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2007年10月30日

2007年10月に読んだものメモ(前)

読了本 | 書籍・雑誌

今月は、冊数がちょっとだけいつもより多いので、メモを前編と後編に分けてみることにしました。


城平京『小説 スパイラル〜推理の絆〜 4 幸福の終わり、終りの幸福』(エニックス,2004年4月)
 先月から読み続けていたシリーズの最終巻。これまでの3巻では「おまけ短編」的な扱いで本の後半に収録されていた、「小日向くるみ」連作のほうをメインにして、鳴海清隆との決着をつけています。これで完全に、本編ともリンクしました。タイムライン的には、本編よりも少し前の話なのですが、主人公である鳴海歩が恐ろしく大人びた小学生として登場し、本編の背景エピソードとしても楽しめます。まあ、この後の彼は本編でいろいろと悲惨な目に遭っていくわけですが。【Amazon.co.jp】


香山リカ『スピリチュアルにハマる人、ハマらない人』(幻冬舎,2006年11月)
 従来のアヤシゲと言われがちだった心霊主義や新興宗教と違って明るくオシャレなイメージだったりするスピリチュアル系。ブームの仕掛け人や一部の人々の意識には必ずしも合致しているとは限らないながら、多くの層がここに求めているのは、恋愛や金銭などの現世利益的な個人の幸福を追求すること(結果として他人を蹴落とすことになっても、そこはスルー)、という分析に、なるほどなるほど、と。宗教だと、辛い修行があったりして個人の幸福を犠牲にしてでも……という方向に行きがちだけれど、それはもう流行らない、と。
 テレビを見る習慣がないもので、本書で詳しく取り上げられている江原なんとかという人の話がよく分からなかった。そんなに癒し系な容姿の方なんでしょうか。【Amazon.co.jp】


岸本葉子『刺激的生活』(潮出版社,2007年7月)
 日々の生活を綴ったエッセイ集。一人暮らしでフリーランスだけど、きちんと自分の身体を定期的に点検して、それを面白くレポートしてくれるので、読んでるこっちも「病院」というところに対する恐怖感が薄れてきてありがたい(実は、会社の健康診断がなくなってからの6年半、今年の9月になるまで、不調なときがあってもなんだかんだと理由を付けて一度も病院というところに足を踏み入れたことのなかった私です)。大量の下剤を飲んでの大腸検査なんてのも、かなり詳細にプロセスの説明があるんだけど、そんな内容でも文章がとてもクリーンで上品な雰囲気なのはさすが。
 かといって、ははーっとひれ伏したくなるほど自律的でストイックな生活というわけでもなく、適度にドジっていたり、ゆるゆるしているところが心地よい。【Amazon.co.jp】


k.m.p.(なかがわみどり&ムラマツエリコ)『ぐるぐるしてる、オンナたち。』(角川文庫/2006年12月)
 単行本『ぐるぐるなまいにち。』(JTBパブリッシング,1999年3月)の中から、特にジェンダー問題や男女の関係性についての部分を選り抜いて再編集したもの。ここで例に挙がっている、著者たちをイライラさせるステレオタイプな男女関係は、あまりにも分かりやすくパターン化されていて、デフォルメされてるのでは?とさえ思ってしまうほどだけれど、実は意外と、まだまだ現実もそういうものなのかもしれず。とにかく、各人が自分の意思に基づいて自らの「ありかた」を決めて、それが他者から口出しされたり見下されたりしないっていうのは、理想だけど、なかなか難しいものだよねえ。
 ところで、k.m.p. というのは「金もーけプロジェクト」の略なんですな。素敵。【Amazon.co.jp】


三浦しをん『三四郎はそれから門を出た』(ポプラ社,2006年7月)
 いろんなところに載った書評を1冊に集めたもの。こ……これはすごいブックガイドだ! まったく読んだことのない、本来ならまったく私の守備範囲からは外れているはずの本に関する文章がこんなに面白く読めて、しかも「うわああ、その本、読みたいっ!」という気持ちが湧いてくるなんて。何かもう、本に対する愛情が詰まってますってかんじだなあ。素晴らしい。しかも、原稿を依頼されたときの要求に沿って、新刊書の紹介が主眼のものについては、きっちりその新刊書をメインに置き、三浦さん自身のキャラが求められている媒体では、ちゃんと持ち味を炸裂させつつ本の話題につなげ。ほんと、巧いよなあ。素晴らしい。実に素晴らしい。難点は、文章そのものが面白すぎて、メモも取らずがんがん読み進んでしまったため、興味が湧いた本の説明が載っているページを読了後に改めて必死で探さねばならなかったことくらいです。【Amazon.co.jp】


藤田香織『だらしな日記―食事と体脂肪と読書の因果関係について考察する』(幻冬舎,2002年6月)
 独り暮らしの書評家である藤田さんが、幻冬舎のウェブサイトで連載している日記のうち、2001年1月末から2002年1月までの分。別途、感想文を書きました。【Amazon.co.jp】


高橋秀実『素晴らしきラジオ体操』(小学館文庫,2002年8月/1998年8月)
 ラジオ体操の意外な発祥と変遷、現在の位置づけ、そして毎朝ラジオ体操せずにはおれない、「ラジオ体操人」たちとの対話。この著者のノンフィクション本は、どれを読んでも取材対象への誠実な気遣いと、思わずツッコミを入れずにはおれない人情(読者へのフォロー?)のバランスが、とても好きです。【Amazon.co.jp】


中村うさぎ+加藤寛『税金を払う人使う人』(日経BP社,2001年7月)
 港区役所と闘う滞納女王(と、表紙の著者名の上に書いてある)中村うさぎが、政府税制調査会の会長を退任したばかりだった、経済学者の加藤寛先生に、税金のしくみについて解説を受ける、というもの。2001年の本なので、引き合いに出されている情報は古いのですが、すごく基本的な考え方の部分から話が始まっており、しかも、そうか私もそこから考えたことなかったんだなあ、ということに、気付かされてしまった部分もたくさんあった。将来を考えると暗いネタもいろいろありますが、いろいろなたとえ話も織り交ぜながら、すっきりと整理されていて、単純に面白かった。【Amazon.co.jp】


中村うさぎ『女という病』(新潮社,2005年8月)
 初出『新潮45』2004年1月号〜2005年3月号。女性が犯人または被害者になった事件を取り上げて、中村うさぎが検証するというもの。情報を集めて事実を探ることよりも、著者自身が、当事者に憑依するように感情移入して内面を推測し書き綴るというほうに重点が置かれているため、どの事件について読んでいても、結局のところ浮き上がってくるのは、どうしても「こういう感情移入をせざるを得ない中村うさぎ自身」になってしまうのですが、これこそが、この著者の芸風なんだろうなあということで納得。【Amazon.co.jp】


このあとに読んだものについては、明日付けの記事で。

Posted at 2007年10月30日 18:58



All texts written by NARANO, Naomi. HOME