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指輪映画私的覚書〜「旅の仲間」篇〜 [4] (2002.3.19)

4. キャラクター〜ボロミア(ショーン・ビーン)〜


 冥王が復活したモルドールと国境を接する、王なき国ゴンドールの執政の跡取息子。目立った言動だけをなぞるとただの強引で嫌なヤツにもなりかねないボロミアを、どんなふうに描いてくれるのかは、密かに心配でした。


 旅の仲間のうちで一番、切羽詰まって「ちから」を求めている人です。自身の欲のためではなく、国と民を守るために。それでも、会議で指輪を棄却することが決まったからには(たとえ心の奥底では納得が行っていなくとも)ぐっとこらえて一礼し、決定に従って通常の武器と人間の力だけで戦う決心ができる人です。一行のリーダー役はガンダルフとアラゴルンになってしまったけれど、常に「護り手」としての自分を認識しているせいか、周囲の弱いものに気配りのできる人です(それは「自分は強者である」という傲慢さの裏返しかもしれないのですが)。カラズラスの雪山で、埋もれてへばったホビットたちに最初に気付いて、ガンダルフに「こんなことをしていては小さい人たちは……」と訴えてくれるのも、後にアラゴルンに「小さい方々を運んでさしあげよう」と提案してくれるのも、彼でした。映画ではこのセリフはありませんでしたが。原作を読んだときには、この雪山周辺の記述で彼を好きになりました。頼れる兄貴じゃん!


 でも彼は賢者ガンダルフや、酸いも甘いも噛み分けたアラゴルン(という表現はどうよ)と違って心に隙があるし、指輪の恐ろしさを本当には理解していません。要するに、ふつうの人なのね。そしてその直球勝負な精神ゆえに、指輪に惹かれて歪んでしまいます。……す、すみません。つい原作ベースで語ってしまいました。ははは。


 映画の話をしないといけませんね。映画のボロミア。――ありがとうピーター・ジャクソン!! ありがとうショーン・ビーン!!! 心配は無用でした。少なくともこの第 1 部は、もうボロミアのための映画と言っても過言ではないでしょう!(←過言かも)「ほんとはいいヤツ」な部分が、原作以上に強調されてました。


 特に、原作ではピピンがボロミアを好いていた、というような記述がちょこっとあるだけだったのが、映画では具体的にメリー&ピピンと仲良しな映像がさりげなく沢山あって。剣の稽古をつけているときの笑顔、いいよね。雪山で(例のセリフこそないけど)二人を抱えているのは言わずもがな、モリアの崩れた階段では両脇にメリーとピピンを横抱きにしてジャーンプ!(アラゴルンはサムをぶん投げて渡らせたのに!)河下りでも、舟にはこのコンビと一緒の三人乗りで。


 アラゴルンに対しても、はじめは「なんだこの胡散臭いヤツは」というかんじに接していたのが、旅をするうちにちゃんと仲間として接するようになり、ロリアンでは「共にゴンドールへ」とまで発言するようになる。このときはまだ、本気でアラゴルンを自分の上に立つ王と認めているというわけでは、なかったと思いますが。ただ国民たちが我らを "Lords of Gondor" と言って迎えるだろう、と。"Lords" って複数形(に、聞こえた)だもの。自分とアラゴルンの二人で、危機に瀕したゴンドールを救うために帰ることができれば、という願いから出た言葉でしょう。(ボロミアとアラゴルンのやりとりは、DVD で発売される予定のロング・バージョンでは増えているらしいので、楽しみ。この二人が徐々に認め合うようになっていく過程は、もう少し丁寧にやってほしいなあ、と思っていましたから。)


 こういう描写の積み重ねがあるからこそ、彼の最期が、とても哀しい。原作では、最初から腹に一物あって一人考え事をするフロドに会いに行くボロミアですが、映画では薪を集めていて偶然出会い、「一人でいるのは危ないよ」と言葉を交わしているうちにキレてしまうというシチュエーションです。これもまた、原作よりも「本来は気のいい兄貴」度がアップしてるっぽくて。ほかの皆が「英気を養って」とか言いながらぐだぐだしているときに、一人黙々と薪を拾いに出ていたボロミア兄貴(涙)。結局、言ってはならないことをフロドに言ってしまって、ハッと我に返る。その愕然とした表情。そして、敵の来襲。


 激情にかられて「小さい人など皆呪われてしまえ」と口走った自分を打ち消すかのように、おとりとなってフロドを逃がした(ということをボロミアが知っていたかどうかは分かりませんが)メリーとピピンを救うため、たった一人で、身体に何本もの矢を受けながら何度でも立ち上がって闘うボロミア。ついに動けなくなったボロミアを見て、敵いっこないのに剣を抜き、やけっぱちに雄叫びを上げながら敵に突撃し、あっさり捕まってしまうメリーとピピン。ここで、今までの「仲良しシーン」の積み重ねが効いてきます。泣くよもうこれは。すっげーベタだよなー、と理性では思いながら、泣いちゃうよ。


 そしてアラゴルンとの、最後の会話。"My brother, ...My King..." あうあうあう。この辺については、とにかく感無量なので、とりあえずはなにも言いますまい。もうこの文章、充分長いし(なんでこう、長くなるかな)。


 もともと良いキャラだなあ、と思っていたボロミアですが、映画を見てからしばらくは、彼の最期の辺り、原作本も涙なくしては読み返せない状態でした。原作でアラゴルンとレゴラスが即興で作る追悼歌、すごく切ないよねえ。(これも前から好きな歌でしたが、Tolkien Ensemble の CD に収録されたメロディー付きのバージョンを聴いてからは、一番好きな歌になりました。追悼歌で「好き」というのも変ですか。)


 が。そういうこととは別に。なぜか最近、我が家ではよそ様からのいただきものがあったりするたびに、「It's a gift !」、「さずかりものだ!」と、握りこぶしを作りガッツポーズするのが、夫婦間のお約束となっております。イヤな夫婦だな。ごめんボロミア兄貴……。(ついでに、ことあるごとに両手を上げて「あかつきのように!」と叫ぶのも流行ってます。ごめんガラ様……。)



→ 5. キャラクター〜アラゴルン〜

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