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指輪映画私的覚書〜「旅の仲間」篇〜 [7] (2002.3.31)

7. キャラクター〜サルマン(クリストファー・リー)〜


 か、かっこいいよ……。インタビューではガンダルフをやりたかったとおっしゃっていたクリストファー・リーですが、この貫禄はサルマンでしょう。っていうか、サルマンがこんなにかっこいいなんて、映画を見て初めて知りました。


 最初にガンダルフと並んだとき、この時点では明らかに彼のほうが「魔法使いとしての格」が上なのだということが、特別なことをしているわけでもないのに、はっきり分かる。そして塔の上から呪文を唱えるときの朗々とした美声! 美声! 美声! 映画では、最初からサウロンの家来になったようなこと言ってますが、それだけでは終わるまい、と私は信じています(ドリーム)。原作どおり、冥王サウロンに協力すると見せかけつつ、究極的には自分が支配権を取るつもりで下克上狙っているはず(えーと、私はそういうふうに解釈したんだけどな、違うのかな>映画のサルマン)。


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 (4/12 追記)3 回目を観てきました。字幕版。で、ちょっと気付いたことを。前回観たときには、サルマンは完全にサウロンのしもべになったかのような印象を受けていたのですが、実はそうとも言い切れないですね? たとえば、初めてガンダルフに本性を現すシーン。字幕では「サウロンに従うのだ」でしたっけ? ここ、実際のセリフは "We must join him, Gandalf. We must join Sauron." でした。サルマン本人は、従うというよりむしろ自分とサウロンを対等に捉えているとも受け止められるのでは。原作でもサルマンは、サウロンに対し「協力」(We may join with that power)、「力添え」(for those that aided it)をするという表現を使い、「従う」という意味合いの単語は出てきません。そしていずれ指輪を自分で手にすることをほのめかし、「その時は権力もわれらに移るのだ」と言い切っています(註:ここで言われている「われら」はサルマンとガンダルフ)。これを映画脚本では "join" という 1 つの単語だけで処理したのではないか、と。〔強調は引用者による。以降も同様。〕


 さらに、パランティアでサウロンと連絡を取るシーン。ここではたしかに、"The power of Isengard is at your command..." とサウロンに対して下手に出ています。が、通信が終わったあとで部屋に入ってきたオークのセリフは "What orders from Mordor, my lord? What does the eye command?"。この "my lord" で、オークが自分の主人をサルマンであると認識していることが分かります。一方、サウロンを指す "the eye"。字幕では「御目」です。が、原作でサウロン派のオークたちが「目」に言及するときの表現は "the Great Eye"(偉大なる御目)ですね、たしか。はたして "the eye" だけで「御」というような敬いの意が込められているのかどうかは疑問です。


 そして、ウルク=ハイ誕生後のやりとり。"Whom do you serve?" "Saruman." と、ウルク=ハイに己の主人がサルマン自身であることを認めさせたあと、貴重なものを持っているホビットを攫って来い、とサウロンの思惑を超えた命令をしています。ここは原作どおり。また軍隊結成のときにも、サルマン自身を表す「白い手」のマークをオークやウルクたちに付けています。


 というわけで、最初に観たときは「従う」という字幕に引きずられましたが、やはりサルマンは第 1 部の段階でも、サウロンに協力すると見せかけつつ、実は自身のための砦を築き、ウルク=ハイ隊を育てあげて権力を掌握しようとしている、原作どおりのキャラ設定と考えてよいのではないかと、かなり確信しはじめているのです。


 ただ、噂では第 3 部で原作の例のホビット庄のアレが省略されるということなので、最期は変わってしまいそうだなあ。どうせなら個人的には、名優クリストファー・リーに相応しい、ドラマチックな去り方を希望(笑)。


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(さらに 10/1 追記)DVD 日本語版を見ました。修正後の字幕では、件の "join" の訳は、劇場公開時の「従う」から「手を組む」に変わっていました。よしよし。そうなると、今度は吹替え版の「軍門に下る」とか「配下になる」という表現が気になるなあ(笑)。ほかの部分に比べれば、ささいなことなんだけど。


→8. キャラクター〜アルウェン〜

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