« 2008年5月 | 最近 | 2008年7月 »

2008年6月30日

2008年6月に読んだものメモ

読了本 | 書籍・雑誌

うわ、もう今年も半分が終わってしまったのか! 相変わらずこのブログも放置気味で、いったい何をやっているんだかって感じですが、まあ謎の水面下活動ということにでもしておいてください(って、特にすごいことやっているわけでもないのですけれどもね)。



コリン・ホルト・ソーヤー『老人たちの生活と推理』(訳:中村有希/創元推理文庫,2000年7月/原書 Colinne Holt Sawyer "The J. Alfred Prufrock Murders" 1988)
 友達がこのシリーズを面白いと言ってて、ちょうど夫の本棚にこの1冊目があったのを思い出したので、さっそく読んでみました。ゴージャスな老人ホームに入居している女性4人が、ホームで起こった殺人事件の犯人探しに乗り出しちゃうお話。このおばあちゃんたちのキャラが、それぞれ鮮やかに描き分けられていて引き込まれます。特にメインで動きまわるアンジェラなんて、やたら神経太くて我儘で、一緒にいたら振り回されてへとへとになりそうなんですが、なぜか可愛いと思ってしまうんだよなあ。
 そして、探偵おばあちゃんたちがあれこれ調べまわっていくうちに、優雅に老後生活を送っているかのように思えた人たちの、それまで口に出されることがなかったさまざまな苦く重いバックグラウンドが明らかになってきます。そういうとこを読んでると、静かに姿勢を正したいような気持ちが湧き起こってもくるのでした。物語の範囲を超えて、いま老人と呼ばれるひとたちがその年齢に達するまでの、それぞれの人生の重みに対する、全般的な畏敬の念というか。【Amazon.co.jp】


岸本葉子『ちょっと古びたものが好き』(バジリコ,2008年3月)
 骨董屋さんで出会ったものや、お母さまから受け付いた品々に寄せて綴ったエッセイ集。「ちょっと古びた」感じのものが好きっていう感覚は、よく分かるなあ(本当に古いかどうかというより、とにかく「いかにも」な新品ピカピカ感がないってことが重要)。そしてその「ちょっと古びた」ものに思いを馳せていくうちに、それらのものが作られた時代を振り返ることにもなっていく。よそのおうちの、真っ白なレースのカーテンがたなびく応接間で、お花の描かれたティー椀(岸本さんによると「ティーカップ」と「ティー椀」は別物らしい)で紅茶をいただいた子供の頃の記憶を手繰り寄せていくうちに、あのとき同席していた、当時すでに「おばさん」だった大人たちは、みんな戦争経験者だったのだと改めて思うくだりなど、私もそういえばそうだな、と自分の親を思って改めてしみじみしたり(この「しみじみ」には、上述の『老人たちの生活と推理』の影響もあったかも)。【Amazon.co.jp】


赤木有為子『イギリスの食卓に夢中』(講談社,2007年10月)
 大学教授の旦那さまの留学に同行してイギリスに渡った著者が、そこでできたお友達に教わったイギリス家庭料理の数々。オーブンを使うものが多い。そしてどのお料理もお菓子も、とてもおいしそうに描写されてる。本書で紹介されてる、表面カリカリ、内側ほくほくのローストポテトがすっごく気に入った! 簡単だしまた作るよ!
 この著者の人、なんか好きだなあ。「おっとり」と「しっかり」の配分がよい感じで。イギリスへの入国手続きでの受け答えを間違えて牢屋に入ってしまった(!)なんてことをあっけらかんと書いていらっしゃいますが、きっとこういう屈託のない人のほうが、なんでもすんなりと受け止めて、異国での生活からいろんなものを吸収して、楽しく過ごせるのだと思います。ローストビーフの章などでは、お友達が特別に教えてくれた家族だけに引き継がれる「秘伝のレシピ」なんてのを、本に書いちゃっていいんだろうかとちょっとドキドキしましたが(笑)。掲載されているのはさらにアレンジした、赤木さんのオリジナルかもしれませんね。
 イギリスのアップルパイには、シナモンではなくクローブを入れるのが定番って、この本で初めて知った! 本書では、赤木さん独自のレシピとしてシナモンとクローブを両方入れています。【Amazon.co.jp】


桜庭一樹『荒野』(文藝春秋,2008年5月/第1部・第2部親本:ファミ通文庫『荒野の恋』,2005・2006年)
 3部作と銘打ちつつも、ライトノベル文庫レーベルから2006年に第2部が出たあと、ずっと続きが出ていなかった『荒野の恋』(当時の感想)が、リライトされてようやく完結(ただし単行本で)。リライト版も、1冊にまとまりはしましたが、3部構成です。一応、改めて第1部から順番に読みました。
 ああ、こう持ってきたのか……。実は、文庫版の第2部あとがきで「第3部では主人公たちが17歳になっている予定」というのを読んだときには(実際には、第3部の冒頭でヒロインの荒野は15歳)、この子たち自身の恋愛が公の場に引きずり出されて嵐が吹き荒れるような展開を予想していました(再婚者の連れ子同士という、現実に即して考えるとけっこうとやかく言われそうな関係なので)。しかし結局、少女と少年の関係は、周囲の大人たちのどろどろした色恋沙汰からは隔離されて宝物のように守られたまま、ひっそりと純粋なままに置かれていて。先の2つの章の流れからそのままつながった。基本的な読後感は、新たに付け加えられた第3部を読んでも、あまり変化しませんでした。
 こういった物語のなかで、「おとな」になることを、即「少女」から「おんな」になることと結びつけられると、いつもどこかで、すとんと納得する気持ちと、しんとした諦めのような気持ちと、とらえどころのないかすかな反発心が、同時に湧いてくるのだけれど、第1部が始まる前の冒頭にも書かれているように、「少女」もまた、ずっと、いるのだ。どこかに。【Amazon.co.jp】


香山リカ『精神科医ですがわりと人間が苦手です』(大和出版,2008年3月)
 初出は毎日新聞「ココロの万華鏡」2006年5月9日〜2007年10月25日。精神科医としての日常を題材にした新聞の連載コラムということで、1つ1つの文章が短く、内容的にも1つ1つの話題にあまり深く突っ込むことなく終わっているので、わりと気軽に読める感じ。
 飛行機や新幹線で「お医者様はいませんか?」とアナウンスが流れたときうろたえてしまうのが嫌で救急救命の講習会に行くという話で、そうかココロを診るのが仕事のお医者さんだとそんな葛藤が……でもなんか分かるような気がする、と妙な親近感が湧きました。あと、香山先生はちょくちょく自分のことを脱力系だとか落ちこぼれだったとか不真面目だとかおっしゃるけど、そういうふうに、ガチガチに固まらないでガス抜きをしている自分をいちいち意識していること自体が、根っこのとこでは真面目な人だなーという印象。【Amazon.co.jp】


益田ミリ『最初の、ひとくち』(世界文化社,2007年10月)
 食べ物にまつわる、いろんな思い出を綴ったエッセイ集。1歳違いで、同じ大阪生まれの著者だから、子供の頃のお話なんかはかなり共通部分が多いのではないかなあ、と期待していたのですが、そうでもなく、そうかやっぱり世代や地域に関係なく、人それぞれなのね、と。まあ、当たり前と言えば当たり前のことなんですけどね。
 特にお菓子関連では、ご家族と一緒に盛りあがって食べたお話が多く、少し羨ましかったりしました。益田さんが小さい頃にお母さんやお父さんに買ってもらったお菓子の多くは、私がスーパーなどで眺めるだけに終わったものだったりします(大きくなってからの一時期、子供の頃の渇望感を埋めるように自腹で市販のスナック菓子を買いまくったけど、もともと超絶美味ってものでもないし、一人で黙々と食べてもそんな楽しくないんだよね)。【Amazon.co.jp】


以下、漫画本。

益田ミリ『すーちゃん』(幻冬舎,2006年4月)
 チェーン系カフェで働く三十代独身の主人公「すーちゃん」とお友達の営業OL「まいちゃん」を中心に、淡々と綴られる毎日のあれこれ。シンプルな描線のほのぼのとした絵柄に油断していると、ものすごく善良ってわけでもないけど別に悪い人でもない、無難に世間を渡っているはずのすーちゃんのモノローグに、ときおりさらっと「毒」が混じっていて、ハッとします。でも、こういう心の動きって、たしかにあるよなあ(少なくとも私は)。うだうだしたり、それでも前向きになったり、前向きになっても現実の状況はさほど大きくは変わっていなかったり……そういうのを重ねながら、みんなどこかで頑張っているんだね、というようなことをぼんやりと考えてしまうのでした。【Amazon.co.jp】

Posted at 22:21 | 個別リンク用URL | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2008年5月 | 最近 | 2008年7月 »


Generated by Movable Type  

All texts written by NARANO, Naomi.