でもその辺の、一見辛辣ながらも既存の体制に本当の本当には楯突かず、たまにピリリと皮肉をきかせて言いたいことを言いつつも、適度に引いてみせる部分が、処世術というものなのかもしれず。【Amazon.co.jp】


若山慧子『忙しい人こそ料理は上手い』(小学館,2006年12月)
 昭和43年(うわ、私まだ生まれてないよ)に新卒でNHKに就職して料理番組担当のディレクターとして定年まで勤め上げたのち、まだ番組を作ったりしているという著者・若山さんが、働くお母さんへの風当たりも今よりずっと強かったであろう時代に、どのように子供2人を育てつつ出張もありの不規則な仕事で活躍し続け、どのように効率的な調理手順を工夫して省略可能なところを省略しつつ食事作りを乗り切ったか、というのが全体的なテーマではあります。
 しかし仕事にまつわるいろんな思い出話みたいな部分が、とても面白い。長寿番組「今日の料理」のテーマ音楽(富田勲)誕生秘話とか。平野レミさんを起用したら「NHKらしくない」とクレームの電話がばんばん来たとか(きゃははは)。〔10/19付でロングバージョンの感想文も書きました。〕【Amazon.co.jp】


ハ・ジン(金哈)『待ち暮らし』(訳:土屋京子/早川書房,2000年12月/原書 Ha Jin "Waiting" 1999)
 ピーター・チャン監督による映画化が決定して主役は金城武、ヒロインはチャン・ツィイーだというので読んでみた。うーん、チャン・ツィイーが演じるヒロインは、かなり鮮明に脳裏に浮かぶのですが、この主人公、金城くんのイメージでは、個人的にはなかなか想像しづらく。できあがった映画を待つしかないですね。〔10/6追記:ロングバージョンの感想文も書きました。〕【Amazon.co.jp】


城平京『小説 スパイラル〜推理の絆〜 ソードマスターの犯罪』(エニックス,2001年4月)
 本編(原作者同じ、水野英多の絵による漫画)を最後まで読んでしまったので、ついでに小説の体裁をとった番外編も。ネットで連載されていたらしい、さらに本編より遠い番外シリーズ「名探偵 鳴海清隆〜小日向くるみの挑戦」からも2編が収録されています。
 なんだか、活字で書かれた漫画、というかんじでした。先に漫画を読んでてビジュアルが脳内で固まっていたというのもあるけど。【Amazon.co.jp】


城平京『小説 スパイラル〜推理の絆〜 2 鋼鉄番長の密室』(エニックス,2002年4月)
 「ソードマスターの犯罪」よりさらにさらに、漫画っぽかった。設定もキャラも突き抜けていました。つーか、漫画とのコラボだというのが念頭になければ、呆れ果てていたと思う(笑)。でも楽しく読みました。
 「名探偵 鳴海清隆〜小日向くるみの挑戦」からも1編収録。とても親切に手掛かりを配置したパズラーですが、あとがきによると、低年齢層向けを意識したものだったのですね。【Amazon.co.jp】


城平京『小説 スパイラル〜推理の絆〜 3 エリアス・ザウエルの人喰いピアノ』(エニックス,2003年3月)
 とにかく、書いてる人が、あれこれ作中に盛り込んで楽しそうなんだよなあ。いや、実は苦しいのかもしれないけど。「名探偵 鳴海清隆〜小日向くるみの挑戦」からは3編収録。だんだん、本編(漫画)とのつながりも出てきました。
 えーと、このシリーズ、馬鹿にしてるような書き方になっちゃってるけど、テーマ的には、けっこう好感の持てるものだと思います。本編漫画では、対象読者たるティーンエイジャーの皆さんが感情移入すべき側の少年少女キャラたち(主人公除く)がけっこう簡単かつスタイリッシュに人を殺してしまったり命を賭けてしまったりするので、反応に困る部分があるのですが、こっちの番外シリーズはそれもないので、わりと気楽に読めるし。【Amazon.co.jp】


以下、漫画本。


COCO『今日の早川さん』(早川書房,2007年9月)
「大人気のブログコミックが、ついに本になりました。」ということですが、寡聞にして、同居人A氏が大騒ぎしながら発売日にゲットしてくるまで存じ上げませんでした。SF者の早川さんをはじめとして、帆掛さん(ホラー)、岩波さん(純文学)、富士見さん(ライトノベル)、国生さん(ジャンル問わずレア本)、という5人の本好き女性キャラの日常のあれこれ(早川書房サイトの特集ページに、キャラ紹介とおまけ漫画あり)。
 わははは、これは……ある程度、本が好きな人にはものすごく実感をもって理解できるネタばかりなんですが、そうじゃない人にはさっぱりだろうねえ。一方で、私のような“浅い”本読みにもウケてしまうということは、ほどよく間口が広いってことに違いなく、うまいことバランス取ってるなと感心。これ以上マニアックな方向に突き進まれたら、私もついて行けなかっただろうなあ。
 最年少の女子高生、富士見さんの適応力の高さに萌え(笑)。各種ジャンルそろった濃いお姉さま方に囲まれて、将来有望なんだか心配なんだか。元になったブログの書籍化に名乗りをあげたのが、ほかでもない早川書房、というところもポイントですね。【Amazon.co.jp】


作:城平京,画:水野英多『スパイラル・アライヴ』1〜3巻(ガンガンコミックス,2002年4月〜2007年9月)
 なんか自分では絶対に選ばないようなものないかなーと同居人A氏所蔵の漫画を物色していて目につきました。最初のうちは、別の長編作品のスピンアウトだということを知りませんでした。なんかいろいろ思わせぶりなかんじで、意味不明なまま、なんとなく現時点で出ている3冊をすべて読みました。【Amazon.co.jp】


作:城平京,画:水野英多『スパイラル〜推理の絆〜』全15巻(ガンガンコミックス,2000年2月〜2006年1月)
 『スパイラル・アライヴ』のほうを先に読んでしまって、本編が気になったので。「推理の絆」というサブタイトルのわりには、なんていうか、こう……論理展開のアクロバット、もっと言えば、特に最後のほうは主人公の存在意義をかけた屁理屈合戦の真剣勝負、みたいな?
 よく考えれば、すっごく陰惨な要素もある話で、実際どんどんやりきれない展開になっていくのですが、絵柄が可愛いので、なんとなく救われるような気持で読みすすんでしまう。そして、自分の前に立ちはだかる超人のごとき兄が壁になってしまって自分で自分を信じることができていなかった主人公が、残酷な真実に直面しつつも徐々に自分の足で立つようになっていき、ついに自分の前にあらかじめ敷かれたレールを拒否するところまで行くという、言ってみればオーソドックスな、青少年の成長物語でもあるのでした。
 ただ、そのために用意された物語の各パーツが、かなりぶっとんで歪んでますが。そしてそのために、王道な青春物語の王道を、踏み外してもいる(そここそが、好き嫌いは別れるにせよこのお話の要なのでしょうけれど)。これ、小説でやられたら、途中で投げてたかもしれないなあ。漫画だから許せてるんだわ。推理物を銘打って置きながら、物理法則が無視されてるように思えるトリックがあるのも、漫画だからスルー(笑)。あと、ひよのちゃんの、あんなゆるゆるのお下げ髪が一日中あの形状を保っていられるのも、物理法則無視だろ!【Amazon.co.jp】


……ふと思ったのだけれど、ぶっとび設定でも「漫画だから許せる」などと思ってしまうこの心情は、なんなのかしら。反対に、小説でぶっとび設定が出ると、ものすごく「説得力」とか、そこに到達するまでの「厚みのある描写」を無意識に要求しちゃうのは、なぜなのかしら。なにか私、漫画という媒体に(あるいは小説という媒体に)偏見を持ちすぎてる? 読み方が窮屈?

Posted at 22:18 | 個別リンク用URL | コメント (0) | トラックバック (0)

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All texts written by NARANO, Naomi.