« 華恵『ひとりの時間 My Fifteen Report』 | 最近 | 酒井順子『携帯の無い青春』 »

2008年4月19日

三浦しをん『仏果を得ず』

読了本 | 書籍・雑誌

仏果を得ず

双葉社(2007年11月)【Amazon.co.jp】

去年の12月に同著者の『あやつられ文楽鑑賞』(ポプラ社)を読んだあと、同じく文楽を題材にした小説のほうはどんなのかしら、と思って。三十路かそこらの主人公ですが、文楽の世界ではまだまだ若造扱い。そしてお話も、なんだかとっても「青春」してる(笑)。

伝統文化を描いた小説というと、なんとなく世俗と隔絶されたお家で代々受け継がれてきた血縁関係の濃い芸の世界……みたいなのを想像してしまいがちだったんですが、この物語の主人公は一般家庭から研修所を経て師匠に弟子入りし、お金がないので友達が経営するラブホテルの一室に住んで、ボランティアで小学生相手の文楽教室の先生をやってたりします。

そんなイマドキの青年が、伝統芸能である「文楽」に魅せられて、自分の未熟さと向き合いながら、何と引き換えにしてもよいくらいにこの世界で高みを目指しつづけていくことを欲している、その心情に、すんなりと共感できてしまうのは、三浦さん自身が、文楽の世界にどっぷり浸かって、しかも理解を深めるなかで作り手側の視点をも獲得しているからなのでしょう。

事前に『あやつられ文楽鑑賞』を読んでいたので、作者の舞台裏が透けて見えてしまう感じにちょっと居心地悪いものがあったりもした反面、なじみのない世界を舞台にした物語のわりにはディテールまで無理なく楽しめて面白さ倍増でもありました。

Posted at 2008年4月19日 18:52



All texts written by NARANO, Naomi. HOME