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指輪映画私的覚書〜「旅の仲間」篇〜 [5] (2002.3.23)

5. キャラクター〜アラゴルン(ヴィゴ・モーテンセン)〜


 ゴンドールの失われた王、イシルデュアの末裔であるアラソルンの子アラゴルン 2 世。エルフの養い子エステル。野伏の長。大股歩きの Strider。和訳版では「馳夫」の名で知られています。


 原作の彼、かっこいいよねえ(溜め息)。戦士で癒し手。屈強さと思慮深さを兼ね備えたオトナの男。今でこそ、前述のように「ボロミアもいいキャラだよなあ」と認識する私ですが、初めて読んだ小学生のときには、アラゴルンが一番でした。「なんでこの人が主人公じゃないの?」って思ってました(笑)。いや、歳をとるにつれ、こういう「いわゆるヒーロー」が主役じゃないとこも、この物語のよさなのだと分かってくるのですが。あと当時のとんでもない感想では「Strider なんて、ヘンなのー。Aragorn のほうが断然素敵な名前なんだから毎回こっちで名乗ってほしいなあ」とかもあったな(そ、それではストーリー上かなり不都合が……)。まあ、ガキだったということで。ついでに白状しちゃうと、その頃はベタベタのアメリカ英語発音しか知らないから、もちろん「あらごーん」と発音していましたよ! スメアゴルは「すみーごー」だしボロミアは「ぼろむぁー」さっ。ふははは。ひらがなで書くと間抜けさ倍増。


 さて。今回の映画では、アラゴルンの人物設定がストーリーの根幹にかかわる部分で大きく変更されています。原作では最初からイシルデュアの折れたる剣を所持し、いずれゴンドールに帰還する「王たる者」としての自覚を有している彼ですが、どうやら映画では、先祖伝来の剣を裂け谷に置きっぱなしで放浪してます。


 もしかして彼も、原作設定よりも若いのかしら? 映画の彼は、なんだか外見どおりの年齢なかんじ(原作では長寿の民の血が入ってるから元気だけど 80 歳超えてるんじゃなかったっけ)。百戦錬磨の剣士であることはたしかなようですが、内面では色々悩んでます。しかも、裂け谷でのアルウェンとの会話では「指輪の魔力に抵抗できなかった先祖イシルデュアの血が自分にも流れている」ことを、けっこう気にしています。


 こういう設定の変更とか、あるいは前述のようにボロミアというキャラクターが非常に丁寧に描かれていたりすることから見えてくるのは、どうもこの映画でピーター・ジャクソンは、「指輪の誘惑との戦い」ということを、重要なテーマとして特に強調しているのだな、ということです。ひとの心を蝕む指輪の力が、原作よりも「あからさま」な印象です。原作の何事もなく過ぎた 17 年間が省略されてるのもあって、さくさく力振るっちゃってるように見えます。しかしまた、「映画」という枠組みに収めるという観点から見た場合には、これも 1 つの判断かな、という気もします。すべての要素を「指輪の試練」という中核の周りに配置していくことによる、脚本作り。原作はとにかく淡々と「歴史の 1 ページ」というかんじで、『指輪』という物語に収まりきっていない部分ともだだーっと地続きだから、あの雰囲気を映画でやるのは辛いだろうし。


 なんにせよ、アラゴルンのキャラクターが第 1 部の時点では「まだ自分の運命に正面から向き合っていない者」に変更されていたことで、ボロミアの死に際の言葉もより重い意味を持つことになったし(ボロミア贔屓の欲目か?)、第 2 部以降の展開も(良かれ悪しかれ)よりダイナミックになってくることでしょう。アルウェンの果たす役割も(原作ファンとしては微妙だが、「追補編」時代の要素を本編に移動させていると考えれば)さらにありそうかな?


 しかしそれにしても、映画のアラゴルン。原作設定より若そうに見えることはさておき、やはりかっこよかった。なんちゅうか、危うさが残っている分、原作のイメージよりもいい意味で「色っぽい」かっこよさでしたね。特に戦ってるときの凄惨な表情。ヒゲ面でも泥まみれ汗まみれ血糊付きでも、なぜか素敵度アップ。どんなに激しい戦闘シーンの後でも汗もかかず髪の毛一筋乱れない涼やかなエルフ王子とは、好対照でした。


→6. キャラクター〜レゴラス〜

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