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2008年11月28日

小倉千加子『オンナらしさ入門(笑)』

読了本 | 書籍・雑誌

オンナらしさ入門(笑)


理論社(2007年4月)
【Amazon.co.jp】

ヤングアダルト世代を対象とした人生指南書(?)「よりみちパン!セ」というシリーズのなかの1冊。取り上げられているのは、いわゆるジェンダー論ってやつですね。

うーん、これは、どうなんだろうなあ。この世に「女の子」として生まれたその瞬間から、親や世間によって「男の子」とは違う道へと、意識的そして無意識的に誘導されていく女の子たち。そしてまた、子どもに対して真っ先に影響力を行使する「お母さん」も、かつては同じような誘導を受けてきた「女の子」だったのだ……。

なんかねえ、すごく息苦しい。女の子が、周囲から押し付けられただけじゃない、本心での欲求を満たすためには、はねのけなければならないものが山積みなんだよってことを、執拗に執拗に言い募られている感じ。最後の最後になって、はねのけるという選択肢はちゃんと可能なんだよって言ってはくれるものの、そこまでの道のりが、これ読んでると、あまりにも遠く感じられてしまう。

理屈として、そういった「世の中のしくみ」を若いうちに知っておくことは、たしかに武器にはなるかもしれないんだけど、諸刃の剣って気がするんだよなー。

立ちはだかるものの正体を知らないでいるからこそ、がんじがらめになる前に果敢に挑戦できるって面もあるわけで。大人になってからなら、自分なりにいろいろ見極めをつけて折り合いもつけられるんじゃないかって思うけど(その結果、ある意味、妥協した生き方になっちゃうとしても、それはそれで自分の選択ということで)、私が10代の頃にこれ読んでたら、勇気づけられるよりもまず、大人になっていくにつれて直面しなければならないとされる、世代を超えて連綿と受け継がれてきた問題のあまりの根深さを突きつけられた結果、まずは絶望して身動きとれなくなっていたんじゃないか、みたいな気がします。

自分に娘がいたとして、心が柔らかいうちにこれを読んでほしいかというと、微妙。その子の資質によるよね。うまく消化できさえすれば、社会に出る前の段階でこういった視点もあるって明確に言語化されたかたちで認識しておくことによって戦略的に人生を歩めるのかもしれない。

Posted at 2008年11月28日 01:37

コメント

この本を読んで、私は酷くショックを受けました。
このコメントが、誹謗中傷や荒らしであるならば消してくれて構いません。
息苦しい、知らないからこそ立ち向かえる、というお言葉に共感しました。
私がショックを受けたのは、この本の言葉と、それにショックを受けた自分です。
この本の86ページ『わたしの代わりでいて、○○クン!』というところです。
ほかにも納得しがたいところは多かったですが、ここが一番でした。
私はジャニーズが大好きです。というかイケメン全般が大好きです。
だから、余計にでしょうか?
『男の子なのに、女の子みたいに髪を伸ばしたり、女の子以上にオシャレして、小学生のときのあなたみたいに軽々とダンスして、歌って踊ってくれます』
それ自体が悪いことではありません。
寧ろ、そこまでしているからこそ、あんなにも惹きつけられ、魅せられる。わかっています。これでも女子の端くれ。
でも、ねえ?
『大勢の女子がジャニーズに熱狂するとき、女子は自分の体を鏡で眺めることから自由になれます。
ジャニーズこそ、鏡に映った理想のあなただからです』
なわけがない。
馬鹿じゃないのか。私は本気で憤りました。もう、大きく表紙についている(笑)では収まらないほどの侮蔑。そう思いました。
『女子のようであって、女子ではない。男子であって、男子のようではない』
彼らにだって自我はある。たとえ人形のように画面の向こうにいていても、男子としての自我は存在します。
これは、私たちだけでなく、彼らすら侮辱したのではないでしょうか?
『ジャニーズは、女子の代替の存在です』
もう耐えられませんでした。信じたくないと思えば思うほど、テレビで彼らを見ることすら怖く恐ろしいものになりました。無論、ここにこんな風に書いたっていいことはありません。が、誰かに知ってほしかったのです。
だって、そうでしょう?私は、私は自分の理想に、憧れと恋愛の入り混じったような感情を抱き続けていたなんて!
私だけはそんな風に見ていない、とも思っていました。ですから、ショックを受けた自分はそう思っていたということです。
あれ以来、私は彼らにいまだ怯えています。
もう管理人さんはここにはいないので、少し安心して書き込めました。
今度、できればそちらに伺いますのでその時は…そのときは、少しでいいので話していただけないでしょうか?

では。失礼なことをして申し訳ありませんでした。

投稿者 不破 夕宇 : 2011年5月 8日 00:27



こんばんは。えっと、いただいたコメントは「公開」にしちゃっていいのかな? 非公開のほうがよければ、またおっしゃってくださいね。

更新停止後のブログだからこそ書き込めたということなら、お返事を書くこと自体、ご希望じゃないかもしれないなーと思いつつ書いてます。

……とか言いつつ、じつはどうお返事しようか迷っているのですけれど。

私自身も、現実の人間関係とはまったく関係ないところで、ずっとずっと応援している男性芸能人がいるので、小倉先生のおっしゃりように反発したりショックを受けたりしたお気持ちは分かります。

でね、私は思うんですけど。

もしかしてもしかしたら、直に知ってるわけでもない素敵なひとを好きでいる気持ちには、たしかに、小倉先生の言うような自己投影的な部分はどこかにあるのかもしれないけど。ないとは言い切れないのかもしれないけど。それでも、とっさに直感的に「違う」と思ったのなら、それはきっと、違ってもいるんですよ。

なにか(だれか)を好きでいる理由なんて、もうほんとに、人それぞれで、ものすごくいろんな要素が絡み合ってて普通なのでは。

小倉先生の言葉をきっかけとして、その「違う」部分について考えてみるのも一興かもしれません。

あと、小倉先生のほかのご著書を読むと分かるんですけど、先生は、じつは宝塚ファンでいらっしゃるのです。だから、ほかの女性が異性の芸能人を応援する気持ちを、ご自分が宝塚の女性スターを応援する気持ちの延長線に、ついつい置いてしまいがちな面もあったんじゃないかな、なんてことも、勝手に思っています。

そして、小倉先生ご自身が、この本の読み手として想定している若いお嬢さんがたに伝えたい内容と、ちょうど思いついた「ジャニーズ=理想の自分」理論が、うまいこと噛み合ったので、そこにスポットライト当てて強調した文章を組み立てちゃったんじゃないかな、とも。まあ、勝手に思っているだけなので、ぜんぜん違うかもしれないですけどね。

それからですね。たとえだれかのファンでいることが、突き詰めると代替行為であったとしたって。それ、悪いことなの? っていう気持ちもあります。彼らを見ていることで、一時的にでも現実の嫌なことを忘れられて心が軽くなったり、力が湧いて前向きに生きていけたりするなら、いまはそのことに素直に感謝してファンでいればいいんじゃないの? ……って。

私たちにできないことを、厳しいトレーニングやめんどくさい美容ケアなどの末に軽々とやって見せてくれる彼らに対して、尊敬や憧れの気持ちを抱くことは、別に彼らにとっても失礼ではないんじゃないかしら。

この本をお書きになった小倉先生は、長年、教員として若い女の子たちを見てきて、社会的に規定されてる「オンナらしさ」という枠組みにとらわれて本来の資質を押し込められてもがいている子を見かけるたびに、もどかしい思いをされてきてたのだろうから、どうしても若いひと向けの本だと

「あなたには見えないかもしれないけど、そこにじつは枠があるんだよ! ちゃんと見据えて乗り越えて!」

と叱咤激励的に、やたらショッキングな言葉を使いたくなってしまう面はあるんじゃないか、と僭越ながら思っています。

読み手側は、いきなりなにもかも真っ正面から受け止めなくても、「ああ、こういう考え方もあるのか」という感じで、まずは自分自身のスタンスを模索する際に参考にするくらいでもいいんじゃないでしょうか。いつかそのうち、「ああやっぱり、本に書いてあったことは正しかった」と実感するかもしれないし、「やっぱり違うなー」と思うかもしれないし、それは読み手側の自由ってことで。

って、偉そうなこと言っちゃってすみません〜。

更新停止後のこっちのブログも、コメント欄は定期的にチェックしてるので、こっちでもあっちでも、書き込みOKですよ〜(時々、お返事が遅くなっちゃうかもしれないけど)。

投稿者 ならの : 2011年5月 8日 21:18



公開してくださっていいですよ。
というか、こんな迷惑コメントを公開してくれて非常にうれしいです。
お返事も有難う御座います。
返事が遅くなってすみません。

私は学生なのですが、同級生を見ていると、女らしさという枠に「押し込められてもがいている」というよりは「甘んじている」と取れることがあります。
そこはやはり主観の違いなのでしょうね。
でもそうだとすると、綺麗な上澄みを求める教師という職業は、案外可哀そうなものなのかもしれません。
美しい部分しか見られない、それを見るために自分の黒い部分を忘れてしまう。
よく、「昔に戻りたい」という人を多く見かけますが、そういう人の半分くらいは実は現状に満足しているんではないでしょうか?

私はこれまで、彼らジャニーズというもの全般を「自分とは違う、光の当たる世界の住人」と思っていました。
だからでしょうか? 自分の理想と言われてしまったときはショックでした。
たまにいるそうですね、ジャニーズに憧れて芸能界入りする人って。
そんな風に見ててもいいんでしょうか?
漸く自分の中で確信が持てた気がします。管理人さんのおかげですね♪

管理人さんのお考えは非常に共感できるもので、読んでいてとても楽しいのですが、私はあまり文章がうまくはないのでコメントに沿っていない話をしてしまうかもしれません…。
それでも良ければ、今後ともよろしくお願いします。
エラそうなコメントではなかったし、心も軽くなったし、うれしかったですよ!!

投稿者 不破 夕宇 : 2011年5月10日 20:51



こんにちは。おおー、学生さんなのですね、お若いのですね。
じゃあ私、こんな軽薄な文体でブログ書いたりしてますが、不破さんのお母さんの年代かもしれませんね(苦笑)。


> 「甘んじている」と取れることがあります。

うーん、そうですね。ただ、私の目から見ると、たとえばそうやって、「女の子として、楽そうな生き方に流れている」ひとのなかでも、そのことに自覚的なひとと、そうじゃないひとがいると思うんですよ。

一見「甘んじてる」ように見えるひとたちに、それは本当にあなたが望んで選んだ生き方なの、それとも、生まれて以来ずっと周囲から入ってくる情報や身近な大人たちの価値観が無意識下に刷り込まれてしまって、それがリスクの少ない、賢い生き方だから良いんだと思い込まされているの?って、尋ねてみたくなるような。

小倉先生のご著書のなかにもそういう「甘んじている」と見えるかもしれない女の子たちが例として出てくることありますけど。

でも、その「甘んじている」ひとたちに対しても、小倉先生のまなざしはやさしいな、と思ったりします。行間に「諦め」のようなものを感じることもたまにありますけど。それが自分の適性に合ってると納得してて、周囲と折り合いがついて幸せなら、それでいいんじゃない、と。

ただその一方で、諦めきれない部分では、無自覚な人たちに対して「少しでも引っかかるところがあるなら、よかったらいろいろ考えてみて」と問題提示もしてるんじゃないでしょうか。

だから、分析はしてみせるけど(そして分析された側は、場合によってはむっとするかもしれないけど)、決して分析対象を「いい/悪い」で評価したり、ああしろこうしろと指示したりはしていないと思うんです。

そういうところ、私は嫌いではないです。私も、決して理想一直線で生きてこれたわけでなく、あーでもないこーでもないとぐるぐる考えて試行錯誤しながらの人生ですしね(まだまだ試行錯誤は続きそう)。

ほかのエッセイなどを読んでると、卒業生の人たちからも頻繁に連絡があったりするようで、きっと、生徒と真摯に向き合ってくれて、慕われてる先生なんじゃないかなー、と想像してます。

小倉先生って、1952年生まれでいらっしゃるんですよね。で、数年前まではずっと大学の先生として勤務しながら著書を出しておられたんですよね。

この年代の女性が、ずっと学問を続けて、大学教授にまでなるのって、どれだけ大変なことだっただろう、ということを時々考えます。

先生よりずっとあとの時代に頃に生まれた私でさえ、学生時代には「女の子を4年生の大学に通わせるとは、親御さんはずいぶん勇気がありましたね」みたいなことを周囲の一部の大人に言われましたから。

仕事を持つことに対する世間の意識ひとつとっても、男女雇用機会均等法が1985年、いまに近いかたちに改正されたのが1999年……と考えていくと、小倉先生は、自分が選んだ生き方を守るために、ずっとキレイゴトではすまないプレッシャーに耐えて来られたんじゃないかなあって。

そういうふうに多くの人たちが戦い続けてくださったおかげで、私たち後輩女性の生き方に徐々に選択肢が増えて、「それぞれの自分らしさ」なんてものも追求したければできるようになってきたんだという意味で、上の世代のかたがたに対しては、敬意を忘れてはならないな、と思っています。おっしゃることすべてに、うなずけはしなくても。

……って、私のほうが脱線気味ですね。じつは『オンナらしさ入門(笑)』は、ブログ記事を書いた2008年以来、再読してなくて、本ももう手元にはないんで、鮮明には内容を思い出せなくて。小倉先生のご著書は何冊か読んでいるので、その全体的なイメージであれこれ勝手なことを言ってます、すみません。

まあ、私の言うことも、話半分に読んどいてください(笑)。

投稿者 ならの : 2011年5月12日 11:37





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