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2008年11月30日

妹尾ゆふ子『翼の帰る処』上・下

読了本 | 書籍・雑誌

翼の帰る処(上)翼の帰る処(下)

〈上〉幻冬舎 幻狼ファンタジアノベルス(2008年10月)
上【Amazon.co.jp】

〈下〉幻冬舎 幻狼ファンタジアノベルス(2008年11月)
下【Amazon.co.jp】

ここ最近、ノベライズのお仕事が続いていた妹尾さんの、久々のオリジナル作品。旧作ともつながりがあると思われる別世界ものファンタジー。しかも上下2巻。嬉しい。

相変わらず、“こちら側”とは異なる架空の世界における、自然の条理や社会のなりたちの設定と描写がとても緻密で、読み進むにつれてあらわになってくるそれらの構造に胸が躍ります。人やその他の生き物の気配、空気の温度や地面の匂いまでが、ふっ……と活字から立ちのぼってきて鮮明に知覚されるような。

そして今回は、主人公が……「隠居願望のある病弱な童顔36歳」というプロフィールからは想像できないくらいにすっごい素敵でびっくり。時に空気を読まずに正論吐いちゃう朴念仁で、自分に対する周囲の評価にはめいっぱい鈍感で、できれば淡々と平凡に暮らしていたくて、なのに自分の目に入るトラブルを見過ごせなくて、しかもそれを実際なんとかできちゃうくらいに頭が回って有能な人。だけどその過程ですぐに発熱してぶったおれちゃうわ妙に生への執着が薄いわで、結局まわりをハラハラさせちゃう人。飄々としてどっか普通と感覚がズレてるこの人の視点で物語が進むので、シリアスな展開の中でも、ぷはっと脱力して笑ってしまう個所がちょこちょこ入って、緩急がついています。

彼が副官としてサポートする、気性のまっすぐな男まさりの皇女さま14歳も可愛らしく、また苛烈な運命に立ち向かおうとする姿が凛々しくカッコいい。年齢差があるだけに、今後もわかりやすい関係にははまり込みにくいかなあとも思いますが、このふたりのたしかな信頼関係と、ときおり流れる微妙であいまいな空気も微笑ましい。

すでに続編も予定されているようなので、この人たちがどういう道をたどるのか、非常に楽しみ。

Posted at 2008年11月30日 08:41



All texts written by NARANO, Naomi. HOME