« ナオミ・ノヴィク『テメレア戦記I 気高き王家の翼』 | 最近 | 土屋敦『なんたって豚の角煮』 »

2008年2月21日

グレゴリ青山『ブンブン堂のグレちゃん 大阪古本屋バイト日記』

読了本 | 書籍・雑誌

ブンブン堂のグレちゃん 大阪古本屋バイト日記

イースト・プレス(2007年6月)【Amazon.co.jp】

古書情報誌「彷書月刊」(彷徨舎)で2003年6月号〜2007年4月号に連載されていた漫画に、書き下ろしを加えたもの。“おまけ”の「メーリーハムファサル」(旅先インドでカバンの中からちっちゃな内田百關謳カを取り出して……というすごい漫画)の初出は、内田百閨w第三阿房列車』(新潮文庫)だそうです(って、もしかしてこれ新潮文庫の巻末解説? やるなあ新潮社!)。

本書のメインは、高校を出て専門学校に通いながら古本屋さんでアルバイトをしていた頃の「グレちゃん」ことグレゴリ青山さんの日常を漫画で描いたもの。さらに、現在の関西の古本屋さん取材ページなども。

これ、前書きのあとの最初のページの最初のコマの背景を見た時点でいきなりモロ分かりですが、舞台になってるのは、梅田の「かっぱ横丁」の隣の、「阪急古書のまち」だよねえ。

えーと、グレちゃん高校卒業直後18歳なら、当時私は中3か。うわあ、あの頃このあたり、時々うろついてましたっ。お小遣いとの兼ね合いで、文庫コーナーやワゴンセールを漁るばかりでしたが、店から店へ、ふらふら歩いているだけでも楽しかった。そうか、もしかしたら私、グレおねえさんとこの辺ですれ違っていた可能性も、いや、自分が買った本をグレおねえさんに包んでいただいた可能性だって、あるんですね!? そして、そうか、あの頃、古本屋さんのレジ台の向こう側では、ああいう作業が行われたり、ああいう会話がされていたりしたんだなあ。

1980年代半ばといえば、世間の若者が行き来するようなところは、そろそろバブリーに華やかだったのではないかと思うのですが、あの辺は、とにかく時間が止まったようなマニアックな空間でした(きっと、今も)。にぎやかな大通りから道を1本、入っただけなのに、なんか昼間でも薄暗くってねえ。そんなところで働く古本屋さんたちもまた、すごく個性的なキャラとして描かれています。みんな、それぞれ独特のいい味出してる人たち。

そしてもちろん、さすが古本屋なんてところをバイト先に選ぶグレちゃん、高校を出たばかりのお嬢さんとしては、趣味嗜好にしても休日の過ごし方にしても、大変に渋い。今でいう「文化系女子」って、(よく分かってないんですが)こういう感じ? こんな子がアルバイトに来て真面目に働いてくれたら、そりゃあ周囲の古本屋さんたちは、すごく可愛く思っただろうなあ。

漫画以外にも、作中に出てくるアイテムの実物が写真と文章で紹介されていたり、古書店で入手した資料をヒントに作成された専門学校の課題や、バイトを辞めて旅に出てから店主さんに送ったイラスト入りのハガキが掲載されていたりして、本当に盛りだくさんな本でした。

なんだか、単に当時の古書店の内情を紹介しているだけじゃなく、アルバイトしながらデザインの勉強をしていた時代の青山さんの2年間が、この1冊の中にぎゅーっと詰まっているような印象。彼女が学校を卒業したあと就職せず、のちに漫画作品として結実するアジア放浪を始めたきっかけも、古本屋さんでの出会いにあったわけだし。

Posted at 2008年2月21日 16:22



All texts written by NARANO, Naomi. HOME