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2008年4月29日

細川貂々&ツレ『専業主夫ツレのプチベジ・クッキング』

読了本 | 書籍・雑誌

専業主夫ツレのプチベジ・クッキング

2007年6月(角川SSコミュニケーションズ)【Amazon.co.jp】

『ツレがうつになりまして。』のご夫婦の初の正式な共著。メインはツレさんのレシピやお料理コラムで、それに貂々さんが漫画でツッコミを入れたようなかたち。結婚する前からもともと凝り性だったツレさんは、うつで会社を辞めたことをきっかけに、現在は家庭内の家事責任者となっていらっしゃいます。

載ってるレシピは、昨今のコジャレたレシピ本を見慣れているとちょっと拍子ぬけするような、日常的なお総菜、といった感じのものが多い(この所帯臭さは、料理写真をツレさんが自分で撮ってるせいもあるかも……やっぱりプロの写真とは明らかに違ってて、よくも悪くも「リアルな生活感」が見えちゃう)。ただ、「アレルギー体質のため肉や魚が食べられない(かつおぶしで出汁を取る程度なら大丈夫)」、「子供の頃はヨーロッパに住んでた」というツレさん本人の事情と、「イグアナを飼っているため、やたら葉野菜やカブを買う(イグちゃんがカブの葉好きなので、本体の白い部分が大量に残る)」という細川家の事情が如実に反映されたラインアップになっていて、ご夫婦の食事風景を覗き見しているような気分に(笑)。

レシピに添えられている、貂々さんの漫画が、ますますその「覗き見」感を強めています。なぜなら、ツレさんとはまったく違う食環境で育ってきた貂々さんは、ツレさんの日々の料理を決して手放しの称賛とともに受け入れているわけではないことが、漫画のなかでは率直に語られているのです。

正直、こんなお料理本、初めて見た! 普通、商業出版されるようなレシピ集って、「美味しいよ、周囲にも好評だよ」ってことしか書かないよね? でも本書ではときおり、ツレさんが子供の頃の思い出の味のレシピや、ベジタリアンとしての工夫を凝らしたレシピを書いてる、すぐ隣のページに、貂々さんが「これあんまり好きじゃない」とか、「眉間に皺寄せ」みたいな雰囲気の漫画を描いてたりするんだ(大笑い)。

でも……そうなんだよな、結婚生活って、そうだよねえ? どんなに気が合う相手でも、一緒に暮らしてみて初めて「えええ!? 普遍的と思っていた部分の感覚がおそろしく食い違ってるよ!」みたいなの、絶対あるよねえ(しみじみ)。それでも、ずっと一緒にいるうちに、だんだんと新たな基準や妥協点が見出されてきたりしてね。なんか読んでるうちに、レシピそのものよりもむしろ、そういった「夫婦の寄り添い」が透けて見えるところが、この本の醍醐味なのかもって気がしてきた。

私個人はどっちかといえば、育ってきた食環境は、貂々さんよりもツレさんのほうに近いのかなあ? というか、わりと雑食度が高い。洋風・和風、東南アジア風、どんな味付けもそこそこOK。フランス育ちのツレさんほど本格的なものが出てたわけじゃないけど、キッシュやじゃがいも入りのスペインオムレツは、亡くなった実母がよく作ってくれて子供の頃よく食べてたし、青カビ系のチーズなんかも小さい頃から大好き。貂々さんは、どれもツレさんに出会うまで食べたことがなかったそうです。

あと、この本を読んでるうちに、やたらオートミールのお粥を食べたくなってきました。同居人A氏も貂々さんと同じく「粥と言えば米!」の人なので、一人暮らし時代は常備品だったのに、そういえば結婚してからはほとんど作ったことなかったや。今度、買ってこよう。でもツレさんは、煮るときから牛乳入れちゃうんだね。私の家では、水だけで煮たオートミールに、あとから牛乳をかけて食べてました。こういうところでも、各家庭の差ってあるんだ。面白い。(つか、もしかして私の実母のオートミールの作り方のほうが異端? でも牛乳で煮込むとタンパク質が固まってモロモロが出ませんか? いや、オートミールそのものがモロモロな感じなので、あんまり関係ないのか?)

さて、ちょうどこれ読んだ数日後に近所の八百屋さんでカブが安かったので、ツレさんのレシピで「かぶのマリネ」を作ってみました。漬け込んだカブに粉チーズをかけるというのが、ワタシ的には「大丈夫か?」という感じで、食卓にはかけずに出して「よかったらレシピどおりにかけて試してみて」と言ったのですが、意外や意外、私より味覚が保守的なはずの同居人A氏にも、チーズありのほうが好評。

ただ、A氏はもともとちょっと「酸っぱいもの」が苦手なので、単にチーズをかけたほうが、酸味が緩和されるからというだけの理由かも。本のレシピよりも心持ち、甘めのマリネ液にしたんですけどね。A氏が酸味の強いものを敬遠しがちなので、大体いつも、我が家のサラダのドレッシングやマリネは、世間一般よりもお酢が少なめだったり甘味が強めだったりします。レモンのかわりにシークヮーサーを使うとか。同居している義母に、「お酢は身体にいいんだから、Aにはお酢のものなんかもちゃんと食べさせてね!」ってちょくちょく言われるのを免罪符として、A氏が苦手なのを知りながら、それなりに酸っぱいおかずも作るのです。実は私が食べたいから。ははは。

――そう、ツレさんと貂々さんの食生活が、おふたり固有の事情で特徴づけられて、裏でさまざまな攻防戦が繰り広げられているのと同じように、うちだって、いつのまにか私たち固有の事情や思惑が反映された味が定着してきてるんだよなあ。

どこのご家庭も、そんなものなのでは。

Posted at 2008年4月29日 19:15



All texts written by NARANO, Naomi. HOME