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2008年7月30日

夏樹静子『腰痛放浪記 椅子がこわい』

読了本 | 書籍・雑誌

腰痛放浪記 椅子がこわい

新潮文庫(2008年3月/2003年8月/親本:『椅子がこわい 私の腰痛放浪記』文藝春秋,1997年6月)【Amazon.co.jp】

売れっ子作家として充実の毎日を送っていた著者が、ある時期から腰痛に苦しむようになる。しかもどんな検査をしても決定的な原因は分からず、情報を集めまくり人脈を駆使し病院を渡り歩いて多種多様な治療を試しても、症状は一向によくならず、ひたすら激化するばかり。

とうとう、お医者さんたちから「心因性」の痛みかもしれないと示唆されるに至っても、著者はどうしても納得することができません。自分はどちらかというと明るく精神的にタフなタイプだし、この痛みさえなければ仕事も順調でまだまだ書きたいことがたくさんある、やる気満々の状態だった。身体に不調が出るほどのストレスがあったとは考えにくい。そもそも心の問題だけで、ここまで激烈な痛みが出るものなのか? やはりこれは、現代医学ではまだ発見できないタイプの、未知の病なのではないか?

実際にまだ回復しておらず、先が見えない時期に書いた文章が収録されてる前半部分は、もう本当に苦しみが克明に伝わってきて、読んでるだけでも痛みと絶望がこちらに移ってきそうでした。とことん強烈な腰痛って、本当に生活が成り立たなくなるほど辛いのだということが、経験のない私にも、叩き込まれるように追体験できました。そして、納得できていないまま、心療内科の先生のもとでの治療を始め、治療の有効性に対する疑いをストレートにぶつけていくやりとりの緊迫感と言ったら。

ところが、このやりとりを続けるうちに結局、著者の腰痛は、なんと快方に向かってしまうのです。痛みの描写のインパクトが強いだけに、「そんなにはっきりと感じられる強烈な身体上の症状が、『心』によって作りだされてしまっていたなんて!」と、読んでるこちらもびっくりです。

精神的な弱さ云々じゃなくて、「この私にかぎって心因性なんてあり得ない!」と、自分の「直感」を信じ続けてしまう意志の強さこそが、危険なのかも。著名な作家である夏樹さんが、こういう本を書いて、ご自身の頑なだった頃のことをさらけ出し、こういう事例もあるのだと広く世間に知らしめてくださったのは、とても有意義なことなのではないかと思いました。ずっと売れてるみたいだものね、この本。

Posted at 2008年7月30日 20:25



All texts written by NARANO, Naomi. HOME