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2008年4月30日

Shanna Swendson "Don't Hex with Texas"

読了本 | 書籍・雑誌

Don't Hex with Texas

Ballantine Books(2008年4月)【Amazon.co.jp】

創元推理文庫から出ている<(株)魔法製作所>シリーズの4作目。タイトルからも分かるように、主人公ケイティの故郷であるテキサスの小さな町が舞台です。

もともとは、ケイティも大人になってニューヨークに出てくるまで自分の特殊な体質にまっっったく気付かずにいたほど、これまでずっと魔法的要素皆無だった田舎町で、いきなり奇妙な出来事が起こり始めます。未知の魔法使いによって悪事がおこなわれているらしいと判断したケイティは、背後にイドリスがいる可能性も考え、マーリンに連絡をとりますが、調査のためにやって来たのはもちろん……!?

前作では、オーウェンが育った家や町が出てきましたが、今度はケイティがどんな環境で生まれ育ったかが分かります。オーウェンの場合とは対照的に、とってもにぎやかな大家族。お兄さんたちは一応みんな結婚して家を出ているんだけど、全員近くに住んで職場も同じなので、奥さんや子供も加わって、かなりすごいことになってます。プライバシーを守るのも一仕事。基本的によい人たちなんですが、末っ子のケイティが都会に行ってOLとして暮らしてみたいと思った気持ちも分かるなあ。そうそう、初登場のケイティの母方のおばあちゃんが、とっても素敵(笑)。

それにしても、ケイティとオーウェン、2作目で晴れて両想いになったカップルのはずなのに、4作目でまだこんなにじれじれで、盛り上がれずにいるって、すごいよ。お互いが過度に控え目で、最後の最後になるまで間合いをはかりすぎちゃってる感じ。ケイティは自分が一人で空回りしているように感じてフラストレーションためているけれど、そしてケイティの目に映るオーウェンは仕事の鬼になってるあいだは恋愛方面では相変わらず、なかなか感情が見えない人だけど、たぶんオーウェンも3巻ラストのあれ以来、独りでぐるぐるしちゃっているんだよなあ。なぜそこで、腹を割った話し合いができない! と、こっちはやきもきしながらページをめくるわけですが、そういう性質のペアだから仕方ない。

3作目の原書が出たときに、本当は5作目も書くつもりだったけれど、4作目までしか出版社のGOサインが出なかった、というような話が著者ブログに書いてあって、もったいないなあと思っていましたが(当ブログ2007年6月の記事を参照のこと)、とりあえず、主人公たちが直接的にわずらわされていた当面の問題には本書で一応の決着がつきます。

邦訳が出るに違いない作品なのでネタばれせずにおこうと思うと、具体的に書くのが難しいのですが、今回も魔法と現代的ツールが組み合わさって引き起こされるてんやわんやが、大変、楽しゅうございました。イドリスは、ほんと「思いつき」だけは素晴らしい子なんだよなあ(笑)。そう来ましたか! って思ったもん。

ただ、シリーズ当初から最終的にはもっとスケールの大きい展開にしていくんだろうと、なんとなく予測していた部分が、結局そこまで行かずに終わっています。たとえば、あのマーリンが眠りから目覚めて現代によみがえるほどの敵にしては、やけに小物感バリバリだったイドリス(そして資金提供者だったシルヴィア)の背後で糸を引いている、黒幕の正体とか、何か大きな事情があって本当の両親から引き離されたと考えられるオーウェンの出自(そして並はずれた魔力)にまつわる秘密とかは、前の巻でも思わせぶりな記述があったはずなのに、明らかにされないままなのですよ。この辺がぜひぜひ知りたかったのに!

まあでもつまり。一応はまとまりのあるエンディングにはなっていますが、著者と出版社の条件がそろえば、ぜんぜん不自然なことなく続けられそう、続編の余地は大アリ……ってことですな!

現在、著者公式サイトのトップページからリンクされているFAQでは、少なくとも5作目までは書きたい、さらに同じキャラで新シリーズの構想もある、というような回答になっているので、まだまだ希望は捨てません!

続編さえちゃんと出るのなら、上に書いたような「謎のまま終わったこと」って、これからもしばらく読者(そして主人公)に分からないままにしておいたほうが、面白いと思うんだよね。

追記:
2009年2月に邦訳出ました。
コブの怪しい魔法使い―(株)魔法製作所 (創元推理文庫)
シャンナ・スウェンドソン『コブの怪しい魔法使い』
(訳:今泉敦子/創元推理文庫,2009年2月)
【Amazon.co.jp】

Posted at 2008年4月30日 12:51



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