覚書目次前へ次へ虫干し部屋 indexHOME

指輪映画私的覚書〜「旅の仲間」篇〜 [2] (2002.3.16)

2. 全般的感想


 観てすぐのときに日記に書いた感想ともダブるのですが、結論としては、大満足。なによりも、「ああ、この映画を作った人は『指輪物語』が本当に好きなんだなあ」と心の底から信じられる映画であったことが、嬉しい。3 時間が、あっという間でした。いつまでもこの世界に浸っていたかった。


 世界の作り込みは、とにかく素晴らしいです。とりわけ、ホビット庄! まだ冒険が始まる前の、主人公たちの平和な暮らしの美しさ。原作の描写そのままの、ホビット穴の丸いドア! 本を読んだときは真ん中にノブのある丸いドアって、本当に開け閉めできるんかしら、と疑問でしたが、ちゃんとドアとして機能してましたねえ。ここを出て行かねばならなくなるその後の展開を知っていると、涙さえ浮かんでくるほどの、幸福感。また、旅先で遭遇するモリアの地下宮殿やアルゴナスの門の石像などのスケール。背景となるロケ地の雄大さ。大きなスクリーンで見る価値はあります。


 敵側のオークやウルク=ハイなどは、さすがにホラー映画出身の監督、というかんじの気持ち悪さです。黒の乗り手(映画では「ブラックライダー」)の、顔なき顔の不気味さ。指輪を嵌めてしまったフロドにだけ見える、過去の王たちのぼんやりとした姿の怖さ。バルログのど迫力(バルログって、いまひとつ本を読んでも造形が分かってなかった)。一方で、エルフ関係の描写には、ちょっと物足りなさを感じました。エルフそのものも、エルフの国のデザインも。もっともっと「人外」の儚さと気高さと美しさが欲しい。もっとも、この辺りはたとえどんなふうに提示されても、ビジュアルには不満を覚えたかもしれません。


 原作は、ホビットたちが小さな足を一歩一歩、踏みしめて進んでいく旅の過程を追体験するような語り口でした。食事をしたり歌をうたったりといった、旅の合間にホっと一息つく部分も印象深く思い出されます。それに対して映画は冒険に次ぐ冒険で、息をつく暇もなく観客を引っ張っていきます。原作ファンとしては、好きなシーンの数々がカットされたことを残念に感じる気持ちはありますが、原作を読んでいない人も観ることを考えると、正しいアレンジであったと思います。なんせ、これだけカットしても 3 時間ですし。


 反面、展開を急ぐあまり、原作を読んでない人には説明不足であろうと感じた部分や、不自然なほどあっけなく場面転換すると感じた部分もありました。


 しかし、よーく見るとあちこちで、直接的には語られていないけど画面から分かる情報を総合すると納得できる事柄があったり、原作ファンにだけ分かるような小細工があったりします。そういうのを確認するために、何度も観たくなってしまう、心憎い映画ではあります。


→ 3. キャラクター〜ホビット〜

覚書目次虫干し部屋 indexHOME