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2007年11月30日

2007年11月に読んだものメモ

読了本 | 書籍・雑誌

実はこれを書いている今は、すでに12月6日の夜だったりするのですが、今までどおり、記事の日付は11月末日にしておきます。


Debbie Macomber "A Good Yarn" (Mira Books, 2005年)
 前に読んだ "The Shop On Blossom Street" の続編。毛糸専門店も軌道に乗って、またまた新しく編み物教室を開講することにしたリディア。今度の課題は前作のブランケットよりもちょっと高度になって、「靴下」です。靴下って、私が子供の頃、母親が棒針5本とかで編んでた記憶があるのですが、本書の中では輪針2本が使われているみたいです。そっちのほうがシンプルらしい。そして集まった生徒はティーンエイジャーから老婦人まで、前作よりもさらに世代ばらばら。やはりリディアを含む登場人物の女性たちそれぞれのプライベート・ライフに問題が発生しており、編み物を通じて徐々に世代や立場を越えた友情が育ち、それと共にみんなそれぞれのかたちで前向きに……とパターンは前作と同じなのですが、「ああ、そういう状況でそういう気持ちって、ありそうだよなあ!」という描写が的確で、ぐいぐい読んでしまいます。【Amazon.co.jp】


秋本尚美『家とオトコと猫 ずるずるオンナが家を建てたら…』(扶桑社,2007年5月)
 漫画家の著者が、一念発起して自分の家を建て、それがきっかけとなって腐れ縁的に同居していた男性とお別れし、幸せな結婚に至るまで。この手の本を読むたびに、負け惜しみでなく(本当に、負け惜しみでなく)、「私は一から自分が住む家を建てるようなことにならずに済んでよかったなあ」と思う私です。なんちゅーか私は、「そこまで細かく自分で考えなくちゃいけないなら、アリモノのハコでいいや……めんどくせー」と投げ出してしまうタイプなんだな(実際、いま暮らしている中古住宅を買う前の一時期、何も建ってない土地を買いかけてて、設計の相談も進みかけていたんですが、あのときは「これからやるべきこと」を考えただけで絶望のあまり気が遠くなりそうでした)。
 秋本さんが生活感のないスタイリッシュなお部屋を追求していくさまが、自分とはまったく発想が違っていて面白かった。収納スペースのドアの取っ手や電気のスイッチが視界に入ることすら許せない、生活感を抑えるためなら使い勝手が悪くなってもOKって、すごくない?(というか、ワタシ的にはすごい。)とはいえ、漫画家さんなので、そのくらいの美意識があってこそなのかもしれませんね。【Amazon.co.jp】


米澤穂信『氷菓』(角川スニーカー文庫,2001年10月)
 再読。古典部シリーズ第1弾。「省エネ主義」の主人公が、姉の命令により活動内容不明な「古典部」に入部し、巻き込まれタイプの探偵役として、学校生活の中でのちょっとした謎を解いていくうちに、重く苦いテーマにぶちあたる。同じ著者の「甘いものシリーズ」(正式名称はなんなんだ?)で“小市民”をめざす男子高校生といい、この年代特有の自意識みたいなのを、本人視点から書くのが上手いんだよなあ。青春です。【Amazon.co.jp】


米澤穂信『愚者のエンドロール』(角川スニーカー文庫,2002年7月)
 再読。古典部シリーズ第2弾。前作よりも、作品全体の構成に遊びを感じる。【Amazon.co.jp】


米澤穂信『クドリャフカの順番』(角川書店,2005年7月)
 古典部シリーズ第3弾。1作目で、文化祭のために文集を作らなくちゃという話が出て、2作目で文化祭のための出し物のお手伝いをして、ようやく! とうとう! 文化祭本番。しかし古典部は、ある「大問題」に直面していた……。これは、とにかく「高校の文化祭」の描写だけで楽しい楽しい。今回は主要キャラが順番に語り手となっており、いろいろ考えちゃって大人の目からはもどかしいことになっているのは主人公の省エネ少年・折木くんだけじゃなく、それぞれがいろいろ抱えているんだなあ、ということが分かります。それもまた、ティーンエイジャーの特権なのだけれど。【Amazon.co.jp】


米澤穂信『遠回りする雛』(角川書店,2007年10月)
 古典部シリーズ第4弾。入学当初から次の春までを扱った連作短編集。つまり、1作目から3作目と時期的にはかぶるのですが、それがまた、徐々に折木くんの意識が変わっていくさまが改めて読めて楽しい。この4作目にきて、いきなり千反田えるの存在感が増してきました。彼女が背負うものについての説明がはっきりあったから、というのもあるけど。これからどう成長していくんだろうなあ少年少女!【Amazon.co.jp】


入江敦彦『イケズの構造』(新潮文庫,2007年8月/親本2005年2月)
 《京都人のイケズ》を“よそさん”に解説。いろいろな事例が、これはイケズです、これはイケズではありません……と振り分けられていくのだけれど、分かるのとか分からんのとか、いろいろ(笑)。わたくし無粋者なので、昔ながらの京都で暮らしたら寿命が縮みそう……と震えつつ、自分の京都生まれの友達などを数人、脳裏に浮かべてみるに、私たちの世代から下では、こういう破壊力のある《イケズ》文化って、もうかなり廃れているのかもしれないよなあ、なんてことも思ったり。【Amazon.co.jp】


原武史『滝山コミューン一九七四』(講談社,2007年5月)
 目からウロコが落ちると同時に、なんだか妙に息苦しかった小学校高学年時代のやりきれない苦い気持ちがよみがえってきましたよ。別途、感想文を書きました。【Amazon.co.jp】


大森望・豊崎由美『文学賞メッタ斬り! 2007年版 受賞作はありません編』(PARCO出版,2007年5月)
 ここで取り上げられているような文学作品をほとんど読まない私なのに、なぜこのシリーズを読んでしまうのか(それも発売から半年遅れでウェブ上の感想ラッシュがひととおり落ち着いた頃になって)、自分が謎。おふたりのツッコミをもとに、対象になってる作品やら選評やらについて妄想するのが好きなんでしょうか私?【Amazon.co.jp】


青木るえか『主婦の旅ぐらし』(角川文庫,2004年4月)
 デビューエッセイ集『私はハロン棒になりたい』(本の雑誌社,2001年3月)を再構成して書き下ろしを加えたもの。先月読んだ、藤田香織さんの『だらしな日記』シリーズのどっちかで『私はハロン棒になりたい』について一言コメントがあり、今まで読んでいた青木さんの「主婦」シリーズとは違うもののような印象を受けて、ちょっと興味を引かれていたのでした。
 ああ、これは……真ん中に入っている、本に関連したエッセイの章が、とても面白い。しかも、ものすごく説明のしにくい面白さだ。なんというか、ミもフタもないんだけど、変に繊細、みたいな。本そのものとは全然違う方向に話が飛んで行っちゃってるのに、やたら引き込まれたり。でも、なんかものすごく「わかる!」って感じちゃったり。「森茉莉に長生きしてほしかった理由」なんて、壮絶に共感したよ(笑)。【Amazon.co.jp】


岸本葉子『がんから5年〜「ほどほど」がだいじ〜』(文藝春秋,2007年9月)
 私が知っていた、いちばん身近な癌患者は、診断直後から3ヶ月ほど入院したのち、結局は退院しなかったので、手術に成功したひとのその後のことって、最近まで実はあまり真剣に考えたことがなかった。でも、成功したらしたで、その後の生活も意識も、変わってしまうのだなあ。岸本さんは淡々と理性的に書いているけど。巻末には、各世代および岸本さんと同世代の女性が老後のことなどについて語る座談会のようすが収録されており、これもいろいろと考えることが多かった。【Amazon.co.jp】


岸本葉子『からだに悪い?』(中央公論新社,2007年8月)
 こちらは、上述の本より少し範囲を広げた、全般的な身辺エッセイのようなもの。本当に真面目なんだなあ、という印象。日々を丁寧に生きている。息を抜くことすら、きちんと考えてやってるような。こういう人もいるのだなあ。【Amazon.co.jp】


桜庭一樹『桜庭一樹読書日記〜少年になり、本を買うのだ。〜』(東京創元社,2007年7月)
 足取り軽くどこかへ移動するときの「らったった」という表現が妙に気になる。かなり気になる。実際の使用頻度は、本全体で数回だと思うのだけれど。それは私が、固有名詞としての「ラッタッタ」を記憶している世代だからでしょうか。この読書日記に目を通して、自分が読んでみたいと思った本は、『赤い蝋燭と人魚』および『レベッカ』なんですが、別に本書の中で強力プッシュされているわけでもなんでもなく。でも、新しい本ばかりじゃなく、古い本も読まなくてはという気持ちになったという点では、触発されたと言えるのかも。あと、最近よく平積みコーナーで見かける桜庭さんの新刊『私の男』は、書店でぱらぱらとめくってみて、ちょっと腰が引けていたのですが、この日記で執筆時の気合いの入れっぷりを知って、やっぱり読んでおくべきかしら……と思い始めています。
 こういうのとか先月の『だらしな日記』とか読んでると、うっかり自分も「読書日記」が書きたくなっちゃうな。絶対、すぐに挫折するけど。【Amazon.co.jp】


以下、漫画本。


小箱とたん『スケッチブック』第1〜4巻+出張版(マッグガーデン BLADE COMICS,2003年〜2007年9月)
 なんか知らんけど、いま夫がこれのアニメ版に、やたらめったらハマっています。サントラCDまで買ってくる勢いです(村松健って、こんな仕事もしてたんか!)。アニメに付き合う根性はなかったのですが、とりあえず原作の4コマ漫画を読んでみた。ほんわり。猫社会。地方都市の高校生活。【Amazon.co.jp】


今市子『百鬼夜行抄』第16巻(朝日新聞社,2007年11月)
 「三郎さん、それでいいのっ!?」と、なんだかすごく寂しいような。でも実際問題、仕方のないことなのかなあ。【Amazon.co.jp】


二ノ宮知子『のだめカンタービレ』第19巻(講談社,2007年11月)
 みんなそれぞれ、がんばっていた。のだめも初期の頃の破天荒さが薄れてきて、作品全体が、かつてはギャグの衣でカバーされていた、才能の有無が歴然と序列化される過酷な世界に生きる若者たちの成長物語という本質部分を前面に出してきているかんじ。【Amazon.co.jp】


よしながふみ『きのう何食べた?』第1巻(講談社,2007年11月)
 1ヶ月の食費予算が2万5千円なゲイ・カップルの食生活。仕事帰りの食材購入から盛り付けまで、手際よく仕上げられていく毎日のご飯が、詳細に描写されています。連載誌が『週刊モーニング』ということなので、これは「男性方にも、お料理に目覚めてもらおう!」みたいな目的意識をもって描かれているんだろうか? ワンポイント・アドバイスみたいなの付いてるし。味付けに市販のめんつゆとか焼肉のタレとか使っちゃうし。忙しいひと向けレシピ。ああでもこれ、献立が決まっていないときに読むと、すげー影響されるなあ。これ読んだせいで、久々にイワシの梅煮を作っちゃった。
 メインの2人をゲイに設定している意味は、なんなんだろう。特に弁護士である筧史朗の、親との微妙な距離感とか、お料理しつつ、いちいち男らしさにこだわるところとか、すごく屈折してる。もちろん、よしながさんは、もともと「BL」の人ではあるんだけど、一般向けのお話だって書けちゃう人だし、そこを敢えて、一般誌でこの設定にしているってことは、これからなんか対象読者の価値観を揺さぶるような「爆弾」を仕掛けてくるんじゃないか……みたいに、ちょっと身構えてしまっています。ま、このまま淡々とお料理漫画で続いてくれても、楽しいと思うんだけど。
 ……とかなんとか言いつつ、実は筧さんが鶏モモ肉を100g39円で買っていると知った瞬間、それまで考えていたことが何もかもふっとんで、うらやましさに「ぎゃー!」と叫びたくなりました。胸肉ならともかく! モモ肉で39円は、私の家からの徒歩圏内じゃ、ありえねー! 底値でも60円台だよ! いいなあ、いいなあ(←鶏モモ好き)。【Amazon.co.jp】


よしたに『ぼく、オタリーマン。』第1巻(中経出版,2007年3月)
 一時期、ネット上で大変、評判になっているようだったので、どんなものかなあ、と。すみません、いまひとつピンと来ないネタが多かった……。これが文化圏の違いというものか!【Amazon.co.jp】

Posted at 2007年11月30日 23:49

コメント

毎度同じことを謝っている気がしますが、あまりに遅いコメントでごめんなさい!
『赤い蝋燭と人魚』は未読ですか? 私の好きな童話なんで、つい反応しちゃいました。漫画家の坂田靖子さんが『泣いた赤鬼』とあわせて書いていらしたことが面白かったです。(http://www2u.biglobe.ne.jp/~ysakata/fun/book/mimei/mimei.htm)
あと、ならのさんはグレゴリ青山さんの本は読まれてましたっけ?『イケズの構造』で『しぶちん京都』を思い出してオススメしたくなりました。この人のアジア放浪マンガもオススメですよー。

投稿者 To-ko : 2008年1月22日 21:06



あっ間違えた!
グレゴリさんの京都では『ナマの京都』の方をオススメしたかったのでした。こっちのが内容が濃いです。

投稿者 To-ko : 2008年1月22日 21:22



『赤い蝋燭と人魚』は、亡母がものすごく忌み嫌っていて「我が子には絶対に読ませません!」という勢いだったので、若いときに読みそびれてしまったのですよ(お好きな作品なのにすみません)。

でも母と私の好みはだいぶ違うということが歳を取ってから分かってきたので、ちょっと読んでみたいのです。というか、いったい何故あんなに母はこれを嫌っていたのかというところに、今はおそろしく興味アリ(読んでも分からないかもしれないけど)。

To-koさんが教えてくださったWebページで初めてあらすじを知りましたが、たしかに親としては複雑な気持ちになるかもしれないストーリーではありますね。でも普段の母は、かなりブラックな物語でも作品としては受け入れる人だったので、やはり何故このお話にかぎって? と思います。これ以外には、子供の頃に具体的にタイトル指定して「読むな」と禁じられた本は1冊もないのです(だからやっぱり、今も少しだけ、読むのが怖い)。

グレゴリ青山さんも、名前だけは、ちょくちょくあちこちで目に留めていたのですが、読んだことないんです。アジア関係の本しか知らなかったけど、京都本もあるんですね。お勧めいただいた本、チェックしてみます!

投稿者 ならの : 2008年1月22日 23:04



うーん、自分で言っておきながらなんですが、「好き」というのは語弊があるかも>『赤い蝋燭と人魚』。ホント暗い話なんですよー。でもなんだかな。イメージがすごく強くて。怖くて美しい話だった気がします。子供のころの印象ですが。読まれたら感想聞きたいです!ぜひぜひ!

投稿者 To-ko : 2008年1月23日 21:45



はーい。近いうちに意を決して(って、そんな大袈裟な)ぜひとも手に取ってみたいと思います。

投稿者 ならの : 2008年1月24日 16:13





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