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2007年10月19日

若山慧子『忙しい人こそ料理は上手い』

読了本 | 書籍・雑誌 | 近況

忙しい人こそ料理は上手い

小学館(2006年12月)【Amazon.co.jp】

実は先月末に思うところあって(というか軟弱にも気力と体力の限界が近いのを感じて)、長期休業を決めました。復帰時期未定。というか、復帰なんてできるのか?(一応、今までの仕事先からは、またやる気になったら声掛けて、と言っていただいているのですが、ブランクがあんまり長くなるとマズいよなあ?)

まあ、今までそれなりに(自分基準では)頑張ったし、しばらくは貯金をちびちびと消費しながら今後のことを考えるさ。諸般の事情により、無収入になっても社会保険制度上では配偶者の扶養に入ったりはしないので、ちょっと計算が狂いましたが、結婚してなかった場合を考えれば一緒だしな。そのうちなんとかなるだろー(と、思わないとやっていけん)。

ちなみに、身体の具体的な不調について病院で「ストレス性」である可能性を指摘されたときも、それと前後して「もう働きたくない、というか働こうとしても身体が動かない」という状態になってしまったときも、予想外な感情が湧いてきて自分でもびっくりでした。この件については、またいつか書くかも。今はとりあえず、学生時代以来の静かな生活を楽しんでいます。

さて、この『忙しい人こそ料理は上手い』という本は、各方面に休業のご挨拶をしちゃった直後に読んだもの。ずいぶん前に最寄りの図書館で予約したまま忘れかけていたのですが、皮肉なタイミングで順番が回ってきてしまいました。「予約入れた当時と違って、わたくし忙しくなくなっちゃったんですが……」と思いつつ、せっかくなので借りてきました。

この本、タイトルはこんなのですが、中身を読んでみると、昭和43年(うわ、私まだ生まれてないよ)にNHKに就職して料理番組担当のディレクターとして定年まで勤め上げたのち、まだ番組を作ったりしているという著者・若山さんの、仕事にまつわるいろんな思い出話みたいな部分がいちばん面白い。

長寿番組「今日の料理」のテーマ音楽(富田勲)誕生秘話とか。平野レミさんを起用したら「NHKらしくない」とクレームの電話がばんばん来たとか(きゃははは)。そんなエピソードの合間合間に、レシピもちょこちょこ。

全体としては、働くお母さんへの風当たりも今よりずっと強かったであろう時代に、子供2人を育てつつ敏腕チーフディレクターとして出張もありの不規則な仕事で活躍してきた若山さんが、どのように効率的な調理手順を工夫して省略可能なところを省略しつつ食事作りを乗り切ったか、というのがテーマではあります。

時代が時代なだけに、よほどのことがなければ子供さんや旦那さんにはお皿洗いすら手伝わせることなく、市販品や出来合いのお惣菜やレトルトに頼らず、緊急時であろうと外食やてんや物という選択肢は却下、毎夕食後のデザートまで簡単なものながらきっちり手作りですよ。すごーーー。

体力の限界を感じて、旦那さまに「辞める?」と提案されても


「私には夫がいて辞めてもいいのだ。待てよ、それって甘えかな? 生きていく為に、働き続けなければいけない人がほとんどなのだから」


という考え方で、疲れきった身体に鞭打って出勤しつづけたという若山さん。

そして「私にもできたのだから、あなたにもできるはず! あとちょっと頑張ればいいのよ!」という論調で読者に向かって語りかけてくださいます。励まされて、「よし、私も頑張るぞ!」と思うのが素直な受け止め方なのでしょうが、正直、今の私が読むと「すみません、すみません」という感じ(笑)。

私もさー。今まで、
「ほかの人にできてることを私にはできないっていうのは甘えだ。どんなに辛くても働かなくちゃいけない人が世間にはたくさんいるのに、自分自身は配偶者の収入で食えるからって、いったん始めちゃったことを辞めますっていうのも、許されない甘えだ」
という気持ちが、すごく強かった。

でもねえ。できないときだって、あるよ(開き直り)。

あとちょっと頑張ろう、もうちょっと頑張ろう……と思って実際に頑張ることを繰り返していたら、ある日いきなり、片方の耳が聞こえなくなっていたり、目が回って起き上がれなくなっていたりするのよ(笑)。情けないけど。「要領よく頑張ることが可能であるかどうか」ということ自体、資質の問題でもあるのよ。多分。

まあ、体調を崩しても会社に行きつづける人は行きつづけるので、そこで休業しちゃうっていうのは、やっぱり甘えているといえば甘えているのでしょうけれど。

ただ、この本を通読すると、若山さんを支えていたのは、別に「甘えちゃいけない」という意識だけではなかったはずだよなあ、ということも、すごくよく分かるのだ。この人、本当に心の底から、自分の仕事が好きだったし、今でも好きなんだ。

そのことは、こんな状態の私にとっても、救いではある。こんなすごい人だって、単なる義務感と使命感だけで頑張れてたわけじゃないんだ、と。

あと、「生きていくために働きつづけなくちゃいけない人がいるのに、夫がいるからって甘えて辞めてしまうのはいけない」という考え方についてですが。

むしろ逆の考え方だって、できるんだよなあ。

これまでずっと個人の自営でやってきて、周囲から「ナラノには、いざとなれば食わせてくれる旦那がいて、とりあえず路頭に迷うことはないのだから、仕事の取り合いなんかに参入せず、切実に生活費を稼ぎ続ける必要のある独身者や子持ちの人にパイを譲るべき」という空気を感じたことが、一度もないなんて言わないよ、私は。そのときはそのときで、「そんなの、仕事をくれる側が判断することじゃーん」って開き直っていたんですけどね。

そんなこんなで、これもある意味、傲慢かもしれないけど、今だって私が仕事をしていないという事実によって、風が吹けば桶屋が儲かる方式で回り回って助かっている人が、この世のどこかにいるかもしれないなあ、なんてことも、思ってしまうのだ。わははは! ただただのんびり暮らすだけで世のため人のため!(←おいおい)

まあそのうち、次の流れも見えてくるでしょう。

Posted at 2007年10月19日 10:15

コメント

正直なトコ、最初に「いいなあ!」と思ってしまいました。"長期休業"の文字を見ての反射的な反応です。私のはただ単にちょっぴり疲れてるだけで、限界まではまだまだ遠いというのに…、ごめんなさい!でも今の仕事が切れたら少し休めるとイイなー。
甘えられる人や状況がある人は甘えちゃってイイと思うんですよね、私は。まじめな人ほど頑張っちゃうけど、目の前に山があるからって別に登らなくてもいいんだし、迂回路でのんびり遊ぶなり麓でゆっくり過ごすなり、その人がそのときに必要なコトをすればイイと思います。私にも個人自営業の友達がいますけど、プロパーや派遣で働くのとは全然違った大変さがあると思いますし、ならのさんの症状はかなり深刻。もう気持ちの整理はできているみたいなので改めて言うまでもないでしょうけど、ゆっくり休んで、その休みの時間を楽しんでくださいねー。長文ごめんなさい!

投稿者 To-ko : 2007年10月20日 16:21



To-koさん、書き込みありがとうございます。
わはは、「いいなあ!」って思っちゃいますよね。「休めるものなら休みたいよ!」って思っている人には、ふざけんなよって感じですよね。

一人で自営でしかも職種が末端の下請けなので、休むと決めてから実際に休めるようになるまでが、めちゃくちゃ早くて、その点でも、勤め人の方々だとこうはいかんだろうなあ引き継ぎとか手続きとかいろいろあるんだろうなあと思ったりもしました。

体調はすでに上向きなのですが、まあ、せっかくなので、もうしばらくゆるゆる暮してみるつもりです。

To-koさんも、繁忙期には本当にお忙しそうにしていらっしゃって、日記を拝読して大変そうだなあってしょっちゅう思ってます。僭越ながらご自愛くださいね。

投稿者 ならの : 2007年10月22日 09:00





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