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虫のいい日々 [93] (2002.4.24, Wed.)

逡巡


 先週からテレビドラマ「ゴールデンボウル」(土曜日・日本テレビ・21 時)がスタートして、金城武ファンとしては久々に気持ちが盛り上がっております。うん、今までに日本で放送された金城くん主演ドラマの中では一番いいかんじ。やっぱり金城武は複雑すぎないストーリーでカッコ付けすぎない明るいキャラっていうのが好きだな。しかしサラリーマンにあのボサボサ長髪は許されるんでしょうか?


 とか言いつつ、結局それを観終わった後は某所の定例『指輪』チャットに行ってしまったあたりが……。まだまだ「指輪の幽鬼」状態を脱することはできないようです。で、そこでもちょっと話題に上っていたのですが、現在インターネット上で "The Lord of the Rings" 日本語字幕改善要求の署名運動が展開中なので、リンクしておこう。受け付け場所は、誤訳指摘サイト 魅惑の FotR 日本字幕、それから海外ベースのものでは"Japanese Subtitles in 'The Lord of the Rings: The Fellowship of the Ring' Petition"というのも。


 この「指輪物語」映画の日本語字幕に致命的な欠陥があるという問題については、どこまで公の場で語っていいものやら、このあいだからずっと逡巡しています。って、すでに自分ちやよそんちの掲示板等でちょっと語っちゃってるけど。あ、チャットでも。


 逡巡している理由としてはまず、自分自身は最初に観たときにもさほど精神的ダメージを受けなかったというのが一つ。原作の知識があったのと、多少は英語台詞が聞き取れたのと、さらに幸か不幸か映像のめまぐるしさに付いていくのに精一杯で字幕をきちんと読んでおらず(←コドモかい)耳から入る情報を優先していたのとで、脳内補完度が異様に高かったのです。まっさらな状態で映画を観た人がどのようにあれを受け取るのかというのを客観的に把握できているかどうか自信がない。誤訳指摘サイト等を観て問題点は分かっているつもりだけど実感としては身に染みていない。(ただ、この辺(ヒラマドさん 3/16)とかこの辺(みのうらさん 4/9)とか見ていると、やはり無心に鑑賞した場合、ストーリーの流れさえ字幕によって歪められてしまっているらしいことはうかがえるし、ほかにもあれこれネット上の感想を見てみたところ、字幕に引きずられて内容を誤解したままコメントしている人が存在するのも事実。)


 それから、普段の自分が字幕と原語を比較しながら映画を観るということをほとんどしていないので、これが今回の指輪映画に特有の問題なのか、そうでないのかが見極めにくいということ。もちろん、それが見極めにくくても、「指輪映画の字幕について」特化的に語る上では問題ないのかもしれませんが、やはりその辺の事情を知ってたほうが的確なことが言えるような気がする。金城武ファンでありながら中国語まったく駄目な私の場合、普段よく観る広東語とか北京語の映画では、原語と字幕が乖離してても分からないのですよ。(日本公開されてない作品を観るときに頼らざるを得ない英語字幕は時々、英語自体がすごく変だけど。中国語圏で付いた字幕には、あきらかに英語ネイティブではない人が書いているかんじのものが結構ある。)


 しかし正直言って、一番大きいのは、自分の仕事と多少重なる部分がある問題だということでしょうね。なんか感情に任せて発言すると自分に跳ね返ってきそうで。ほら、イエス・キリストも「他人を糾弾するのは自分の目をクリアにしてからにしなさい」(正確な文言忘れた)みたいなこと言ってるしねえ。「でも字数制限とかあるし、多くの人の目に触れるものを作るのは大変な仕事ですよね」みたいな当り障りのないコメントでまとめるのが大人の態度なのかなあ、やっぱりここで私のような者があんまり熱くなると、顰蹙なのかなあ、とか。


 職域が近いと言っても、私がやってることは、映画字幕や文芸などの「物語」翻訳とはまったく異なる作業なので、ここは単なる一消費者として素直に怒っちゃってもいいのかなあ、と思ったりもするのですが。大体、翻訳でお金をもらうようになってからまだ 10 年しか経っていませんが、指輪ファン歴は 20 年以上あるわけで……。いや、長ければいいってわけでもないか。


 熱くならないように自分を抑えて、一歩引いて眺めた場合に強く感じるのは、字幕製作業界のシステムが根本的に変わらない限り、今後もこのような問題は起こっていくんじゃないかということです。翻訳するのは人間だから、ミスはあるでしょう。でも(人選や人材育成も含めて)そのミスを最小限に減らすメカニズムはどれだけ機能しているだろうか……と。で、そのあたりを考えれば考えるほど、結局は自分のやってる仕事に意識がからんでしまう(涙)。


 ――長くなったので、ここで止めます。私に根性があれば次回に続くでしょう(逡巡していますと言いつつ、結局は語ってしまうのか?)。



→ つづく
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