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2008年2月29日

2008年2月に読んだものメモ(後)

読了本 | 書籍・雑誌

2月28日に出したメモのつづき。

こうやって各月の読了記録のまとめを書いていると、ついうっかり、けっこう長々しくなってしまうときもあるんですが、長いわりにはいまいち言いたいことを言いきれてないなあ、うまく言語化できてなくて直感的・感覚的なコメントに終わっちゃってるなあ、と思うようなときには、敢えて別エントリに分けたりしないで、そのままずらずら並べてしまうのでした。

それじゃあ、月末まとめ以外の、独立した読書感想記事は感覚的なコメントで終わっていないのかといえば、そうともかぎらない場合が多いことも自覚はしているのですが。

まあとにかく、ときおり妙に長々しい「メモ」の羅列になってしまってますが、見づらくてごめんなさい――ということを一度、言っておきたかった。



酒井順子『黒いマナー』(文藝春秋,2007年9月)
 カバーの上にずらりと並んだお食事ネコさんたちのイラストがすごく可愛い。でも、真っ黒背景に白抜きなので、なんか怖い(笑)。酒井さんが提示する、いまどきの新しいマナー(?)が必要であろうと思われるさまざまな「気まずい場面」の設定が、なんとも巧いとこ突いてて、居たたまれなさと可笑しさのあいだで板挟みに。そこを見てしまうのは意地悪だなあと思いつつ、たしかにあるかもしれないよなあ、という。【Amazon.co.jp】


桜庭一樹『私の男』(文藝春秋,2007年10月)
 第138回芥川賞受賞作に決定したばかりの話題作。なんか、今この時期にこれを読むって、ミーハーっぽい? 去年、『桜庭一樹読書日記』(東京創元社)で、桜庭さんがこの作品を鬼気迫る勢いで執筆なさっていたことを知って以来、気にはなっていたのだけど。でもそうやってものすごいエネルギー注ぎ込んで書かれた作品が受賞しておめでとうございます。
 1章ごとに時系列が逆行し、なぜこうなったの、なぜその言葉が出るの……というのが、読み進めてみて初めて理解される構成のおかげで、ぐんぐん引っ張られてページをめくってしまいました。
 それと同時に、桜庭作品でよく感じる「女であるということ」に課せられた意味の過剰なほどの重さ、そしてとりわけこの作品においてそこに絡められている「血縁」という概念に、読んでてもうまく乗り切れてない自分が、もどかしいような、でもやっぱり、たとえそういう世界観に惹かれていることを自覚したとしても、理性で歯止めをかけてあんまり乗らずにいたいような。
 キミたちってば、すっかり自分らだけの世界に入っちゃってるけれど、そしてその排他性はたしかに美しく完成されたものではあるけれど、キミたちの抱えるものって本当の本当に、そこまで悲壮にどろどろしちゃわないといけないもんなのか? ちょっと酔っちゃってない? というような口惜しさと作品世界から一歩さがって頭を冷やしたくなる感じが、どうしても最後に残ってしまうのですね。その割り切れなさまでが、作者の中では織り込み済みのような気もするんだけど。こういう作品を書く人が、「一樹」という男名前のペンネームを使い続けていることもまた、改めて考えると非常に興味深い。【Amazon.co.jp】


香山リカ『知らずに他人を傷つける人たち モラル・ハラスメントという「大人のいじめ」』(KKベストセラーズ ベスト新書,2007年2月)
 さくさく読みやすいんだけど、なんとなく食い足りない感じも。新書だし仕方ないかなあ。文体のせいもあるかも。ここ数年の香山先生のご著書は、わりとみんな、よく似たスタイルにまとまっている(ような気がする)ので。本書のテーマに関しては、「ふたりの間である種の歯車がカチリと合って起きる関係性の病」という表現が大変しっくりと納得のいくものでした。【Amazon.co.jp】


井上尚登『厨房ガール!』(角川書店,2007年9月)
 ああ、これはすごく好き。軽〜く息抜き的に読めて、前向きな気持ちになれます。いわゆる「日常の謎」系のミステリですが、こういう舞台設定のものは初めてかも。あとがきで作者自身が書いてた『学校を卒業したひとたちが、もういちど味わう学園生活』という説明が、まさにそのまま。
 バックグラウンドさまざまな老若男女が学ぶクッキングスクールの略称が「SWAT」だとか、そういうネタの漫画的な軽さも、元警察官であるヒロインのはちゃめちゃな設定(緊張が高まると周囲の人を無意識に投げ飛ばす)とあいまって、いい感じに作用している気がします。各章のうんちくと、お料理修業の場でのちょっとした引っかかりが思いも寄らぬ結論につながっていく展開が、楽しい楽しい。ほのかな恋愛模様をも含めた主要登場人物たちのその後も、ぜひぜひ知りたいなあ。続編、出てほしい。【Amazon.co.jp】


以下、漫画本です。


グレゴリ青山『ブンブン堂のグレちゃん 大阪古本屋バイト日記』(イースト・プレス,2007年6月)
 専門学校でデザインを学びながら、古書店でアルバイトをしていた頃のことを描いた漫画に、その他いろいろ加えた盛りだくさんな本。別途、感想文を書きました。【Amazon.co.jp】


清水玲子『秘密 トップ・シークレット』第4巻(白泉社,2008年2月)
 今回は、1冊ほぼ丸ごとを費やして1つの事件を追っているので、読み応えがありました。そして青木くんには、よい出会いがあったよかったねと言ってあげたいのですが……薪さんが、なんだかどんどん追いつめられてるような感じで、心配ですよ。薪さんの救いとなるのは、青木くんのストレートさと精神的なたくましさなんじゃないかと思っていたのだけれど、こうなってしまうと薪さんは青木くんからもますます距離を取りそうだよなあ。しかしこれほんとに、アニメ化するの? こんなエグい話を?【Amazon.co.jp】


中村光『聖(セイント)☆おにいさん』第1巻(講談社モーニングKC,2008年1月)
 ブッダとイエス・キリストが、2人そろってこんなおかしなギャグ漫画の、とぼけた主人公になってくれちゃう、日本という国に生まれてよかったと思いました。ちょっとした小ネタがいちいち可笑しい。Tシャツのロゴとか!【Amazon.co.jp】


細川貂々『どーすんの? 私』(小学館,2008年1月)
 細川さんが、高校を出てから、フリーターや会社員を経て、専門学校への入学を決めるまでのお話。何をやったらいいのか分からなくて、あれこれ回り道をしちゃってたあいだの心の動きが、すごく素直に描かれています。私はわりと、若い頃は、自分のやりたいことがはっきり決まってるつもりでいて、さくさくと道を選んで前に進んでいってしまったのですが、本当は若い頃に、もっと悩んでおくとよかったのかもしれないなあ。今頃になって、これまでで一番、「これからどーすんの?」って思っちゃってるので(笑)。
 あと、この本を読んだら、若い頃の私って、すごく恵まれた環境にいたんだ……と、感謝の気持ちが湧いてきました。私も女子校出身ですが、細川さんがコラムのページに書いてらしたような「みんなで同じことをしないとダメ」的プレッシャーは、あんまりなかった気がする。
 職場の人間関係も、平穏だったなあ。みんな良識のあるいい人ばかりで、細川さんの場合のように、仕事と関係ないどろどろした感情を見せつけられるようなことは最後までなかったです(どろどろするヒマもないくらい常に仕事が山積みだったってだけかも)。私も結局、1つ目の職場4年、2つ目の職場2年で勤め人生活はやめてしまったわけですが、この本に描かれているような恐ろしい会社なら、数ヶ月も経たないうちにギブアップしたに違いない!【Amazon.co.jp】

Posted at 2008年2月29日 22:05



All texts written by NARANO, Naomi. HOME